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死刑台に上るドイツ銀行

死刑台のエレベーター

死刑台のエレベーター

 このころのマイルス・デイビスは良かったという話はさておき、ドイツ銀行にも宿命の時が迫っているようです。

  ハッキリしているのは、そろそろドイツ銀行をうまく破綻させる方向が出始めたということでしょう。

「中国複合企業、海航集団(HNAグループ)が保有するドイツ銀行の株式を売却する方向で検討に入った。海航集団はドイツ銀行の株式の7.6%を握る大株主。これまで積極的に海外投資を進めてきたが、経営の悪化で資産売却を急いでいる。米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)などが報じた。

 WSJによると、海航集団は保有するドイツ銀の株式について、今後1年半をかけて段階的に処分していく。海航集団はほかにも、今年に入って米ホテル大手、ヒルトン系列会社の持ち株や不動産などを売却。傘下の航空機リース大手アボロン・ホールディングス(アイルランド)の株式の約3割をオリックスに譲渡するなど、相次いで資産を手放していた。

 海航集団は共同創業者で董事長だった王健氏が7月に出張先のフランスで急死するなど、混乱が続いている。中国当局も借金に依存する同社の経営戦略を問題視しており、経営の急速な悪化が懸念されていた。

 7日のフランクフルト株式市場でドイツ銀の株価は朝方、大きく値下がりした。ドイツ銀は3年連続の最終赤字になるなど業績の不振に苦しんでおり、投資銀行部門の縮小などのリストラを急いでいる。海航集団による株式の売却が直接、業績に影響する可能性は低いとみられるが、当面は低迷する株価の重荷になりかねない状況だ。」

海航集団、ドイツ銀行株を売却へ 米紙報道 :日本経済新聞

 海航集団の保有するドイツ銀行株が今後市場に出回ることになれば、株価を下げる要因になります。ドイツ銀行の経営が健全であれば、問題はないのかも知れませんが、そうではないところが問題です。

「 ドイツ銀行は危機を脱しておらず、株価はさらに下落するだろう。ベレンベルク銀行のアナリスト、エオイン・ムラニー氏がこのような見方を示した。
 同氏は23日のリポートで、ドイツ銀は「ゆっくりと消え去りつつある」とし、最重要事業が構造的な衰退をたどっていると分析した。経営陣が中期的な目標とする株主資本利益率(ROE)10%は永久に達成できないだろうとし、目標株価を8ユーロと12ユーロから引き下げた。
 ブルームバーグがまとめたアナリスト予想の中でこれは最低だが、バークレイズとソシエテ・ジェネラル、ロイヤル・バンク・オブ・カナダの目標株価も同額だ。フランクフルト時間午前9時42分現在は9.80ユーロ。6月には過去最低の8.75ユーロを付けた。
 ムラニー氏によると、ドイツ銀は法人・投資銀行業務の市場シェアを引き続き失っている。どうやってこのトレンドを反転させるかが「なかなか見えない」という。レバレッジを低下させる計画は基調的な収益力の弱さをさらに露呈させるだろうとも同氏は述べた。
 欧州の他の銀行はリテールバンキングかウェルスマネジメントという頼れる中核事業があるが、「ドイツ銀にはそれがない」とムラニーは指摘。国内同業コメルツ銀行と合併すればリテールおよび商業銀行業務を強化し得るが、実現の「可能性は低く最後の手段」だと同氏はみている。」

ドイツ銀は消え去りつつある、危機脱していないーベレンベルク - Bloomberg

 株価が下がって収益が上がらないのであれば、企業としては存続することはできません。そのために静かな幕引きが検討されています。

 「ドイツ銀行クリスティアン・ゼービング最高経営責任者(CEO)から欧州連合(EU)内の数千に及ぶ銀行への厳しいメッセージはこうだ。合併して大きくなる以外に生き残る道はない
 ゼービングCEOは29日にフランクフルトで行った講演で、「欧州で銀行合併への圧力は著しく高まるだろう」と言明。すでに急を要しているIT投資に加え規制面の要件厳格化で、多くの銀行は負担に「圧倒」されるだろうと語った。
「ユーロ圏には5500の金融機関があるが、ますます全体を見通すことが困難なこの世界の中で、どれだけの金融機関が本当にリスクを管理できるだろうか。規模の優位性がかつてないほどの大きさを持つプラットフォーム経済にどれだけの金融機関が適合できるだろうか」と問い掛けた。
 ドイツ銀行自身にも、国内競合のコメルツ銀行と最終的に統合を模索するとの臆測が続いている。ゼービングCEOはこの臆測に直接言及しなかったが、同行が世界的な野心を捨ててはいないとあらためて表明した。」

ドイツ銀行CEO:欧州の銀行、合併圧力は著しく高まるだろう - Bloomberg

 ドイツ銀行のゼービングCEOも、規制やIT投資をあげてはいますが、結局、ドイツ銀行単体での存続は無理だと判断したのでしょう。結論としては、今後、ドイツ銀行は、例えばコメルツ銀行のような他の金融機関との合併を模索するということになります。

 ドイツ銀行以外にも、イタリアのウニクレディットなどは、トルコ債券の焦げ付きが指摘されています。そのためにフランスのソシエテ・ジェネラルとの合併が検討されています。

 日本でも都市銀行がいくつも合併し、少数のメガバンクに統合されたという経緯があります。おおよそ、2001年前後のことでした。1998年には、バブル景気崩壊後の不良債権によって、北海道拓殖銀行が倒産しました。この時に始まった金融危機の解決策として、メガバンクの創設があったわけです。

 今回のドイツ銀行もその筋書きに沿って合併を行おうとするのでしょうが、収益体質が脆弱で、相当の負債も見込まれるドイツ銀行を拾ってあげようという気前の良い金融機関を見つけることは至難の業でしょう。それでも、最終的にはメルケル首相が介入するとは思いますが。

 結論としては、今後欧州の金融機関は暴風雨の時代に突入するということです。ドイツを除くEU圏の諸国の経常収支は、基本的に赤字なので、日本の例が参考にならないほど、厳しい状況になると予想出来ます。