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中国からの第二次朝鮮戦争の戦後計画の提案

 中国人の社会科学系の学者の仕事は、常に政府の主張を代弁するか、観測気球を上げることといってもよいでしょう。その意味では英語メディアに取りあげられた中国人学者の声は、中国政府の発想をある程度伝えていると言えます。

  今回紹介するのはサウスチャイナモーニングポストです。早速本文から紹介しましょう。
 「(前略)今月初めに刊行されたオーストラリアのオンラインマガジン、イースト・アジア・フォーラムの中の記事で、国際問題を専攻している北京大学の賈慶國教授は、中国は、緊急時の計画に関してアメリカ、韓国と協力するべきだと述べた。
 こうしたテーマが中国学会で公式に取りあげられるのはまれなことだ。
 この記事の中で、賈慶國教授は、検討すべき4つの分野を指摘している。それらは、北朝鮮核兵器貯蔵庫、難民の流入、秩序の回復、それに危機後の朝鮮半島の政治的体制である。
 「現在のところ、北京は北朝鮮を怒らせて中国から離れていくのを恐れて、こうした問題を取りあげることはなかった。しかし、最近の展開を考慮すれば、北京は仕方なくワシントンやソウルと協議を開始するかも知れない。」と教授は記している。「もし戦争が現実の可能性となったならば、中国は準備を整えておかねばならない」
 北朝鮮は既に核兵器を所有しているので、朝鮮半島における戦争の可能性は低いと語るのはアナリスト孫興傑である。
 彼によれば、おそらくは、米国の攻撃によって、北朝鮮金正恩体制が崩壊すれば、中国かアメリカが北朝鮮の核施設を差し押さえることになる。それは核兵器の拡散を防ぐためだ。
 北朝鮮難民を収容するために中国北東部に安全地帯が設置され、北京はワシントンと統一朝鮮を受け入れるか否かを協議するはずである。
 吉林大学の北朝鮮問題の専門家である孫興傑は、準備が必要であるということを認めている。「核戦争、もしくは難民危機に対処するために国境の備えを万全にすることは良い考えだ」と孫興傑は主張する。
 中国は、国連決議に従って、北朝鮮の織物の輸出を禁止し、石油の供給を絞っている。
 しかし、孫興傑は、北朝鮮は核保有国なのだから、戦争の可能性は低く、核保有国同志での紛争も発生したことはないと述べている。
 中国は、何段階ものステップを踏んで北朝鮮に警告を発してきた。最近の警告が北朝鮮の繊維製品の輸入停止と石油輸出の削減である。
 にもかかわらず、中国は、制裁を除いては、アメリカと緊急時の計画に関して議論しようとしない。そう述べるのは、中国人民大学の成曉河である。
 成曉河は、北朝鮮への原油輸出を完全に停止すれば、経済危機、人道上の危機を引き起こすか、北朝鮮による核の先制攻撃につながると述べている。
 誰が最初の攻撃を行うかに関わらず、中国は自国の利益を守らなければならない、と成曉河は述べる。そのためには、軍当局、民間防衛部門、国境警備部門が何らかの対策を持っていることは疑いない。
 中国は、中国の国益へのダメージを最小限にとどめるために行動に移らねばならない。そして、危機後の取り決めで最大限の利益を手にしなければならない、と成曉河は主張している。
 北朝鮮の太平洋上での水爆実験は「とんでもない」帰結をもたらす、と専門家も語っている。
 実際にその兆候はみられている。中央軍事委員会副委員長の許其亮は北部軍区の軍の視察を行っている。北部軍区は、中国と朝鮮の国境地域の防衛を担当している。
 許其亮は、北朝鮮の危機の後で、中国の基本的な国益は、この地域から核を取り除き、米軍を38度線より南部に留まらせることであると述べている。それ以外の検討課題は、国境に関する合意、北朝鮮の中国への債務の支払い、北朝鮮における中国の商業上の権益の保護である。
 紛争勃発時には、北朝鮮難民を保護する安全地帯は中国東北部に設置されねばならないとあるアナリストが指摘している。
 「中国軍は、素早く動き、重要な施設や場所を確保し、難民危機とかくの拡散を防ぎ、その後の国際的な取り決めで有利な地位を確保しなければならない」
 そう語るのは、遼寧社会科学院の陸超である。彼は、北朝鮮からの大量の移民流入が中国ならびに周辺諸国の最大の懸念であることを認めている。しかし、まだこのことを議論するのは時期尚早だとも語る。
 緊急対策計画の立案は、金正恩体制の崩壊が近くなってからだ。しかし、現在の所その兆しはない、と陸超は結んだ。」

What if worst comes to worst with North Korea? China ‘must be ready’ for war on the peninsula | South China Morning Post


 これは非常に興味深い記事ですね。中国も、中長期的には北朝鮮の崩壊は避けられないと考えていることがありありとわかる記事です。北朝鮮体制崩壊時に発生する難民対策、そして戦後の勢力範囲の確定が必要だとほとんど全ての学者が認めています。
 そのためには、アメリカとの協力が欠かすことができません。習近平は、金正恩を捨てて、トランプと協力し、戦後の北朝鮮の姿を検討し始めたといえるでしょう。