FirstHedge 明日の投資情報

投資を搦め手で分析します。

新首相により、印パ関係は悪化か?

パキスタン財閥のファミリービジネス:後発国における工業化の発展動力

 地味なニュースでですが、中東問題を考えるうえでは、重要なニュースです。

 日経新聞からです。

「 7月のパキスタン総選挙で勝利したパキスタン正義運動(PTI)の党首イムラン・カーン氏(65)が17日、新首相に選出された。同国は外貨危機に直面し、中国など海外に支援を仰ぐのが喫緊の課題だ。支援外交を機に対中関係が従来のインフラ整備から安全保障協力に広がる一方、対米関係が疎遠になる可能性がある。パキスタンが米と協調してきた対テロ戦の手綱を緩めればアフガニスタンも混迷を深めるなど地域情勢に影響を与えそうだ。
 パキスタン下院で17日午後(日本時間同日夜)に実施した首相指名選挙で、カーン氏は176票を獲得、対立候補の96票を上回り首相に選出された。カーン氏は選出後の演説で「この国に必要な変革をもたらす機会を与えてくれたことに感謝する」と述べた。18日には新首相の就任宣誓式を予定し、主要閣僚の任命も始まる。
 カーン氏はクリケットの元スター選手で国政は未経験だが、就任早々、直面する外貨危機をどう乗り切るか手腕を問われる。外貨準備高は10日時点で101億ドル(約1兆1000億円)と2016年10月から半減し、輸入の2カ月分という危機的水準だ。中国の広域経済圏構想「一帯一路」の一部として進むインフラ事業などで、対外債務は1000億ドル近くにのぼる。
 支援を要請する相手には中国や国際通貨基金IMF)、サウジアラビアが挙がる。総選挙でPTIを支援したとされるパキスタン軍が傘下会社を通じ一帯一路事業の恩恵を受けており、カーン氏が事業存続と対中関係を重視する公算が大きい。
 中国接近が強まると、パキスタンの「対テロ戦」の性質が変わりそうだ。従来は主に米国が、政情不安の増すアフガンとの国境付近での対テロ戦をパキスタンに求めていた。一方、中国はイスラム過激派の中国国内への流入を防ぐため中パ国境地域の警備や、一帯一路の事業現場での治安維持を求めており、今後パキスタン軍の配置が変化する可能性がある
 パキスタン紙によると、在米パキスタン大使館で14日開いた会合で、米国務省高官は「(南アジア)地域の平和実現に向け主導的な役割を期待し続ける」と話した。アフガン南東部ガズニ州では先週から反政府武装勢力タリバンが攻勢をかけ、アフガン政府軍と駐留米軍は苦戦する。タリバンや過激派組織「イスラム国」(IS)がパキスタンとの国境地帯に潜伏しており、米高官はパキスタンに安保協力の継続を求めた格好だ。パキスタンの対中接近と反比例し、米パ関係が冷え込めば、協力体制が緩みアフガン情勢が混沌とする可能性がある
 前政権で一時改善が進んでいたインドとの関係も膠着しそうだ。印パ両国は1947年に共に英国から独立したが、カシミール地方の領有権を巡り対立してきた歴史を持つ。カーン氏は7月26日、カシミール問題について「両国は早期に話し合いを再開しなければならない」と述べた。しかし、「インドとの対立をレゾンデートル(存在意義)にし政治力を保つパキスタン軍が、関係改善を許すとは思えない」(インドの学識者)との見方は多い。
 インドの外交専門家サリーン氏は、パキスタンの前与党を率いたシャリフ元首相が「対印関係の改善や、外交・内政への軍の介入を排除しようと試みたため、選挙戦で軍に妨害された」と指摘する。それだけに、カーン新政権は当面、外交面で軍の意向を尊重する公算が大きい。」

パキスタン首相にカーン氏 中国接近で地域情勢変化も (写真=AP) :日本経済新聞

 この記事に関して、いくらか感じる違和感は、米パの関係もそれなりに強いのではないかということです。米軍によるビン・ラーディン襲撃にしても、パキスタン当局は、あえて見ないふりをしていました。軍事援助も多額に上り、すぐに米パの断交にはつながりにくいと思われます。

 中国包囲網が次第にはっきりとした形を現しつつある現在、その対中包囲網の一角をインドが占める以上、いずれ、パキスタンが米国・インドを選ぶのか、中国を選ぶのかを決定しなければならない時がやってくるでしょう。そのぎりぎりの選択をパキスタン、特に軍が、中国を選ぶかは微妙であるように思えます。理由は簡単で、負ける方にはつかないと予想できるためです。

 現在の米中関係が、現状のまま推移するなら、パキスタンの漸次的な対中接近はあり得るでしょう。しかし、逆に、米中対立の激化という文脈では、中国にはつきにくいように思えるのです。