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空気を読まないサウジ

 「中国には対テロ対過激派活動を行う権利がある」ですと?

  「サウジアラビアは22日、エネルギーや貿易を巡り、多岐にわたる合意を中国と結んだ。米国に対抗する経済規模を持つ中国との関係強化を急ぐことで、共同戦線を張ろうとするムハンマド・ビン・サルマン皇太子の思惑が透けて見える
 ムハンマド皇太子はパキスタン、インドに続き、中国を訪問。皇太子の代表団は今回の訪中で、中国北東部に石油化学精製施設を建設する約100億ドル(1兆1100億円)規模の契約を締結した。サウジの国営石油会社サウジアラムコによると、これは2017年に発表された合弁事業で、アラムコと中国の国有企業2社が共同で保有する。
 サウジのエネルギー産業鉱物資源相であるハリド・ビン・アブドルアジズ・ファリハ氏は、中国国営の新華社通信に対し「この大型投資は始まりにすぎない」と指摘。「サウジには多くの資金があり、収益を生み出す投資先を見つける必要がある。環境が改善し、巨大市場を持つ中国は素晴らしい投資先だ」と述べた。
 ムハンマド皇太子の訪中時に、代表団メンバーはエネルギー、投資、テロ対策に関する合意も結んだ。北京で開催された対サウジ投資に関するビジネスフォーラムには、サウジ企業25社以上が参加した。
 ムハンマド皇太子は、反体制派記者ジャマル・カショギ氏の殺害事件を受けて激しい非難を浴びており、こうしてアジア諸国を歴訪する背景には、国際社会からの孤立を和らげる狙いがある。
 22日には中国指導部と会談。人権問題を巡る海外からの批判に対して、中国はサウジを擁護する立場を表明した。中国の習近平国家主席はサウジへのいかなる内政干渉にも反対すると伝える一方、ムハンマド皇太子は中国政府による過激派との戦いを支持すると述べた。ウイグル族などイスラム少数民族への中国当局の弾圧を念頭に置いた発言とみられる。
 ムハンマド皇太子は、パキスタンでも最大200億ドルの投資を確約したほか、サウジで投獄されている2000人以上のパキスタン人を釈放することでも合意。サウジで暮らす数百万人の南アジア出身者に配慮する姿勢を示した。
 インドではナレンドラ・モディ首相の熱烈な歓迎を受けた。モディ氏は規定を破り、空港で皇太子を出迎え、2人は抱き合ってあいさつした。皇太子もこれに応じて、投獄中のインド人850人を釈放する考えを示したほか、数十億ドル規模の新規投資を行う可能性があると強調した。
 「皇太子は、世界有数の強い指導者とのイメージを打ち出そうとしている」。こう指摘するのはワシントン近東政策研究所(WINEP)の湾岸諸国専門家、サイモン・ヘンダーソン氏だ。「彼はその一瞬一瞬をすべて楽しんでいる」
 中国とサウジは近年、急速に関係を深めている。サウジは昨年、5670万トンの石油を中国に輸出し、中国にとって第2の石油供給国となった。中国税関総署のデータによると、両国の貿易は昨年、23%拡大した。
 中国とサウジが世界レベルで影響力の拡大を同時に狙う中、両国は一段と緊密に連携する構えだ。(後略)」

サウジ皇太子、中国に急接近 対米「共同戦線」の思惑 - WSJ

 カショギ氏暗殺で、すっかり失った信用をムハンマド・ビン・サルマン皇太子は必死に回復しようとしているといえます。しかし、西側諸国やアメリカではなく、今後袋田叩きにあう中国に接近するというのは解せません。というか、そこまで今後の流れを知らされていないといった方が良いのでしょうか。

 今後の米中対立の経過如何では、サウジが大損という可能性もあるでしょう。なにより、ウイグル族などイスラム少数民族への中国当局の弾圧を無視する姿勢を取ったのは、後々サウジアラビアが過激派のテロ目標となる大きな原因を作ってしまったようにも見えます。サウジ家は、イスラム世界の盟主なのか、という問いかけがなされれば、サウジアラビアは非常にまずい立場に追い込まれることでしょう。