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スイスにも見捨てられた中国

スイス・アーミー・マン(字幕版)

 結論はわかっているとは言え、わびしさを感じます。

 報道によれば、米財務省が15日発表した国際資本統計によると、3月末時点の中国の米国債保有残高は1兆816億米ドル(約115兆7,500億円)で、日本の1兆2,717億米ドルを下回った。10カ月連続で日本が1位、中国が2位となったとあります。

万が一、米中で武力衝突が起きれば、この厖大な国債アメリカ側から無効にされてしまう、つまりただで115兆円がアメリカの手に入るのです。さすがに米国ドルの裏売りがない人民元はタダノ紙くずですから、人民元は大暴落、そして中国経済は崩壊することになります。

 ですから、米中が衝突するとは相当の事態なのです。結局、漫然と米国債を買い続けていた中国が悪かったと言えるかも知れません。しかし、他にどのような富の貯蓄手段があると言うのでしょうか。

 アメリカとの武力闘争が予想されるのですから、この国債を別の通貨建てにする必要があります。その候補の筆頭がユーロでしょう。しかし、中長期的にはユーロで置き換えることも不可能になりそうだ、と言う話です。

「 スイス外相は2日発行の現地紙で、中国は西側に対する開放路線から離れつつあり、もし中国がこの姿勢を維持する場合、西側はさらに断固とした対応を取るだろうという見方を示した
 スイスのイグナツィオ・カシス(Ignazio Cassis)外相は日曜紙ゾンタークスブリック(SonntagsBlick)に対し、中国における経済の自由化は政治の自由化と比例しておらず、人権侵害が深刻化しつつあると指摘。
 「われわれは、中国が開放路線から外れていく様子を目の当たりにしている」と述べたカシス外相は、「このことは、スイスも同様に自国の利益と価値観をより堅固に守らなければならないことを意味する。そのためには、国際法と多国間体制の強化などが必要になるだろう」と話した。
 さらにカシス氏は、スイスと中国との対話の中には常に「法の支配と人権」がテーマとして掲げられてきたが、「事態はわれわれが予想した以上に不穏であることが分かった。人権侵害が増加し続けている。わが国はこれらの権利を守りたいと考えている」と訴えた。
 その上で外相は、「もし中国が香港の『一国二制度』を放棄するのであれば、香港で投資をしてきた多くのスイス企業にも影響が及ぶ」として、「中国がこの新方針に固執するのであれば、西側世界はより断固たる対応を講じるだろう」と述べた。」

「中国は開放路線を捨てつつある」 スイス外相が指摘 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

つまり、中国は金融面での優遇をスイスからは受け取れなくなる、それどころか預金者情報がアメリカに流れるかも知れないという事です。スイスと言えば、ヨーロッパ金融界の中心でもあります。スイス外相のこうした発言があるのであれば、アメリカからの中国の逃避資金をヨーロッパ勢が喜んで受け入れるとは思えません。ということは、厖大な米国債保有高を中国はそのまま米国に委ねなければならないということになります。米中の全面対決の前に、この金融上の決着が付けられるはずです。それが戦争の目印になるとも言えます。