FirstHedge 明日の投資情報

投資を搦め手で分析します。

今から戦争はできない、とトランプ大統領

秘録イスラエル特殊部隊──中東戦記1948-2014

 さしあたり、イスラエルは関係ないのですが、戦争はしばらくの間は起きないようです。

 「 トランプ米政権は20日、14日に起きたサウジアラビアの石油施設攻撃に関与した疑いが強いとして、イランへの対抗措置に乗り出した。サウジに米軍のミサイル防衛部隊を増派し、イラン中央銀行を制裁対象に指定した。イランの反発を招くのは確実だが、軍事衝突を避けたいトランプ米大統領の意向を反映し、穏当な対応にとどめた。
 「ルールに基づく国際秩序を守るためだ」。エスパー米国防長官は20日の記者会見でサウジへの増派を決めた理由を力説した。サウジ攻撃にイランが関与したと非難し、さらなる増派もありうると強調した。米国はサウジの隣国、アラブ首長国連邦UAE)からも軍事支援の要請を受けており、部隊派遣や武器売却を進める可能性がある。
 米メディアによると、米軍はステルス戦闘機F22を中東に追加派遣したり、イランに部分的な空爆を実施したりする案を検討していた。だがエスパー氏は増派について「防御的措置だ」と強調し、軍事作戦を実行する部隊の派遣や軍事行動に否定的な見方を示した。米軍制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長も増派規模は数百人にとどまることを示唆した。
 トランプ氏はサウジ攻撃が起きた後、イランに「必要なら臨戦態勢をとる」と強気の構えを見せながら「イランとの戦闘を望まない」とも繰り返してきた。2020年の大統領選での再選に向け、有権者に不人気な新たな戦争に巻き込まれたくないとの思いがにじむ。
 追加制裁もイランとの決定的な対立を招く内容でない。米財務省20日、イラン中銀や国家開発基金を制裁対象に指定した。トランプ氏は「イランにとって全くよくないことが起きている」と強調し、イラン経済に打撃を与えると主張した。同氏は18日、ムニューシン財務長官に「大幅な制裁強化」を指示していた。
 だが実際には追加制裁の手段が乏しいことを露呈した。米政権は18年11月にイラン中銀と外国金融機関の取引を原則禁じる措置を講じ、同中銀は事実上の制裁対象になった。20日の制裁指定には米金融機関との取引を禁じる効果があるが、そもそも取引はほとんどないとみられる。中銀に制裁を科すのは異例だが実質の打撃は小さい
 イラン中銀は18年秋の時点で同国の外貨収入源である原油輸出の決済取引を担う機能をほとんど失っていた。米国の制裁で国際決済ネットワークから閉め出され、すでに海外口座から資金を引き出せない事態に陥った。
 米与党・共和党からはトランプ氏の対イラン政策が弱腰だとの批判も出る。同氏に近いリンゼー・グラム上院議員20日レーガン政権下の米海軍が1988年にイラン艦船を撃沈したことを引き合いに「イランの挑発に対抗する場合の基準になる」と指摘。イランの挑発行動を抑止するため軍事攻撃に踏み切るべきだとの考えを示した。
 ワシントン近東政策研究所のマイケル・ナイツ上級研究員は、米政権がイランへのサイバー攻撃に踏み切る可能性があると指摘する。インフラやミサイル生産施設を対象としたサイバー攻撃は標的に対し確実に打撃を与えるが、外部からは実態がわかりにくい。中東の緊張を過度に高めるリスクは小さいといえる。
 トランプ政権はニューヨークで開催中の国連総会でサウジ攻撃を引き合いにイラン非難での結束を各国に促す構えだ。このタイミングで軍事行動に踏み切れば米国に批判の矛先が向き、対イランでの国際協調が難しくなりかねない。中東の石油施設に対する攻撃はアジアの原油調達に大きな打撃を与えるため、ナイツ氏は米国が中国とも対イラン政策で協調する余地があると指摘する。」

米、イランと軍事衝突回避を優先 増派・制裁を発表 (写真=共同) :日本経済新聞

 これでは戦争は起きようがありません。以前にお伝えしたように、ほとんど、下手人はイランだろうとされているのですが、これからイランに対して戦争を仕掛けることは、トランプ大統領の中東からの撤退という公約に違反することになります。そして、なによりも、来年の大統領選にむけて国内の選挙対策に全力で取り組まなければならない時に、相手が北朝鮮であれ、イランであれ戦争はできないというのが本音なのでしょう。

 その一方で、イランに対する制裁のネタが尽きかけているという事情もあるのでしょう。のこるのはサイバー戦など効果はあったとしても地味な対抗手段しか残されていないことになります。

 今回のサウジ石油施設への襲撃は、アメリカとイランの接近を望まないイランの宗教指導者が両者の断絶を試みたものであったといえます。

 アメリカの側からすれば、これ以上新たに戦争を仕掛ける動機も意欲もないのですが、イランや北朝鮮の側から見れば、事情はむしろ逆で、今こそチャンスと思っているに違いありません。その意味で、今後はテロなどの活動には要注意と言うことになるでしょう。