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米国関税引き上げの影響は?

米中貿易戦争の虚実(週刊ダイヤモンド特集BOOKS Vol.336)――トランプ暴走で何が起こるのか?

 米国の関税引き上げ攻勢の影響は、まだマーケットには現れていないと言えそうです。

 WSJでは次のように報じられています。

今年前半にはスティーブン・ムニューシン財務長官が中心となり、主に中国が米国からの輸入を増やす形で協議をまとめようとした。そうすれば、3750億ドルの対中貿易赤字に対するトランプ氏の不満を解消できるのではないかとの考えだった。だがトランプ氏は中国側の申し出を拒否。その結果、対中交渉でムニューシン氏の役割が低下し、貿易紛争で強硬路線を取っているライトハイザー氏の立場が強まった。

 現在、米側のチームは以前より団結している。それはライトハイザー氏が目指すような変化を要求していく方針になったからだ。

 そこには、中国経済における国有企業の役割低減や、米企業が中国で現地企業の過半数株式を保有できるようにすること、米企業に機密情報を明かすよう圧力をかけないことなどが含まれる。だがこの種の変化は、中国にとって最も受け入れがたいものだ。

 世界貿易機関WTO)の中国代表である張向晨大使は7月、中国は「社会主義市場経済」であると述べた。「中国が変化し、別の道を歩み始めるとの臆測もあったが、それは全くの希望的観測だった」

 トランプ大統領は11月末にブエノスアイレスで開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせ、中国の習近平国家主席と会談する予定だ。そこで進展がなければ、2000億ドル相当の中国製品に対する追加関税の税率を10%から25%に引き上げるのは必至だろう――。米商工会議所のマイロン・ブリリアント副会頭はそうした見方を示す。さらにトランプ氏が残りの2500億ドル相当の中国製品にも関税を課すという脅しを実行に移す可能性もある(それまでに発動していなければの話だが)。」

米国の対中関税、長期戦へのパラダイムシフト - WSJ

 ポンペオ国務長官は、今回の訪中で中国外交のトップである楊潔篪等とも会談しましたが、楊潔篪の目が死んでいるのが印象的でした(笑)。アメリカとの交渉は、小手先では勝負がつかず、時間が経つほど追い詰められていくという自覚はあるのでしょう。

 ですから、今回のG20での習近平との直接会談は非常に重要になります。今ですら、軍事紛争の可能性も喧伝されていますが、この会談で失敗すれば「戦争もやむなし」という雰囲気が米中両国にあふれることになります。

 この危機を回避するには、中国側で相当な譲歩を行う必要があります。その譲歩を実行するだけの政治力が現在の習近平に残っているのかどうかが気になるところです。

 戦争の雰囲気が高まる時に、北朝鮮やそのオマケの韓国が無事であるはずがありません。来年は荒れる年になる気がします。

 話を経済に戻せば、中国での販売不振から、英自動車最大手ジャガー・ランドローバーが、英中部ソリフルの工場の操業を22日から2週間休止するという報道も見られます。フォードもリストラを発表しています。中国だけでなく、米国やイギリスでも影響が出始めています。

 ただ、この理由からトランプ政権を批判する論調は見られません。それだけ、中国に対する敵意が高まっているということでもあります。自国の自動車産業を犠牲にしてでも、中国との対決を選んだといえるのかも知れません。

 なんとか、紛争回避できればとは思いますが、米中対決の深刻さは第三者が介入できるものではなくなっています。むしろ、日本には、アメリカとの同盟関係をできるだけ強固にして中国に軍事的に立ち向かうという途しか残されていないないのではないでしょうか。