FirstHedge 明日の投資情報

投資を搦め手で分析します。

経済で米国を調略する中国

<毛利元就と戦国時代>調略の神髄にせまる (歴史群像デジタルアーカイブス)

 今回の田村記者の記事は大変素晴らしいものでした。それを元に現在の中国の状況を分析することにしましょう。

 「トランプ米大統領は中国との「貿易戦争」について最近、「無期限だ」と言い放った。局面は圧倒的に米国優勢のように見えるが、どっこい中国の習近平政権には共産党伝統のゲリラ戦法がある。それに手を貸しているのは米金融界だ。米大手銀行や投資ファンドは巨額の「赤い」マネーの運用を引き受ける。背後で仕掛けるのは誰か。

 謎を解く前に、グラフを見てみよう。3.1兆ドル台を維持している中国の外貨準備を構成する米国債とその他の資産、中国企業による海外企業のM&A(企業の合併・買収)の推移である。外準は日本など西側世界の場合、ほぼ全額が米国債で運用されるが、中国の場合は3分の1強を占めるに過ぎない。残る60数%は米国債以外の証券で運用されるが、中国当局は詳細を明らかにしていない。

 筆者は偶然、その秘密の一端を米IT業界筋から聞いた。中国外準の約3分の1、約1兆ドル(約110兆円)は中国人民解放軍が管轄し、解放軍長老の劉華清氏(2011年死去)の子女とされる57歳の女性が仕切る。劉氏は「第1、第2列島線」という専門用語を使った「近海防御戦略」を提唱し、中国では「近代海軍の父」「航空母艦の父」と尊称される。彼女の通称名は「マダムX」。ダミーのファンドを駆使しているらしく、ファンドの名は外部には漏れてこない。

 ダミー・ファンドの有力投資先は米サンフランシスコに本拠のある投資会社アイコニック・キャピタルという。アイコニックは米フェイスブックマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)など大富豪たちの資産運用を通じてシリコンバレーのハイテク、IT企業に濃密な人脈を持っている。解放軍を後ろ盾にするマダムXは1兆ドルの運用を通じてシリコンバレーの成長企業にアクセスできるわけだ。昨年11月に北京の人民大会堂に勢ぞろいし、習国家主席の言葉を引用してたたえた面々は、ザッカーバーグ氏、アップルのクックCEOらマダムXのシリコンバレー・パートナーばかりだ。

 カネは政治にモノを言う。マダムXはカリフォルニア州の中国人コミュニティーに隠然とした影響力を持っていた反日運動家、ローズ・パク(中国名・白蘭)氏(16年死去)のスポンサーだ。パク氏はサンフランシスコでの慰安婦像設置を推進した。マダムXは親中派のダイアン・ファインスタイン上院議員とも親しい。

 産経新聞ワシントン駐在客員特派員、古森義久氏の14日付本紙コラムによれば、ファインスタイン氏の補佐官だった中国系米国人のラッセル・ロウ氏が、長年にわたって中国の対米諜報活動を行っていた。ロウ氏がファインスタイン氏の事務所を去った後、事務局長を務めている財団は慰安婦問題に関する日本糾弾を活動の主目標に掲げる中国系組織と密接なつながりがあるようだ。解放軍マネーはシリコンバレーへの投資を通じて膨らみ、その上がりの一部が米国での反日資金になっている可能性が濃厚だ。

 グラフに話を戻すと、中国の外準は習政権の対外戦略と密接な関連がある。中国は15年夏、人民元レートの切り下げに踏み切った後、資本逃避が加速し、4兆ドル近くまで膨らんでいた外準は急減した。しかし、16年には米国のハイテクや欧州のバイオ関連の企業などの買収攻勢に転じ、2000億ドル以上を投じた。米国債保有残高は若干減らす程度にとどめ、米国債以外の証券を6400億ドル取り崩したことになる。M&Aなど対外投資に使った分を差し引いて残る外準は、資本流出に伴い下落する人民元の買い支えに回したと推計できる

 米中貿易戦争は、23日に知的財産権侵害をめぐる米側の対中制裁第2弾の発動と、これに対抗する中国の報復が行われた。トランプ政権は中国からの輸入品2000億ドル分への追加制裁を準備中であるし、さらに2500億ドル分を上積みするとも示唆している。トランプ氏は中国の経済・軍事両面での膨張の源泉が年間3800億ドルにも上る米国の対中貿易赤字に伴って供給されるドルだと見て、そのルートを断ち切る決意だ。

 問題は日本だ。マダムXとその背後にいる中国共産党人民解放軍の巨大資金をシリコンバレーに投じて増殖させるやり方は、まさに「敵の武器で戦う」毛沢東戦法を想起させる。中国の抱き込み作戦にまんまと乗せられ、経済圏構想「一帯一路」への協力や日中通貨スワップ協定を推進する日本の政官財界、賛同メディアを見て、マダムXはほくそ笑んでいるに違いない。」

【田村秀男の日曜経済講座】米中貿易戦争に影の主役あり 100兆円動かす「マダムX」(1/5ページ) - 産経ニュース

 最近は中国には触れていなかったので、新鮮な記事でした。この記事での重要なキーワードは「劉華清」という人物です。劉華清には娘が二人いまして、今回はお姉さんではなくて、妹の刘晓莉だと考えられます。というのも彼女の亭主が人民解放軍系の有名なコングロマリット保利集团公司董事長徐念沙であるためです。ただ彼女のプロフィールはネット上ではほとんど見出すことができません。姉の刘超英にしても、人民解放軍参謀本部情報部第五局の副局長ですから、生粋の解放軍人脈に連なるとは言えます。

 保利集団と言えば、クリントン大統領の選挙運動にインドネシアの子会社を使って違法に資金を居室したことが知られています。それに関わったのが、姉の刘超英です。保利集団の初代の董事長は、賀平です。これは鄧小平の娘の婿で、駐米大使館付き武官などを務めていました。つまり、保利集団は、鄧小平の流れをくむ大企業グループであるわけです。マダムXがその董事長の妻であるとすれば筋は通ります。

 これも基本的な知識ですが、中国の外貨準備の僅か三分の一しか米国債が占めていないというのは重要な事実です。今回の習近平失脚未遂につながる重要な伏線だからです。劉華清は、天安門事件以降の混乱の中で、江沢民の監視役として中央軍事委員会副主席に指名されています。当時の人民解放軍の中では傍流の海軍の、しかも既に一旦退役していた劉華清を鄧小平は再び党の要職に就けたのですから、劉華清は、鄧小平に連なる中国共産党保守本流とでも呼べる存在です。

 その娘が外貨準備の三割を確保しているということは、今回のトランプ大統領による貿易戦争により、一番損害が大きくなる部分からの抵抗に、習近平は屈した、つまり人民解放軍の金蔵に屈したとみることもできます。たいていのことであれば、腐敗撲滅という人事権を振り回すことで、問題は解決できたのですが、外貨準備の大本から反撃を受けたというのが、今回の習近平失脚説の背後にあったと考えられます。

 とするならば、中南海は今後荒れるという予想が成り立ちます。シリコン・バレーの話はまた後日。