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『スパイ防止法』があっても、スパイ活動は抑止できない

防諜 ?女スパイは愛に燃える?

 これはもうタイトル通りです。

 まず、AFPからオーストリアの防諜法制の記事を紹介しましょう。

 「【6月29日 AFP】オーストラリア議会は28日、外国のスパイ活動や内政干渉の阻止を目的とした複数の法案を可決した。これらの問題で中国に懸念が集中する中、オーストラリア政府は昨年スパイ防止関連法を抜本的に改革する方針を発表していた。

 可決された法案はスパイ行為に対する罰則を強化した他、オーストラリアの内政に影響や害悪を与えようとする外国当局による秘密工作、欺瞞(ぎまん)工作、脅迫行為などを対象とする新たな罰則が定められた。また外国による政治干渉を透明化するため、外国の政府や企業の代理人となる個人や団体には登録を義務付けた

 オーストラリアの情報機関は、中国政府が政治献金制度を使ってオーストラリアに影響力を行使しているとの懸念を表明していた。オーストラリア政府は28日の法案通過後の声明で「スパイ活動および外国の干渉はオーストラリアの安全保障と国防に著しいリスクとなっている」「敵対的な外国当局が、機密情報の入手やオーストラリアの民主的手続きへの影響力行使といったさまざまな手法でオーストラリアの国益に反する活動を積極的に行っている」と指摘した。

 今月、全国紙オーストラリアン(The Australian)に「脅威の環境は変わり、より厳しいものになっている」と述べていたクリスチャン・ポーター(Christian Porter)司法長官は、いくつかの補欠選挙が行われる来月下旬までの法案成立を目指していた。法案は、対象が広すぎて表現の自由や政策についての公の議論を制約しかねないという慈善団体など数多くの組織・団体からの批判を受け、何度も修正された。

 中国政府は、オーストラリアの内政に中国が介入したという報道は「ヒステリー」「妄想」だとして激しく否定。ここ数か月の両国関係は冷え込んでいる。」

豪議会、スパイ防止強化の法案を可決 中国に懸念集中 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

 スパイを防止する手段としては、情報の剽窃に関しては機密保護法制で、世論工作に関しては、エージェント登録によって抑制するというのは、民主主義国においては標準的なセットであるといえます。外国政府のために働くエージェント登録はアメリカも採用しています。

 日本でも同じ法律を作ればよいではないかと考える方もおられるでしょう。しかし、日本では不可能なのです。たとえ「スパイ防止法」を作ったとしても、スパイが「それではやめます」と言ってくれるのでしょうか。それはあり得ないのです。であれば、スパイ狩りの組織が必要になります。その組織こそが、防諜機関なのです。情報機関を作る前に、この防諜機関がなければ、とんでもないことになるのです。実を言えばそれが戦前の歴史でした。

 防諜機関は、当然のことながら、全国組織でなければなりません。FBIも全国規模の連邦捜査局ですね。それを1から作り上げるのは事実上不可能です。その母体となるのは、警察組織ですが、日本の警察には、全国規模の国家警察が存在しません。仮に国家警察を作ろうとしても、戦前の特別高等警察などの記憶から、強い拒否反応が生まれます。そして、他の霞が関の省庁、特に外務省は強硬に反対するはずです。

 つまるところは、スパイ活動撲滅のための政治的意思が欠如しているのです。これはもうしかたがないのではないですか。