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ドイツ銀行に将来はあるか

俺たちに明日はない (字幕版)

 

 結論から言えば、「ドイツ銀行に明日はない」ということになるでしょう。株価は今年に入って4割下落しています。

  まずロイターの記事を紹介しましょう。
 「ドイツ銀行(DBKGn.DE)の評判は近年、劇的に失墜しているが、恐らく最も驚くべきは、それでも世界の金融市場において欧州最大のプレイヤーであり続けているということだろう。
 問題は、株価が急落し、デリバティブ残高が50兆ドル(約5500兆円)に近づく中で、このドイツ最大の銀行が、市場の混乱を最低限にとどめつつ、その存在感を円滑に少しずつ縮小できるかという点だ。
 新任のゼービング最高経営責任者(CEO)は、同行のグローバル投資銀行部門を縮小し、欧州やドイツ国内市場への集中を高める計画に着手した。
 外国為替や信用融資、ストラクチャードファイナンスなど、ドイツ銀が大きな存在感を示している市場を切り捨てて、離脱するならば、混乱が生じる可能性は大きくなる。だが、これだけ支配的な地位にある市場を同行が完全に放棄してしまうとは想像しにくい。
 金融市場に問われているのは、これほど大規模で複雑なエクスポージャーを抱えた銀行が、はたして市場の流動性やトレーディング、価格決定に破壊的な影響を及ぼすことなく規模を縮小できるのか、という点だ。
 ドイツ銀の抱えるデリバティブの総エクスポージャーは、昨年時点で48兆ドルを超えた。ただし正味のエクスポージャーは200億ドルで、投資銀行及びトレーディング事業の収益は142億ドルだ。この規模を、わずか230億ドルの時価総額で支えている状況だ
 市場参加者が吸収すると想定すれば、デリバティブエクスポージャーは、いかにも大きい。多数のプレイヤーに分散しており、互いの関係が非常に不透明であるだけに、不確実性が増しており、どこが最大のエクスポージャーを抱えているのか、市場参加者は疑心暗鬼に駆られている。
 「もし他の銀行やファンドマネジャーが現時点で、ドイツ銀関連で自身がどれだけのエクスポージャーを抱えているかを認識していないとすれば、驚くべきことだ」。そう語るのは、銀行出身で現在は金融アナリストとして独立しているヘレン・トーマス氏だ。
 「彼らのリスクはカウンターパーティ・エクスポージャーではなく、マーケット・エクスポージャーだ。ドイツ銀行の衰退は、連鎖反応的に市場全体におけるポジション解消を引き起こしている」と語るトーマス氏。
 国際通貨基金IMF)は2年前、ドイツ銀は他の金融機関との連携があるために、世界金融市場の安定性にとって、他のどの銀行よりも大きなリスクとなっていると主張した。
 ドイツ銀の株価は先月末、9.1570ユーロという過去最低の終値を記録し、時価総額は190億ユーロ(約2.5兆円)に下落した。ロイターのデータによれば、時価総額ベースで世界第83位の銀行という位置付けだ。
 だがそれでも、銀行業界の分析会社コアリションによれば、ドイツ銀は投資銀行としては、いまだ世界第6位だ。世界のクレジット市場ではJPモルガン(JPM.N)と並んで2位、主要10カ国通貨の外為取引では3位、証券化市場ではシティ(C.N)と並ぶ第3位となっている。(以下略)」

コラム:凋落のドイツ銀が市場に生む「疑心暗鬼」 | ロイター

 エクスポージャーは200億ドルとはいうものの、レバレッジをかけている以上、エクスポージャーが膨れ上がる可能性も考慮しておかねばなりません。つまり、ドイツ銀行の経営状況にかかわらず、マーケットの状況が悪化すれば、自動的にドイツ銀行も崩壊というシナリオになります。

 こうした危機的状況はこの数年継続しています。有効な改善策は、資本を他から注入することです。

 その際に協力したのが、カタール、中国でした。カタールに関しては、2014年にドイツ銀行の増資に協力しています。

「 ドイツ銀行(DBKGn.DE)は18日、カタール王族に対する株式割当などによる80億ユーロ(110億ドル)の自己資本増強に乗り出した。
カタール王族のシェイク・ハマド・ビン・ジャーシム・アルサーニ氏が支配する投資会社は、ドイツ銀行から17億5000万ユーロの株式を引き受けた。同行はさらに株主割当で63億ユーロを調達する。
 同行は増資によって投資銀行部門の強化が可能になり、特に英バークレイズ(BARC.L)やスイスのUBSUBSN.VXなどの競合相手が米国から撤退した後の空白を埋めたい考えだ。
 米国で一流バンカーを採用するほか、ドイツと欧州ではリテール部門の設備更新に3年間で2億ユーロを投入し、大手法人顧客を支援するためにアドバイザーを最大100人採用するなど成長加速計画に力を入れる。さらに主要新興国市場では富裕層資産運用チームを3年間で15%増強することを目指すという。」

ドイツ銀行が110億ドル増資、カタール王族が主要株主に | ロイター

 これは2014年の記事ですが、この増資で何とか南極を切り抜けようとしたことがわかります。

 中国に関しては、以前以下のエントリーで扱っています。

 ただ、海航集団は、最盛期に比較すると、持ち分のドイツ銀行株を少しづつ処分しています。さらには、ヒルトンホテル関連の株も処分しており、経営状況は火の車であるといえます。

 ここで思い出していただきたいのは、カタールサウジアラビアを筆頭とする湾岸の産油国から断交措置を受けていることです。

 さらには、アメリカが中国に対して通商戦争を仕掛けていることは何度も取り上げてきました。つまり、現段階で、カタールとアメリカ、中国とアメリカの関係は決して良くないのです。

 つまり、ドイツ銀行を支援するためにアメリカが協力する可能性は極めて低いということになります。むしろ、中国のバブル崩壊で、ドイツ銀行も同時に崩壊、もしくはヨーロッパでユーロ危機が発生し、ドイツ銀行が破産、中国にも飛び火という可能性が高いといえます。

 中国経済の動向にもよりますが、アメリカの景気後退局面に入るのが、あと1年から2年程度です。その時にはユーロ圏もかなり悲惨なことになっている可能性が高いといえます。今後は、ユーロを売るという方向で投資も考えねばならないでしょう。