FirstHedge 明日の投資情報

投資を搦め手で分析します。

失脚しそうな習近平

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

 習近平独裁はかなわなかったということでしょう。

「 米中貿易戦争の勃発で北京・中南海は臨戦態勢にある。中国首相、李克強(リー・クォーチャン)が久々に元気だ。一方で国家主席習近平(シー・ジンピン)の露出度がやや落ちている。ちょっとした異変である。
 その証拠もある。7月9日付人民日報の1面から習近平が一切、消えた。記事の多くが李克強と、彼が取り仕切る国務院(政府)絡みのニュースだった。
 この5年間、大したニュースがない日でさえ、何らかの形で習近平に絡む記事が共産党機関紙の1面に大きく載り続けた。それは大物の政敵を「反腐敗」の名目で大胆に摘発した習近平の日の出の勢いを示していた。同じく7月12日付1面にも直接、習近平が登場するニュースはなかった。
 「中国と米国の貿易戦争が実際に始まってしまったことで微妙な変化が出てきた」。こう指摘するのは共産党内の事情を知る関係者である。中国は表面上、勇ましく米国への対抗措置を口にしている。だが、本音は勝算が見えにくい貿易戦争のエスカレートを避けたい。
 今、共産党の宣伝・監視当局は、中国内で「中米貿易戦争」という言葉を“敏感語”に指定している。交流サイト(SNS)などインターネット上に拡散しないよう裏でできるだけ削除しているのだ。ぎりぎりセーフなのは「中米貿易摩擦」までである。
 官製メディアも少し前によく使った「米国による自由貿易体制へのテロ攻撃」というような過激な表現は避け始めた。米大統領、トランプを刺激する直接的な攻撃の言葉もできるだけ控えている。国内世論のコントロールに腐心しているのだ。
 一方、李克強は首相として中国市場の開放を対外的に宣伝する役割を担い始めた。中国は、トランプの措置におびえる外資が中国から逃げるのをどうしても食い止めたい。先の訪独でドイツ首相のメルケルと会談し、中独の経済的な蜜月をアピールした記事も官製メディアで大きく扱われた。(以下略)」

臨戦中南海、「紅いテスラ」呼ぶ王岐山氏と元気な李首相 :日本経済新聞

  報道から徐々に明らかになっているのは、トランプの貿易戦争に対して、習近平が対応できなかったということでしょう。さしあたり対米交渉にあたった劉鶴では全く成果が上がりませんでした。そして、王岐山といえば、テスラに中国で工場を設立することを確約させたにとどまります。また、中国への傾斜を深めていたザッカーバーグフェイスブックは、中国での活動にいったん許可が下りたのち、再びその認可が消滅してしまいました。

 米中の蜜月を演出しようにも、そのネタがないというのが現状です。アメリカの中西部の農民の被害はアメリカ政府が保証することになりました。あとはアメリカが中国を徹底攻撃するだけです。

 アメリカの対決的姿勢を導き出したのが、習近平だという認識が長老の中で深まりつつあります。ここまでくれば、習近平がどう弁解しようと、このまま権力を維持することが不可能になりました。日経が報じる習近平が人民日報の一面で取り上げられないということは、その政治力学の変化を示しているのです。

 これまでの習近平の対外政策は、台湾や日米に対する軍事行動を主眼としたものでした。ただ、習近平は台湾や日米を軍事的に挑発することはありませんでした。その理由は簡単で、現在の軍事力では日米に勝てないということが、何度も明らかになったためです。その情報評価には当然民主党時代に日本から流出した日本の防衛省の情報もふくまれています。これでは勝てないというのが実態だったはずです。そうした契機が何度かあり、一帯一路で資金が枯渇すると、途端に対日接近を始めたのです。わかりやすいですね(笑)。

 そして、失脚寸前の習近平は次期の主席を担うだけの政治力がありません。当然、別の人物が習近平の後を継ぐことになります。

 しかし、習近平は後任者には決して良い感情は抱いていないはずです。ですから、対日戦、対米戦の情報評価は後継者には見せないでしょう。

 その結果、次期の中国の指導者は、甘い予測に基づき軍事作戦をあらためて立てるでしょう。つまり、次期政権で中国との軍事紛争が勃発し、しかも、比較的短期間に中国の敗北で終わるというシナリオが見えてきます。

 本当に危ないのは、習近平の次世代なのです。