すっかり腰の引けた人民解放軍
産経新聞によると、「中国外務省の陸慷報道官は20日声明を発表し、中国が「領海」と主張する南シナ海のスカボロー礁(中国名・黄岩島)から12カイリ(約22キロ)内の海域に17日夜、米海軍のミサイル駆逐艦「ホッパー」が中国政府の許可を得ずに進入したとして「強烈な不満」を表明した」とあります。トランプ米政権は、これまで、スカボロー礁周辺では「航海の自由」作戦を実施していませんでした。これは、トランプ政権の中国への圧力が一段と強まったことを示しています。(写真は解放軍報より)
ブルームバーグは次のように伝えています。
「中国国防部は,アメリカは冷戦期の精神構造(マインドセット)を放棄し、中国の安全保障・国防努力を『合理的かつ客観的に』見るべきだと主張した。
南シナ海の軍の動員を扇動しているのは、この地域の平和を望まず、『航海の自由』の旗印の下に、強権的な方法で軍事活動を行う「他の国々」である」と先週の日曜日に国防部のスポークスマンは述べた。
この声明は、先週公開されたアメリカの国防戦略報告書に対する対応であった。この報告書は、南シナ海における中国軍の動員と拡大を米国にとっての主要な脅威であると特定している。中国はこの海域の領有権をより強硬に主張するようになっている。この海域では年間5兆ドルの貿易の経路となっているが、そのうちの80%の地域の領有を主張しているのである。そのために,中国は,アメリカだけでなく、ベトナム、フィリピンとの関係も悪化させている。
先週の土曜日の中国国防部の声明が発表されたのは、中国の外交部が、アメリカのスカボロー礁への航海の自由作戦実施に対して、主権を擁護するために「必要な措置」をとると発表した直後のことであった。
中国の南シナ海での活動は、「中国の主権の範囲内での問題」であると国防省のスポークスマンは述べた。そして、中国は平和的な発展と調和のとれた国際秩序に関与していると付け加えた。」
興味深いのは、外交部の声明に対して国防部の声明の方がトーンダウンしていることでしょう。とにかく、人民解放軍は弱気なのです。この時期に軍事衝突を起こしたくないという願望を、外交部よりもトーンダウンした声明の中に読み取ることが出来ます。北朝鮮の軍がかなり崩壊していることは,既によく知られていますが、それと並んで中国の軍内部の状況もかなり危うい状況であることを,今回の事件は明らかにしているといえます。少なくとも、米中の軍事衝突はもうすこし先のことになりそうです。