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恋人は存在しなかったという切ない話

Operation Mincemeat: The True Spy Story that Changed the Course of World War II (English Edition)

インテリジェンスネタとしては有名なのは「存在しなかった男」なんですけれど、今回は「存在しなかった恋人」です。子供まで生まれてしまっては道義的に大きな問題に成りますよね。

 「 主要8か国(G8)首脳会議(サミット)に反対する集会で出会った元恋人は、実在しない人物だった──英国在住のケイト・ウィルソン(Kate Wilson)さん(42)は2010年、その事実を友人たちから知らされた
 マーク・ストーン(Mark Stone)と名乗っていた元恋人の本名は、マーク・ケネディー(Mark Kennedy)。妻も子どももいる、環境団体専門のベテラン潜入捜査官だったのだ。
 何十年も続けられてきた英警察の潜入捜査は論争の的になっていたが、今月ようやく公式な調査が始まった。環境団体に潜入するために他人になりすました捜査官らと、数年に及ぶ恋愛関係を持った被害者らは、捜査官らの活動が明らかにされることを願っている。
 看護師として働くウィルソンさんはAFPの取材に対し「本当にひどい、言葉ではほとんど説明できない」と、自らの辛い体験を訴えた。
 もう1人の被害者リサさん(仮名)も、ケネディー捜査官と6年間恋愛関係にあった。だが、やはり2010年に捜査官の本物のパスポート(旅券)を偶然見つけて正体を知った。
 リサさんは被害者団体「Police Spies Out of Lives(警察のスパイは人生から出ていけの意)」のウェブサイトに「彼はすべてを共有してきた相手だった」「父が亡くなった時に支えてくれたのは彼だった」と投稿した。
 同団体は、この問題を警察による「性的かつ精神的虐待」だと主張し、リサさんのような女性を支援するためにウェブサイトを立ち上げた。
 身分を隠した捜査官と恋に落ち、子どもまでもうけた女性もいる。覆面捜査官「ボブ・ロビンソン(Bob Robinson)」は1984年、ジャッキーさんという若い女性と出会い、1年後には息子が生まれた。ジャッキーさんは、二人には動物好きという共通点があると信じていた。
 ところが息子が生まれた2年後、「ロブ」は警察に追われていると言って失踪した。実際には、内偵任務が完了したためだった。ジャッキーさんは2012年の新聞報道で、初めて「ロブ」の正体を知った。
 英メディアの報道によると、ロンドン警視庁(Metropolitan Police Service、Scotland Yard)が1968年にベトナム戦争(Vietnam War)反対運動を監視するために、いわゆる「特殊任務班(Special Demonstration Squad)」を設置して以降、少なくとも139人の捜査官が1000以上の団体に潜入してきたという。
 潜入対象の大半は左派組織で、労働組合や環境団体、反人種差別や平和主義、フェミニズムを掲げる団体などだが、極右組織も対象とされた。
 潜入捜査被害者弁護団のまとめ役を担うリディア・ダゴスティーノ( Lydia Dagostino)弁護士は、被害者の中には「ひどく傷つき、決して立ち直れない」女性もいると語った。
 警察は2015年、複数の女性に対し謝罪し、損害賠償を支払った。さらに今週、「捜査対象」との性交渉は現在は認められておらず、潜入捜査は「明確な倫理指針と法的枠組み」に基づいて行われていると述べた。
 だがケネディー捜査官と人生を共にしていたウィルソンさんにとって、この言葉は大した慰めにならない。
 ダゴスティーノ氏は、意図的な「感情操作」は潜入捜査官がよく使う手法だと述べ、本件では審理の傍聴やインターネット配信が認められていないことについて、「国家による隠蔽工作」だと非難した。」

英潜入捜査官、正体偽り恋愛も…公式調査開始 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

 潜入工作そのものを否定することは出来ませんが、自国民に対してこの作戦は道義上ゆるされないでしょう。せめて通信傍受ぐらいにしておけば良かったのですよ。シーシェパードのような組織もありますから、環境団体が無前提に善であるとは考えられませんが。もうすこし人を傷つけない手法はないものでしょうか。