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ロシアはシリアを支援できるのか

シリア―東西文明の十字路 (中公文庫)

 どんなに悪ぶってみたところで、ロシアには貧弱な経済という弱点があります。中東における影響力を確保したものの、シリア再建に関しては、他の西側諸国の支援を請わねばならない立場にあります。

 「ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は22日、ロイターとのインタビューに応じ、シリアのアサド政権の後ろ盾となっているロシアについて、シリア介入で「行き詰まった」状態となっており、他国がシリア復興の資金を負担することを求めているとの見解を示した。

 ロシアの現状は、同じくシリアの後ろ盾となっているイランに対し、米国がシリアからの軍撤退を求める好機になると語った。

 また、通貨危機に陥ったトルコの情勢については、同国が拘束している米国人牧師を解放すれば、米国との危機は即座に終わる可能性があるとの見方を示した。

 イスラエルを訪問中のボルトン補佐官は、シリア情勢を巡るロシアとのこれまでの協議で、アサド政権が北西部イドリブ県の反体制派に対して実施している空爆などの攻撃に理解が示されたことはないと指摘。

 「われわれは軍事情勢について非常に懸念しており、イドリブでの軍事対立が激化した場合にアサド大統領が化学・生物兵器を使用することは断じて許されないと明言する」とした。

 化学・生物兵器がイドリブで使用された場合の米国の対応については、「強力」なものになると述べるにとどめた。

 トランプ政権はシリアに駐留する米軍の撤退を目指す構えを示してきた。ボルトン氏は、過激派組織「イスラム国」(IS)掃討を完遂するとの目的やシリアに展開するイラン民兵や軍を巡る懸念があるため、駐留を継続していると説明。

 ボルトン氏によると、ロシアのプーチン大統領は米側に、ロシア政府はイラン軍にシリアからの撤退を強要することはできないとの立場を示していたという。

 「プーチン大統領は、自国の利益とイランの国益は完全に一致していないとも述べた」とした上で、ロシアが果たし得る役割についてロシア側と協議する意向を示した。ボルトン氏は23日にジュネーブでロシアのパトルシェフ安全保障会議書記と会談する。

 「シリアの内戦を解決するために、米国と諸外国がどのような合意をまとめられるかについて今後、見極めることになる。ただ、解決の前提条件はイラン軍の全面撤退だ」と強調した。

 また、ロシアはシリア介入で「行き詰っている」ため、この問題を巡る米ロ間の協議では、米国が影響力を行使できていると指摘。「ロシアの欧州での猛烈な外交活動は、ロシアが他国にシリア復興の資金負担を求めていることを示している」との見方を示した。」

インタビュー:ロシア、シリア介入で「行き詰まり」=ボルトン氏 | ロイター

 トランプ大統領は当初からシリアからの撤退を主張していました。シリアの再建のことまで考慮していたとするならば、さして悪くない方針であったように思えます。シリアに深入りさせることでロシアの疲弊も狙えるためです。東京都の1.5倍程度の経済で、極東・中東・東欧で同時に戦線を開くことはできません。むしろ、ロシアに中東で深入りしてもらった方が、アメリカやヨーロッパ諸国にとって居心地が良いはずです。

 ただ、湾岸諸国の原油資源への影響力という点で言えば、シリアから撤退すれば、ドミノ倒しのように、影響力の低下は免れません。そのために、アメリカ国内でも様々な勢力の間で綱引きが行われる最中でしょう。

 もう一方の当事者であるイランにとっては、シリアは、もう一つのシーア派の拠点であるレバノンヒズボラを結ぶ回廊であり、手放すわけにはいきません。しかし、その一方で、イラン国民の間には、過剰な反米姿勢、イラン政府、特に革命防衛隊がらみの腐敗には不満が高まっています。

 こうしてみれば、シリアに関連するいずれの国も、決定打にかける状況がしばらくの間続くと見られます。こうした硬直した状況が転換を迎えるのは、トルコ情勢が動く時でしょう。