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北朝鮮の核廃棄方式は「南アフリカ方式」か

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 南アフリカといえば、一時核保有国であったことが知られています。リビアと同様に平和裏に核放棄を実施しました。北朝鮮も、「リビア方式」ではなく、「南アフリカ方式」でということのようです。

 中央日報からです。

南アフリカは1975年、キューバ軍のアンゴラ駐留など安保脅威、人種差別に対する国際社会の圧力への反発、指導力結束の必要性などを理由に核爆弾を開発した。しかしソ連の崩壊によって安保環境が改善し、国際社会の制裁圧力が強まると、93年に核放棄を宣言した。「国際社会との新しい関係を設定するために核兵器を放棄する」という内容だった。
当時、南アフリカは高濃縮ウラン(HEU)基盤の核爆弾6個を保有していた。南アフリカはすべての核兵器およびHEU関連施設の解体→核拡散防止条約(NPT)加盟→国際原子力機関IAEA)安全措置協定締結→IAEA査察→核放棄完了宣言という手続きを踏んだ南アフリカの核放棄宣言から核放棄完了まで全体の過程は2年半ほどだった。比較的短期間で終わったのだ。
 南アフリカはトランプ政権が強調する核心要素、すなわち、自発的な非核化、最短期間内の迅速な核廃棄、核兵器開発完了後の自主廃棄--などを達成した唯一の事例だったのだ。トランプ政権で南アフリカモデルが急浮上している理由だ。
 ただ、この過程で注視すべき部分は南アフリカの自発的核放棄に対して経済的な見返りがなかったという点だ。一方、リビア方式は「先に措置、後に見返り」だった。したがって南アフリカモデルを検討するというのは、北朝鮮の核放棄に対する経済支援は韓国と日本、あるいは国際機関が負担し、米国は体制の安全など安全保障カードだけを出すという考えと解釈できる。
 ハン・ヨンソプ国防大学教授は「いくつかのメディアは米国がリビア式解決法を考慮していると報じていたが、実際に念頭に置いていたのは南アフリカモデルだったようだ」とし「核兵器開発の初期段階だったリビアとは違い、南アフリカは核保有国から非核国家になる姿を見せたため」と話した。ただハン教授は、北朝鮮保有する核の規模は南アフリカに比べてはるかに大きく、発展もしているだけに、いかなる見返りもなければ交渉が難しく、適当なラインで妥協する「折衝型南アフリカモデル」になる可能性があるという見方を示した。とにかく米国は迅速な自発的な核廃棄を意味する「南アフリカモデル」を北朝鮮に要求していて、これに北朝鮮が反発しているという説明だ。
 2つ目、従来のCVID(完全かつ検証可能で不可逆的な核廃棄)を変形したPVID(永久的かつ検証可能で不可逆的な核廃棄)と共に、ミサイルと生物・化学兵器など大量破壊兵器(WMD)までも米朝首脳会談の議題にしようとする米国に対し、北朝鮮が難色を示しているということだ。
この日、ホワイトハウスNSC関係者は、「首脳会談の主な議題はPVIDか」という質問に対し、「そうだ。従来のCVIDに弾道ミサイルとその他の分野が加わるだろう」と答えた。韓国政府内では「CVIDとPVIDは変わらない」という意見を出しているが、米国では異なる解釈をする声が多い。
 1994年と2007年の寧辺(ヨンビョン)核施設査察を主導したオリ・ヘイノネンIAEA元事務次長は8日(現地時間)、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)のインタビューで「PVIDはCVIDとかなり異なる」と主張した。ヘイノネン氏は「北朝鮮の非核化に濃縮活動禁止まで含まれれば、北朝鮮は今後、永久的に濃縮施設を保有できなくなる」とし「一方、イラン核合意(でのCVID)はウラン濃縮の部分は永久的な禁止でなかった」と強調した。米国がイラン核合意よりさらに強力な査察を北朝鮮に要求しているのだ。
 3つ目、査察方式をめぐる隔たりだ。米国はIAEAを含む視察団がいつでも疑わしい施設を調査できるよう要求している。特に豊渓里(プンゲリ)核実験場の閉鎖方法をめぐり「先にIAEAの徹底的な事前検証、後に廃棄」を要求する米国と、これに反対する北朝鮮の意見が調整できないという話が出ている。北朝鮮が今月中に閉鎖すると約束した豊渓里核実験場の処理は北朝鮮の非核化措置の第一歩だ。それだけに徹底的な事前検証をした後に閉鎖すべきだというのが米国の強い要求だ。」

米朝首脳会談に「異常気流」…何が問題? | Joongang Ilbo | 中央日報

 このところの米朝間の不協和音は、アメリカ側がハードルを上げてきたためだと考えられます。そこで、この記事で取り上げられているのが「南アフリカ方式」ですが、南アフリカ北朝鮮の違いは地政学的状況にあります。北朝鮮が、中国、ロシア、そして韓国のアメリカに挟まれる厳しい状況に置かれているのに対し、南アフリカの場合は、核保有国が南アフリカに存在しない、つまり、核を放棄しても安全保障上の状況はほとんど変化しなかったのです。
 しかも、南アフリカの核開発は当時の西ドイツの資金・技術で行われていました。これは、当時の西ドイツでは自国で核開発を行うことができなかったために、南アフリカで開発を行ったのが本当のところです。
 また、 イラン核合意におけCVIDでは不十分だとして、トランプ大統領はイランとの核合意から離脱したのですから、北朝鮮も「ミサイルと生物・化学兵器など大量破壊兵器(WMD)までも」含むPVIDが要求されていることになります。
 生物化学兵器の廃棄も含めた大量破壊兵器の全廃ということになれば、北朝鮮も自国の防衛の手段を失うことになります。これが、金正恩を中国に走らせた理由であったと考えられます。
 首脳会談にむけてぎりぎりまで交渉が行われることになります。問題は、北朝鮮がどの程度まで妥協するかということでしょう。