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業務縮小と人材流出に悩む追い詰められたドイツ銀行

週刊東洋経済 2015年11/7号 [雑誌]

 ドイツ銀行の周辺があわただしくなってきました。今回その一連の動きをまとめてみます。

  日経新聞によれば、ドイツ銀行コメルツ銀行の合併交渉が正式に始まったとあります。

「 経営再建中のドイツ銀行は10日までに同じドイツ大手のコメルツ銀行との統合交渉を進める方針を固めた。欧米の複数のメディアが報じた。統合はドイツ政府が強く後押ししており、市場では両行がいずれ統合に踏み切るという観測がくすぶり続けていた。ただドイツ銀行の内部には慎重論も根強く、実際に統合に結びつくかはなお不透明な部分がある。
 ドイツ銀行の総資産は2018年で1兆3480億ユーロ(約168兆円)、コメルツ銀行は4620億ユーロ。統合すれば単純合計で1兆8千億ユーロを超え、英HSBCや仏BNPパリバに迫る欧州屈指の規模となる。
 ドイツ銀行は17年まで3期連続の最終赤字。18年にようやく黒字に転じたが、ライバル行に比べて見劣りする収益力をどう高めるかが課題になっていた。コメルツ銀行には金融危機時に受け入れた政府出資が残っており、経営基盤の強化が求められていた。
 統合を後押ししているのがドイツ政府だ。経済のグローバル化が進むなか、ドイツ企業が国境を越えてビジネスを進めていくためには強力な国内銀行が必要との考えが政府内で高まっている。ドイツを代表する両行が統合すれば、米欧の大手銀行にも対抗できるという思惑もある。
 ドイツ銀行はこれまで統合に慎重な姿勢だった。行内で進めているリストラを終える前に新たな統合に踏み切っても、十分な効果を引き出せないとの考えがあったためだ。ただ、収益力の回復がなかなか進まないなか、政府に加えて株主からも統合を求める声が高まっていた。ゼービング最高経営責任者(CEO)らの経営陣は、統合を選択肢の1つとして検討せざるを得ない状況に追い込まれたといえる。
 問題は統合によって収益力の高い銀行に生まれ変われるかどうか。同じドイツを基盤とする両行が統合すればリストラの余地は大きいとみられるが、縮小均衡に陥るリスクは否めない。ドイツ銀やコメルツ銀がほかのパートナーとの統合に傾く可能性も残る。」

ドイツ銀、コメルツ銀と統合交渉 独政府が後押し (写真=AP) :日本経済新聞

 ゼービングドイツ銀行CEOによる打開策もなんら成果を挙げないまま時間が経っているのが現状です。誰もが口にださないものの、はっきりと意識しているのはリーマン級の金融ショックが再来した場合、今度ばかりはドイツ銀行はもたないと言うことでしょう。中国経済の減速など、不安材料が積み上がっている中で、ドイツ政府が問題の事前の解決に乗り出したというのが正確なところでしょう。

 実際、ドイツ銀行の今後は非常に暗いものです。

 まず、プライムブローカー事業が3年連続減収となっています。

「ドイツ銀の同事業収入は2015年と比べ3割余り落ち込んでいると、同行が収益の詳細を公表していないとして匿名を条件にした関係者が述べた。この関係者によると、同事業の低迷が大きく寄与して株式トレーディング部門は昨年、約7億5000万ドル(約840億円)の赤字に沈んだという。ドイツ銀は、赤字幅についての言及が正確ではないと指摘した。

  ドイツ銀は金融危機で米国勢が後退した機会に乗じて危機後にプライムブローカー事業を伸ばしたが、ここ数年は動きが反転。同事業に資本を割り当てるドイツ銀の能力と意思が懸念されて顧客離れが進み、市場シェアは縮小を続けているドイツ銀は資金調達コストが高く格下げリスクがあることも、プライムブローカー事業での貸し付けによる利幅を下押ししている。」

ドイツ銀、プライムブローカー事業が3年連続減収-顧客離れ止まらず - Bloomberg

 主力の株式部門が大赤字でプライムブローカー事業も不調となれば、前途は限りなく暗いということになります。

 ここで、プライムブローカーとは、主に、資金の調達や証券の借入・保管、決済の代行、リスク管理などの、いわゆるプライムブローカレッジサービスを提供する役割を果たす金融機関のことです。もっと具体的言えば、ヘッジファンドがファンドを運営する際の金融取引の実務を引き受けるということです。ヘッジファンドから受けた株や債券の売買注文を執行すること、買った証券を保管すること、空売りするときは借株の手配をすること、決済の事務代行、毎日の口座残高の計算、情報端末を提供など、実に様々なサービスがそこには含まれています。
 プライムブローカーを引き受ける投資銀行にとって何よりも重要なのが、その銀行の信用力なのです。プライムブローカーの信用力が低下すると、そこに決済を依存しているヘッジファンドの様々な取引にも支障が生じる可能性があります。ドイツ銀行がその分野で成果を挙げていないとすれば、ドイツ銀行の信用に問題があるためなのです。

  さらには、ドイツ銀行から優秀な行員が脱出してしまう危機が迫っていることです。

「 ドイツ銀行で人材確保を狙った特別賞与の価値が昨年急減して、さらなる人材流出を招く可能性が生じ、成績トップクラスの行員らは手当てプログラムの見直しを求めたが、同行は要求を受け入れなかった。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
 関係者によれば、同行はここ数週間に主要スタッフに対し、同プログラムを修正しないと伝えた。部外秘のやり取りだったことを理由に関係者が匿名を条件に語った。株価が手当の全額支給に必要な水準を大きく下回ったことを受け、投資銀行部門の共同プレジデント、マーク・フェドーシク氏を含む複数の幹部が見直しを求めたという。一部の行員はコメルツ銀行と合併することになれば今後報酬が減る可能性を懸念し、キャリアの選択肢を模索している。

ドイツ銀:人材確保の手当て、プログラム見直しに応じず-関係者 - Bloomberg

 つまり給与体系の点でも、今回の合併は優秀なスタッフが流出させる可能性が大きいと言うことでしょう。それでも合併を推進しなければならないところが、ドイツ銀行の危機を象徴していると言えるでしょう。