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ジャーナリスト解放は、カタール外交の勝利である

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 囚われていたジャーナリストの方が無事解放されて良かったです。

  ただ、カタールは、トランプ政権以前はサウジアラビアと並んでヌスラ戦線を初めとするイスラム過激派を支援していたことは周知の事実です。ですから、カタール経由で話をつければ、人質の解放は比較的容易であったと言えるでしょう。

 ただ、カタールはトランプ政権のサウジとの分離策により外交的に孤立してしまいました。テロ支援国家であったサウジとカタールを分断するというのは、悪魔のように鋭いトランプ外交であったと思います。サウジはアメリカとの関係を悪化させたくないために、カタールを攻撃します。また、カタールアメリカとの関係を悪化させたくないために、テロ支援には消極的になります。事実、このカタール断交以来大がかりなテロは起きていないことに注目すべきでしょう。

 ただ、今回のサウジのムハンマド皇太子によるカショギ氏の暗殺により、サウジの立場は相当程度弱体化してしまいました。これをチャンスとして考えたカタールが、日本のジャーナリスト解放に動いたと見るのが妥当でしょう。

 トルコに関しても、カタール断交の際に、カタールに支援を差し向けた数少ない国です。トルコの思惑は、スンニ派の盟主はオスマントルコの伝統を受け継ぐ我が国であるという意識に求めることができます。とすると、スンニ派の勢力圏におけるサウジとトルコとのつばぜり合いとみることも出来ます。

 そもそも、カショギ氏暗殺事件でも、ムハンマド皇太子本人の関与こそ明言していないものの、サウジを厳しく批判しているのが、トルコのエルドアン大統領です。こうしてみると、カタール・トルコがサウジに対して外交で勝利を収めたことがわかるでしょう。

 気になるのは、今後の動向です。ムハンマド皇太子が失脚すれば、カタールとの関係改善、そしてサウジ国内でのワッハーブ派の勢力が再び台頭するかもしれません。その場合、海外へのテロ支援が再び活性化する可能性もあり、頭が痛いです。ムハンマド皇太子の強権的な政治手法を全面的に支持するものではありませんが、せめてサウジを1979年以前の水準にまで世俗化し、国民の意識を改め、新たな国家へと改造することは喫緊の課題であるはずです。それが、今回の一件で挫折するとすれば、これほど残念なこともありません。