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アメリカ、同盟崩壊寸前の状態を認める

ゼロ・ダーク・サーティ (吹替版)

 今回取り上げるのは、CIAの「世界の危機評価」という文書です。29日に発表されました。

https://www.dni.gov/files/ODNI/documents/2019-ATA-SFR---SSCI.pdf

  NYTでは、イスラム国評価やイラン評価でトランプ政権の主張と異なるという点に焦点を当てていますが、TheHill.comのまとめは一味違います。

「 米国の情報機関の指導者たちは火曜日、ロシアと中国が米国とその同盟国と競争しようとしているため、両国がますます連携するようになっていると警告した。
 「モスクワと北京との関係は、この数十年で最も緊密なものになっている」と、ダン・コーツ国家情報長官は、「世界の危機評価」の公聴会において、上院の情報委員会の議員らに対し語った。
 コーツは、米国の最新の世界規模の脅威評価を発表する際に、モスクワと北京がより接近している一方で、いくつかの米国の同盟国が他のところでより強い関係を築き始めていると警告している。
 「それと同時に、一部の米国の同盟国およびパートナーは、安全保障および貿易に関する米国の政策の変化に対する彼らの認識に応じてワシントンからのより大きな独立を求めており、新しい二国間および多国間のパートナーシップに対してよりオープンになりつつある」と述べている。
 情報機関の評価によると、ロシアと中国は、「技術的および軍事的優位性」をめぐる競争を含め、「あらゆる分野にわたって」より強力になることで、国際システムに対する支配を主張しようとしているという。
 「中国とロシアは、1950年代半ば以降でいつにもましてより関係が緊密になっている。そして、特に米国の一方的主義と介入、西側の民主主義と人権の推進に関して、その関心と脅威の認識の一部が収束しつつある。」と報告書には記されている。
 「ロシアと中国は、国際システムと地域の安全保障ダイナミクスを形成し、世界のすべての地域、特にそれぞれの後背にある国家の政治と経済に影響を及ぼそうとしている」と付け加えた。
 この評価ではまた、クレムリンが中東および東アジアにより関与を深めていると警告している。その目的は、地球規模で「かつて確立された安全保障基準を侵害し、地域紛争のリスクを増大させる」ことにあると述べられている。
 情報機関当局者は、ロシアと中国が海外での覇権を獲得するために努力していることを警告しているが、両国は2020年の米国の選挙もターゲットにしていると付け加えた。
 情報機関を代表して演説しているコーツ長官は上院の公聴会で、ロシアや中国のような米国の敵対者たちは「おそらくすでに2020年の米国の選挙を彼らの利益を高める機会として狙っている」と述べた。
 「米国の敵対者や戦略的競争相手は、ほぼ確実にオンラインの影響力を利用して民主的機関を弱体化させ、米国の同盟やパートナーシップを弱体化させ、そして米国およびその他の国々における政策結果を形成しようとする」と語った。」

US intel report warns of growing Russia, China alignment | TheHill

 中ロの連携は当然のこととしても、注目を引くのが、「いくつかの米国の同盟国が他のところでより強い関係を築き始めている」という表現です。すでにトランプ政権の下で従来の同盟関係が揺らいでいることを認めているのです。具体的には、日本のロシアへの接近などが念頭にあるのでしょう。

 しかし、その一方で中ロの連携が強化されるならば、日本による独自の対ロ外交にも意義はあるはずです。ロシアを中国から引きはがすことは、今後の中国との紛争においても有益になるはずです。「前提なしに平和条約を締結しよう」というプーチンの提案は、そこまで見透かしたものであったというべきでしょう。

 現在のロシアは経済の低迷に苦しんでいます。年金の受給資格年齢の引き上げでは、プーチン大統領への支持率は急落しました。そして、経済で苦しんでいるからこそ、領土問題では譲歩しにくくなっているのも事実です。

 仮に、今後の北方領土交渉が不調に終わるとしても、日本側としては出せる条件は出しているので、仕方がないでしょう。ですから、中国だけでなく、ロシアも同時に対抗する準備を始めねばなりません。