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金融開放を迫られる中国

中国政治外交の転換点―改革開放と「独立自主の対外政策」

 仮に米中の軍事紛争が今後起きないとしても、中国を巨大な変革が襲うことでしょう。

  その理由は、中国を巡る資金循環が大きく変わりつつあるためです。

昨年の中国の経常収支黒字は国内総生産(GDP)の0.4%だった。世界の工場と呼ばれ、この比率が10%超に達していた10年余り前からは様変わりだ。黒字縮小の一因は、石油・半導体価格を含む景気循環的な要因にある。もう1つの重要な要因は、外国旅行する中国人が増えたことで、昨年はサービス輸入5000億ドルの大きな部分を占めた。

 これは経常収支赤字が何年間も続く前触れだ。赤字化の主な原因は、GDPの約45%と極端に高い貯蓄率が、高齢化と社会的なセイフティーネットの向上により低下することにある。貯蓄が減る一方で投資が高水準を保つなら、中国はその差を埋めるために資本を輸入することになり、経常収支は赤字に転じる。

 モルガン・スタンレーのアナリストらの試算によると、2030年には中国の経常収支赤字がGDP対比1.6%に達する可能性があり、19─30年に少なくとも年間2100億ドルの外国資本の純流入が必要になりそうだ。

 政府当局に市場開放を促す契機になるなら、これは歓迎すべきことだろう。特に、今も厳しく制限している銀行など金融産業への外資参入を緩和し、米金融市場から資本を呼び込みやすくする可能性がある。また、証券取引所の接続その他の制度を通じ、外国投資家が購入できる株や債券の種類を増やして国内資本市場へのアクセスを広げるとともに、さらに多くの中国企業に海外での起債を許可しそうだ。

 これ以外にも制度改善が勢いづく可能性がある。例えば企業破たん手続きの改善や、国境を越えた資金フローについて予見可能性の高いルールを定めることなどだ。変化の速度は遅いだろう。しかし、これまで外資をさほど必要としなかった国が債務国に転じれば、政府は急いで外国投資家のもてなし方を再考する必要に迫られそうだ。」

コラム:中国に近づく経常赤字国の足音、市場開放の契機か - ロイター

 結論を一言で言えば、そろそろ中国は経常収支の黒字を維持できなくなるということです。とすれば、資金不足を海外からの資金で解決しなければなりませんアメリカのように石油などの天然資源を事実上自分の管理下に収め、ドルでなければ原油が購入できないといったようなシステムを中国側も構築する必要があります。

 そうした観点から、現在の中東を眺めると、イランから原油を輸入し続けていると見られる中国と、イスラエル防衛のためにイランを包囲しようとしているアメリカの姿が浮かび上がります。つまり、中国の経常収支赤字化と中東の緊張の高まりは正比例の関係にあることがわかります。

 つまり、中国が21世紀も存続するためには、アメリカというライバルを倒す必要があるのです。しかし、トランプ政権の成立により、従来の路線の延長でアメリカを打倒することは不可能になりました。

 もしこのアメリカとの勢力争いに敗北すれば、仮に現在の中国政府が存続しうるとしても、金融面で相当の妥協を強いられることは明白です。それは、中国共産党による一党支配を必ず揺るがすことになるでしょう。

 こう考えれば、やはり中国と米国の軍事衝突は回避出来ないと見ておいた方が良さそうです。