中東戦争への助走
トランプ大統領にとって、イスラエルは無条件に頭が上がらない相手です。ですから、これまでにも大使館をエルサレムに移すことも実行しましたが、今度はゴラン高原はイスラエルのものと認めてしまいました。静かに中東戦争の火蓋が切られたようにも見えます。
「ペルシャ湾岸の四カ国は、トランプ大統領のゴラン高原をイスラエルの領土として認める宣言が全体的な中東和平プロセスに「悪影響」を及ぼすであろうと警告して、これを拒否している。
ロイター通信によれば16日、サウジアラビア、バーレーン、カタール、クウェートの各政府が、イスラエルとシリアの国境に位置する長期にわたる紛争地域をイスラエルの領土の一部として認めるというトランプ大統領の決定を非難する声明を発表した。
イスラエル軍が最初に領土を占領したときに、それはイスラエルとシリアの軍隊が6日間戦争にさかのぼって遡って長い間論争のネタとなっている。ゴラン高原は1981年に正式に併合されたが、併合は広く認められなかった。
ロイター通信によれば、サウジアラビアの国営通信社は、「トランプ大統領の決定は、中東和平プロセスと地域の安全と安定に重大な悪影響を及ぼすだろう」と述べた。同局はまた、この動きを国連憲章の違反と見なしたと伝えられている。
バーレーンやクウェートを含む他の国々はアメリカによる公式の承認を残念なことと述べたと伝えられている。その一方カタール政府はさらに一歩進んでイスラエルがこの地域の占領をやめるように求めた。
トランプ氏は月曜日、ホワイトハウスで物議をかもしているイスラエル首相のベンジャミン・ネタニヤフ氏の隣に立って、「ゴラン高原をイスラエルに対する攻撃の潜在的な発射場所にし続ける」とのテロリストグループの終結を求めて宣言に署名した。
「この決定には時間が掛かりすぎた。数十年前になされなければならなかった決定だ」とトランプ大統領は述べた。
ネタニヤフは先月末に起訴された詐欺と賄賂の件に関して闘争中である。彼はその容疑を否定しており、国の法執行機関からの「政治的迫害」だとしている。
ロケット弾がイスラエル中部を襲うと、トランプ大統領は予定を早めてワシントンへと戻った。」
カショギ氏の暗殺以来、サウジアラビアとアメリカの関係は悪化の一途を辿っています。これを機に、さらに関係が疎遠になるとみられます。本来であれば、サウジアラビアやUAEを味方にすることで、イラン包囲網を形成するという目論見があったはずなのですが、それが早くも崩れようとしています。
今回のゴラン高原の承認の背後には、イスラエルのネタニヤフ首相の身辺問題も関わっています。この記事にもある通り、汚職で司法当局から起訴されているネタニヤフ首相が反撃を試みるには、アメリカを抱き込んで派手な成果を実演するのが最も良いのです。トランプ大統領もイスラエルの言うがままですから、これは簡単な取引だったはずです。しかし、他の湾岸諸国を離反させてしまったとすれば、長期的に見ればあまり適切な方針ではなかったと言えるかも知れません。
今すぐにというわけではありませんが、中東紛争の再活性化の火種が蒔かれたといえるでしょう。