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経済でも安全保障でも躍進する今年のインド

インド・オブ・ザ・デッド(字幕版)

 極東アジアのことを考えると思わず気分も沈みますが、明るい側面も考えてみることにしましょう。

 「2018年のインド経済は、16年11月の高額紙幣廃止、17年7月のGST(物品・サービス税)導入の中で成長が鈍化した前年から順調に回復。国内総生産(GDP)成長率は政府予測で7~7.5%と高い水準となりそうだ。19年も資源価格や通貨安といった懸念はあるが、経済成長の阻害になりそうな大きな要因はみられない。

 一方、19年に実施される総選挙が今後のインド経済の方向性を決めると言ってよいだろう。総選挙は5年に1度実施される。この総選挙でモディ政権が国民の信任を得るか否かが、改革志向の経済運営の継続性の決め手となる。

 インドの総選挙は与党不利とされる。有権者の大宗を占める中所得以下の層には経済成長の果実、実感は届きにくい。政治や経済運営への不満から、これらの人々が野党支持に流れる、という構図だ。29州が一定の権限を持つ連邦制度を敷くインドでは、州首相、州議会は選挙で選ばれるが、選挙日程は統一されておらず、州選挙の結果がその時々の政権強度の指標となっている。14年に発足したモディ首相率いるインド人民党(BJP)政権は、16年、17年には多くの州選挙で圧勝、さながらオセロゲームの様相をみせていたが、18年に入ってその勢いに陰りが出てきている。12月に結果が出た5州の選挙は、この傾向が如実に示された格好となった。

 最近、モディ首相は「生活の質の向上」という言葉をよく使う。国民各層が豊かさを実感できるようになることが経済や政権運営の最優先課題だからだ。18年度(18年4月~19年3月)の政府予算では、新たな国民医療保険制度を導入。これは低所得層家庭を対象に、1世帯当たり年間最大50万ルピー(約80万円)の医療費を負担するもので、1億世帯が裨益するといわれる。このほか、農産品買い取り価格制度の充実や農林水産部門への金融支援の拡大など、国民の半数を占め、低所得層が多い農村部への配慮がにじむものになった。

 インドは、世銀の「ビジネスのしやすさ」ランキング2019で前年より23ランク上昇の77位となった。このお披露目の席でモディ首相は、政権発足後、ランキングの項目に限らず、汚職防止、GST導入、倒産法整備、起業促進などの大改革に取り組んだ、と誇らしげに語った。同時に、今年から郡(ディストリクト)レベルでのランキングを導入し、その指標に1人当たりGDPを導入するとした。地域レベルの行政改革を草の根レベルの所得向上にひもづけることで、経済発展を目指す狙いとみられる。

 国民生活向上を重視した政策にプライオリティーが置かれるなか、経済社会インフラ、サービス、FMCG(日用消費財)、医療など、関連ビジネスの機会拡大も期待できそうだ。(ジェトロニューデリー事務所長 仲條一哉)」

ジェトロ 2019年のBRICS経済を占う(3-2) ロシア…プラス成長持続 インド…国民の生活向上 (2/2ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ)

 落ち目な中国と対照的なのが、インドといえます。気が付けば、経済成長率ではすでに中国を追い越したのですね。ですから、今後の投資もインドが中心となり、中国から撤退する動きが加速するとみられます。

 安全保障の面でも、次のようなニュースがありました。

「(ニューデリー 11日 中央社ニューデリーで開かれたインド外務省、同国のシンクタンクの共催による国際会議「ライシナ対話」(8~10日)に出席した蕭美琴立法委員(国会議員)ら台湾の訪問団は最終日の10日、インドのシンクタンク幹部らと会談し、地域における中国の勢力拡大や安全への脅威、台湾に対する圧力の強化などについて話し合った。インドの専門家の多くは、台印間の協力関係を深めるべきとの考えを示し、日本、米国、オーストラリア、インド4カ国が安全保障などを協議する首脳級の戦略対話を東南アジア諸国連合ASEAN)に拡大し、台湾も参加して中国をけん制するべきと主張する声も上がったという。

訪問団は会期中、各国の政府職員や学者らと、地域の安全や経済、両岸(台湾と中国)関係、民主主義の擁護などについて意見を交した。蕭氏によると、台湾と交流した参会者の多くが、中国が国際社会から台湾を孤立させようとしている問題などを自発的に提起し、関心を示した。蕭氏は、地域全体として見れば、中国は台湾だけでなく、南シナ海やインド洋、「一帯一路」の対象となる国などに対しても非常に高圧的だと指摘。これは各国共通の課題でもあり、出席者らは非常に高い関心を持っていたと報告した。

台印関係については、米中貿易戦争の過程で、中国に工場を構える台湾企業が方向転換を迫られている中、労働力の需要が高い産業は台湾への回帰は難しいとした上で、東南アジアや南アジア諸国との関係強化を目指す蔡英文政権の「新南向政策」の対象国・地域にはインドも含まれると説明し、台湾とインドには多くの協力の余地があるとの見方を示した。」

台湾、インド政府主催の国際会議に参加 中国の脅威などで意見交換 | 政治 | 中央社フォーカス台湾

 とまあ、このように、インドも台湾の取り込みに熱心です。日本にとってはありがたいことですし、中国包囲網がますます強化されることにもなります。

 トランプ政権成立以降の対中包囲網という流れはもう止めようがありません。その背後で、経済的にも軍事的にもインドはますます力をつけることになるでしょう。