FirstHedge 明日の投資情報

投資を搦め手で分析します。

HardBrexit後の英国

人は死んだらどうなるのか あの世のルール (幻冬舎単行本)

 報道を見る限りでは、英国もEUを離脱して、あの世に行ってしまいそうな勢いです。

 「「合意なき離脱」になった場合、英国の貿易は一時的にWTOのルールに基づいて行われる。英国がEU加盟国の一員として締結した協定も適用されなくなるため、2月に発効したEUと日本の経済連携協定EPA)からも英国は離脱する。

 英国際貿易省によると、米国やスイス、オーストラリア、チリなど10近い国・地域とこれまでの通商関係を継続できるようにする暫定的な協定を締結した。日本とも交渉を進めているが、離脱期限の4月12日までに合意に至るかは不透明だ。

 英政府は暫定的な関税計画も策定し、「合意なき離脱」の場合は輸入品の87%(金額ベース)を無関税とする方針だ(現在は80%)。アイルランドから英領北アイルランドへの輸入品についても当面は新たな検査を導入しない。現在無関税のEUからの輸入品は82%が無関税となるが、自動車や牛肉、酪農製品など、生産者を保護する目的で一部の輸入品は関税を設ける

 金融監督当局も市場の動揺を防ぐ対策に追われている。BOE欧州中央銀行(ECB)との間で、通貨危機の際に通貨を融通し合うスワップ協定を活用する方針で合意。英国内の銀行は英中銀からユーロを調達でき、ユーロ圏の銀行はECBを通じて英ポンドを調達できるようにした。米商品先物取引委員会(CFTC)とも緊急対策をまとめ、「合意なき離脱」の場合でもデリバティブ金融派生商品)取引を従来通り実施できるようにすることで合意した。

 一方、経済界には先行きの見えない現状に対する怒りが広がっている。BOEが今月発表した約300社の企業を対象にした調査によると、約8割の企業が「合意なき離脱」に対する対策を既に開始したと回答。ただ、対策には限界があるとの回答も目立ち、英国商工会議所(BCC)のアダム・マーシャル事務局長は28日の年次総会で「我々は怒っている。『合意なき離脱』は政治家としての責任放棄だ」と訴えた

 「合意なき離脱」は英国だけでなく、景気減速にある欧州経済にとっても大きな痛手となる。ECBのドラギ総裁は27日、利上げ時期を先送りする用意があると示唆。ECB理事会メンバーでフィンランド中銀のオッリ・レーン総裁は地元メディアのインタビューで「英国のEU離脱は短期的には欧州経済の最大の脅威だ。市場はリスクを過小評価している」と警告している。

毎日新聞3/30(土) 20:28配信『英、通商も臨戦態勢 EU域外と暫定協定急ぐ』

英、通商も臨戦態勢 EU域外と暫定協定急ぐ(毎日新聞) - Yahoo!ニュース

 こうしてみると、離脱後の英国が抱える最大の問題は英国の製造業への支援であることがわかります。この点が一番評判が悪い点だといっても良いでしょう。先行きの見えない状態が、英国製造業の今後の見通しを暗くしているためです。

 それでも、貿易に関してはほとんど支障がなさそうということもこれからわかります。そして、なんといっても英国金融界の中心であるシティーはほとんど損をしていないということです。確かに、英国を離脱した金融機関は多いのですが、これが正解であったのかどうかは、もう少し時間がたたなければわからないでしょう。

 というのも、ドイツ銀行問題や中国の経済減速の影響を一番受けるのがEU経済圏、特にドイツであるためです。英国はこれから沈みつつある泥舟を脱出したというのが、今回の離脱劇の真実なのです。EUが経済危機により窮乏しても、これで英国は支援する必要がありません。これだけでも英国経済にとってメリットでしょう。

 さらに上げるならば、アメリカとの経済面での連携が予想されることです。この点をトランプ大統領も取り上げています。アメリカというマーケットが手に入るのであれば、EU圏は捨てても構わないという計算が当初存在したはずです。まだこれから交渉が進められることになるので、確定的なことは言えませんが、英国の経済圏が広がるのはほぼ確実でしょう。

 これだけの条件を考慮すれば、英国経済の今後は(世間の予想に反して)非常に明るいと言わねばなりません。かくして、ポンドは大暴騰を始めることになるのです。