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トランプ、中東からの撤退を断念する

気まぐれロマンティック

気まぐれロマンティック

 トランプ大統領が気まぐれといってしまえば終わりなのですが。

  それでも、この手のひらの返しようには驚きを禁じ得ません。当初は、米軍を中東から撤退させると述べていたはずなのですが、シリアからの撤退は、非常に評判が悪く、路線の修正が求められています。

 そこに、今回のイランから出て行かない発言です。ワシントンポストからです。

「 トランプ大統領は、シリアからの部隊の撤退を突然発表し、アフガニスタンから米軍の約半分を撤退させるようにペンタゴンに命令することを発表してから1週間後に、イラクから米軍を撤退させる計画はないと述べた。
 この決定により、アメリカ軍は中近東でのプレゼンスを維持し、イランの影響に対する防波堤を維持することができる。その一方で、シリアへの軍の再派遣と台頭するイスラム国に対応することが余儀なくされた場合、橋頭保を確保できることになる。
 長期にわたるイラク駐留により、トランプ氏はシリアからの撤退に対するヘッジを得ました。しかし、シリア撤退については、彼の顧問たちから幅広い反対を受け、マティス国防長官も辞任に追い込まれた。
 この成り行きが暗示しているのは、先週のホワイトハウス芝生からのビデオメッセージでのトランプのイスラム国家に対する勝利の宣言が誇張されていたということだ。トランプ氏は、水曜日のイラク訪問中に、必要に応じて米国がシリアに再入国することを可能にすると述べ、イスラム国がそこに再編する可能性について懸念が残ることを示唆した。
 バグダッドとシリア国境との間のイラク西部に位置するアル・アサド空軍基地への訪問中に、トランプ氏は「実際には、シリアで何かをしたいのであればこれを基地として使用することができた」と述べた。
 イラクに留まるという決定はまた、トランプの中東でのアメリカのより幅広い軍事的プレゼンスに関するメッセージが矛盾していることを明るみに出した。彼は先週、イスラム国家で勝利が達成されたので、米国軍がシリアから撤退するだろうと述べた。 しかし、イラクに派遣されたおよそ5,200人の米軍の任務は、スンニ派の過激派グループとの戦いで政府軍を支援することである。これは、持続的な勝利が達成された場合は継続する必要はないだろう。アメリカ軍は、地元の民兵との同盟によってアメリカ軍の存在が複雑になっているシリアとは異なり、政府の許可を得てイラクに留まる。
 トランプのイラクに関する発表はペンタゴンが大きな不確実性を抱えていた瞬間になされた。ペンタゴンは、先週、マティス国防長官の辞任と、先週の中東と南アジアへのアメリカの関与の将来に関する大統領の驚くべき決定により混乱していたのである。
 国防総省は、シリアの撤退の時期や、その国のイスラム国家に対する航空キャンペーンが今後も続くかどうかについては、詳細を明らかにしていない。ホワイトハウスペンタゴンも、トランプがアフガニスタンからアメリカ軍のおよそ半分を撤退させる命令について発表していない。休暇中にこの地域を訪れた際、統合参謀本部議長のジョセフ・ダンフォード・ジュニア大将は、この命令の報告を「噂」として却下した。
 2011年に米軍をイラクから撤退させた後、バラク・オバマ大統領は、2014年に、イラク政府の要請に応じて米軍をイラクに戻すよう命令した。なぜなら、2014年に、イスラム国家がイラク各地の都市を掌握し、バグダッドに向かって進撃していたためである。それ以来、米国の支援を受けた連合軍は、イスラム国が占領する地域の大部分を首尾良く奪還した。
 それでも、イスラム国家の復活に関する懸念は広まっている。米国政府と国連による公式な評価では、シリアとイラクでは依然として約3万人のイスラム国家の戦闘員が残っている可能性があるとされている。グループのリーダーであるアブ・バクル・アル・バグダディは捕まったことがなく、生きていると推定されている。
 イラク治安部隊は、ここ数カ月、頻繁な襲撃を行ってイスラム国家の構成員とその指導者らを逮捕し、過激派との戦いが戦闘から諜報活動に移行したと強調している。
 同グループは依然として、主に大都市の外で、低レベルの爆撃や攻撃を仕掛けることができた。イラクの軍関係者は、この脅威は封じ込められていると述べているが、アメリカの支援の減少が過激派に再突入の機会を与える可能性があるという懸念を表明している。
 イラクのアバディ前首相は、イラクでのアメリカのプレゼンスを強く支持していた。これはイラクの治安部隊の最高指導部によって共有された見解である。彼の後継者であるマフディ首相は、彼が米軍の駐留を望んでいると明確に語っては居ない。しかし、彼が軍のレベルの削減を支持するとも示唆していない。
 水曜日の訪問中にイラク人と会わないというトランプの決定は、アメリカ軍のプレゼンスに対する支持を危うくする危険性がある。というのも、米軍は、国内の親イラン勢力からの反対に直面しているためだ。
 トランプの登場に続いて発せられた声明で、マフディ首相は、公式会談も含んだ彼のオフィスへの訪問を調整するように希望するという意向を知らされていたと語った。彼は、会議を開催する際の「見解の相違」があったために、その代わりに電話会談を実施することになったとのベタ。計画に精通している筋によれば、大統領のスケジュールに関して議論が行われた。ホワイトハウスイラク人に事前通知を与えず、イラク人当局者に空軍基地でトランプに会うよう依頼していた。この依頼にイラク当局は反発したのである。
 特にイランに支援された民兵イスラム国家に反撃し、今年議会でかなりの数の議席を獲得した後、イランの影響力が増大し、イラクでのアメリカ軍のプレゼンスに対する緊張が高まっている。
 シーア派の聖職者ムクタダ・アル・サドルに支援された議会の議長を務めるサバー・アル・サーディは、トランプの「イラクの主権の露骨な違反」を非難するために緊急議会を開くよう求めた。
 声明の中で、彼はトランプが「イラクが彼の権限の下にある州であるかのように行動している」と彼の限界について「知らされなければならない。米国によるイラク占領は終わった。」と述べた。
 サーディーは、シリアからの米軍の撤退は、イラクへの米軍駐留を正当化するものではないと付け加えた。サドルは、その民兵イラク戦争の最盛期に何百ものアメリカ軍の兵士を殺害したが、今年初めにイラクの選挙で最も多くの席を獲得し、アメリカとイランのイラクへの関与を頻繁に批判している。」

U.S. forces will stay in Iraq and could reenter Syria from there, Trump says - The Washington Post

 この経緯を見る限りでは、トランプ大統領は中東の情勢を十分把握できていないのではないかという懸念を禁じ得ません。シリアからの撤退は、クルド人問題への関与を放棄すると言うことです。クルド人という貴重な味方を見捨てるのです。その一方で、米軍を散々殺しまくった親イラン勢力が健在なイラクには留まるというのですから、議論が矛盾していると言われても反論ができないでしょう。

 シリアからの撤退は、トルコとの関係回復のためでしょう。ですから、ワシントンでは、トルコのエルドアン大統領から脅されたのではないかとも議論されています。そして、トルコとの関係改善のさらにその先には、ロシアとの関係改善が控えているはずです。

 しかし、現状ですら、シリア撤退には強い批判に晒されているのですから、今回の「イラク残留」宣言でも、その批判は止むことはないでしょう。

 その結果として、当初の思惑とは逆に、シリアからの撤退が困難になるのではないかと考えられます。そうなれば、米ロの対立はさらに深まるでしょう。このことが日中関係にも暗い影を落とすことになる筈です。