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追い詰められるロシア

ロシア:サンクト・ペテルブルグ

 経済が弱いロシアが経済面で締め付けられるという構図は変わりません。それにしても、トランプ大統領、「しわい」ですね。

 「スイス大手銀行のクレディ・スイスが、米政府の対ロシア制裁を受け、ロシア関連の資金約50億ドル(約5500億円)を凍結したことが分かった。ロイター通信が22日報じた。

 資金保有者などの詳細は明らかにされていないが、凍結は4~6月に実施。クレディ・スイスの広報担当者は「制裁が確実に実施されるよう世界の規制当局と協力していく」とコメントした。顧客情報の秘密保持で知られるスイスの銀行がこうした措置の実施を認めるのは異例

 ロイターによると、クレディ・スイスプーチン大統領に近い「オリガルヒ」と呼ばれる新興財閥実業家らと取引があるという。

 スイスは銀行の秘密保持や政治的な安定から、ロシアの政治家や実業家の国外資流入先として知られてきた。2017年にロシアから国外に移動した資金の14%に当たる約62億ドルの行き先がスイスだった。

 米はロシアに対し、ウクライナ南部クリミア半島の強制編入やシリア内戦関与などを理由に、経済制裁を科している。(共同)」

スイス大手銀、ロシア資金5500億円凍結 米制裁受け - 産経ニュース

 ヨーロッパ勢のロシアに対する態度表明はこれでなされたとみるべきでしょう。スウェーデンなどの北欧三カ国が、ロシアの軍事的威嚇の前に震え上がっているのですから、当たり前といえば当たり前なのかもしれません。

 ただ、ロシアのつるし上げにすべての国や金融機関が賛同しているわけではなさそうです。例えば、ドイツは心の底ではロシアとの関係改善を望んでいます。

メルケル氏は4月、それまでは商業的な事業であると位置付けていた「ノルド・ストリーム2」について、政治的な配慮があることを初めて認めた。

大半の欧州諸国はドイツに対し、欧州としての影響力をもっと行使し、ロシアによる侵食に神経を尖らせる東欧諸国の保護に向けて努力することを望んでいる。

だが、ロシアがドイツに対し天然ガスを輸出する一方でウクライナを迂回できるようにしてしまえば、正反対の結果になってしまう。ウクライナ政府はガス輸送に伴う歳入を奪われ、ウクライナポーランドバルト海沿岸諸国ではガス供給途絶に対する脆弱性が高まる。

代償として、バルト海沿岸諸国、ポーランドウクライナからの信頼喪失という、さらに大きな損失を被ることになる」と指摘するのは、ドイツ連邦議会外務委員会におけるメルケル氏の盟友であるロドリッヒ・キーズベッター氏。

「我々ドイツ人はいつも、西側の結束を固めることが我々の『重心』であると口にしているが、少なくともエネルギー政策に関しては、ドイツをこうした西側の団結から引きずり出すという点で、ロシアによるアプローチは成功している」」

エネルギー分野でのロシア依存強く 深まる独メルケル首相のジレンマ | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

 ドイツの原発全廃政策は失敗であったことが認識されており、ロシアからのパイプラインは文字通り生命線になりつつあります。欧州の盟主であるドイツが、ロシアとの関係改善を図るのであれば、東欧諸国や北欧諸国が離反するでしょう。しかし、エネルギーは不足するという袋小路にドイツははまり込んでいます。

 これに対抗する動きもロシアにみられます。

ロシア中央銀行は、外国銀行のロシア部門から国外の親会社への資金移動を大幅に制限しようとしている。この計画に対し、ゴールドマン・サックス・グループやシティグループ、ライファイゼン・バンク・インターナショナルなどが抗議の声を上げている。

 ロシア中銀が先週ウェブサイトに掲載した文書によると、このほかにJPモルガン・チェースドイツ銀行HSBCホールディングスも含む合計15の大手外国銀行が反対を表明した。同中銀は外国銀行のロシア部門が親会社に預け入れることができる額を同部門が本国以外に持つ資本の20%に制限することを提案している。これまでにそのような制限は何もなかった。

 外国に資金を蓄えておくことについて、これ以外の制限は計画に盛り込まれていない。だが、ロシア中銀が公表した銀行からの批判要旨によると、規則が導入された場合、大半はこれに抵触する。ノルデア銀行やコメルツ銀行など数行は、ロシアの銀行と外銀子会社とで「不公平な」状況が生まれると主張した。

 ロシア中銀は米欧が対ロ制裁を強化し、外銀のロシア部門が国外に持つ資金にアクセスできなくなる恐れに対応して今回の制限を提案したと、銀行関係者2人は述べた。この関係者によると、外銀側はこの規則が導入されればロシアでの融資を縮小せざるを得ないと反論している。関係者は協議が非公開であることから匿名を条件に語った。

 ドイツ銀行、ゴールドマン、JPモルガンの各ロシア部門の代表者は中銀が公表した文書について詳しい説明はできないと回答。クレディ・スイス、UBSグループ、HSBC、コメルツはコメントを控えた。シティとノルデアは問い合わせに回答しなかった。」

ゴールドマンやシティなど15行、ロシア中銀の資金移動制限案に抵抗 - Bloomberg

 これはもうロシア側の逆切れといってよいでしょう。海外の資金がロシア国内に入りにくくなるのですから、ロシア経済を締め付けることになるはずですが、そうした合理的な見方よりは、海外の金融機関に一矢報いたいという暗い情念の方が先立っているように見えます。

 このままでは、アメリカとロシアが手を結ぶことは当分無理ですね。