サウジに吹く怪しい風
ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は国家を立て直そうと懸命ですが、このところ不穏なニュースが次々と報じられています。
その一つが、国王の護衛が射殺された事件です。
「サウジアラビアのサルマン国王の護衛として知られていたアブドルアジズ・ファガム氏が、私的な争いの末、銃で撃たれ死亡したと国営メディアが伝えた。
29日の国営サウジ通信がメッカの警察からの情報を引用したところでは、ファガム氏はサウジ西部の紅海に面する港湾都市ジッダの友人宅で撃たれ、病院で亡くなった。容疑者は投降を拒み、射殺されたという。」
サウジ国王の護衛が撃たれ死亡、私的な争いで-国営メディア - Bloomberg
善意に解釈すれば、単なる事故ということになるのでしょうが、実際には国王をかばって亡くなっていたということであれば、これは大事件です。カショギ事件もありましたし、本当のところはわかりません。
第二のニュースが高速鉄道の事故です。この高速鉄道はスペイン企業によって建設されたようですが、なかなか困難であったようです。その高速鉄道の駅舎が今回は爆発してしまいました。
「 聖地メッカへの玄関口であるサウジアラビア西部ジッダにある高速鉄道駅で29日(現地時間)、大規模な火災が発生し、5人が負傷した。
海外メディアなどによると、同日昼12時頃、ジッダの高速鉄道駅舎で火災が発生した。この事故で、5人が負傷し病院に搬送された。現地メディアは16の医療チームが火災現場で救助作業を行っているが、負傷者の現状は伝われていないと報じた。
サウジアラビアの当局はこの日午後8時頃、火災を完全に鎮圧したと発表した。ただし、火災の原因などは公開しなかった。
同高速鉄道のラインは、サウジアラビア西部の玄関口ジッダとイスラム最大の聖地メッカとメディナをつなぐ中東初の高速鉄道で、昨年10月に商業運転を開始した。しかし、今回の火災で当局は乗客の安全のために列車の運行をしばらく中止すると発表した。」
サウジ、高速鉄道駅舎で大規模火災…原因は非公開 | ファイナンシャルニュースジャパン
ジッダ(ジェッダともいう)は、あのテロリストビンラーディンの故郷でもあります。報道されている写真を見る限りでは単なるぼやのようなものではなく、かなりの勢いで燃えていることがわかります。とするならば、テロの可能性も考えなければならないのではないでしょうか。
よく知られている事実ですが、ごく最近までサウジアラビアはカタールと共に世界中のスンニ派の過激派に資金援助を行ってきました。サウジアラビアの政府というよりは一部の国民がといった方が性格なのですが、テロを拡散する立場にあったことは事実です。しかし、最近のムハンマド・ビン・サルマン皇太子には我慢がならない富豪も多いことでしょう。ですから、テロの可能性は非常に高いと考えられるのです。
さらに現在戦争状態にあるイエメンのフーシー派はサウジ軍を撃破したと伝えられています。
「 イエメンの反政府武装組織フーシ派は、隣国サウジアラビアに攻撃を仕掛け、同国の兵士500人を殺害したほか、さらに2000人を拘束したと明らかにした。英紙ガーディアンが報じた。
同紙によると、フーシ派は29日の記者会見で、サウジ南西部ナジュラーンで3日間にわたり攻撃を実行したと説明。拘束した兵士らの写真と映像を示したが、多くが軍服を着用していなかった。動けなくなった軍用車の車列の写真も公開した。
同紙によれば、フーシ派の主張について、サウジ側は独自に確認していない。フーシ派はこれまでに両国の国境付近での軍事作戦を通じて、多くのサウジ兵・将校を拘束したと述べていた。」
イエメン反政府組織、サウジ兵500人殺害し多数拘束か-ガーディアン - Bloomberg
軍服を着ていないのですから、拘束した兵士が本当にサウジの兵士かどうかは疑わしいところです。しかし、これが事実ならば、サウジアラビアが、油田施設の攻撃に次いで、再び大きな敗北を喫したことになります。これは極めて危ない状態と言えます。
ですから、サウジの将来に疑問符がつくのも当然と言えるでしょう。
「 フィッチは30日、サウジアラビアの長期発行体デフォルト格付けを「A」に引き下げた。従来は「A+」だった。格付け見通しは「安定的」。
フィッチによれば、湾岸地域における地政学・軍事的緊張の高まりを格下げに反映させた。地域の軍事的脅威に対するサウジの経済インフラの脆弱(ぜいじゃく)性を巡る評価を修正し、さらなる攻撃のリスクがあると指摘。サウジと米国がイランとのより深い対立に引き込まれ得るリスクにも触れた。
同社は2019年の北海ブレント原油価格は平均1バレル=65ドルになりそうだと分析した。
今年のサウジ原油生産見通しは平均で日量970万バレルだとし、同国が石油輸出国機構(OPEC)に約束した20年1-3月(第1四半期)まで日量1030万バレルとの水準を下回り続けると予想している。」
サウジアラビアを「A」に格下げ、地域の緊張受け-フィッチ - Bloomberg
つまり、サウジは国の内外に大きな問題を抱えているわけで、ほぼ東京でもきまったサウジアラムコの上場後もかなりの混乱が予想されます。