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北朝鮮でクーデターの可能性

クーデター(字幕版)

まず、ブルームバーグの報道から始めることにしましょう。

まず、ブルームバーグの報道から始めることにしましょう。
北朝鮮は16日、同日予定されていた韓国との閣僚級会談を中止すると発表し、6月12日の米朝首脳会談の運命について熟考するよう米国に警告した。米朝首脳会談での飛躍的な成果に対する期待は後退した。
 韓国統一省によれば、北朝鮮は韓国当局に対し、16日の閣僚級会談を「無期延期」すると伝えた。定例の米韓空軍の合同訓練「マックスサンダー」を理由に挙げた。この日の閣僚級会談では、先月の南北首脳会談で調印された「板門店宣言」の実施について協議する予定だった。
 北朝鮮は16日、国営メディアの朝鮮中央通信(KCNA)を通じて、「米国は韓国と組んで北朝鮮への挑発的な軍事脅迫を行う前に現在の優先課題である米朝首脳会談の運命について熟考する必要があろう。われわれは米国と韓国当局の次の行動を注視する」と表明した。
 北朝鮮金正恩朝鮮労働党委員長が、米朝首脳会談で核兵器プログラムについて話し合うことに同意して以降、楽観論が広がっていたが、北朝鮮の動きはこうしたムードに水を差す格好となった。「最大限の圧力」を維持するトランプ政権の姿勢に北朝鮮は過去数週間にわたり繰り返し不満を示していた。」

北朝鮮が南北閣僚級会談を中止、米韓合同訓練を「軍事挑発」と非難 - Bloomberg

 この報道によれば、北朝鮮は5月16日に予定されていた南北閣僚級会談をキャンセルしたというのです。しかも、その理由はすでに北朝鮮が承認していたはずの米韓軍事演習だというのですから、おかしな話です。さらには、米朝首脳会談のキャンセルも匂わせています。今回はその原因を分析します。

 【1】進んでいた北朝鮮の非核化
(1)核実験施設の破棄

 五月に入ってからは、北朝鮮の核放棄が進んでいました。それが次の日経の記事です。
 「38ノースによると、5月7日に撮影された画像を分析したところ、一部の建物が破壊されていたほか、トンネルの掘削に必要な鉱山用トロッコの線路の一部が撤去されていた。
 ただ、主要な施設は手つかずで残されており、トンネルの入り口も開いたままだという。38ノースの分析によれば、北朝鮮は招致した国際メディアを前にしてトンネルを爆破する可能性がある。
 北朝鮮外務省は、早ければ今月23日にも外国メディアを招待し実験場の廃棄を実施すると明らかにしていた。
 こうした分析が正しければ、北朝鮮が核実験場の廃棄に向けて具体的な対応を取っていることを示している。
 北朝鮮はまた、予告なしにミサイル発射実験を実施しないことも表明している。」

CNN.co.jp : 北朝鮮、核実験場の廃棄に着手か 分析サイトが衛星画像分析

 北朝鮮も、核放棄に向けて一歩を踏み出していたことがわかります。

(2)北朝鮮大使の核廃棄発言
 さらに、北朝鮮の外務省も5月15日まで核放棄を宣言していました。
 「北朝鮮の韓大成(ハン・テソン、Han Tae Song)駐スイス・ジュネーブ国際機関代表部大使は15日、同市で開催されている国連(UN)の軍縮会議で演説し、北朝鮮が核実験の全面禁止に向けた国際的な取り組みに加わると言明した。
 北朝鮮金正恩キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長は先月、核実験と大陸間弾道ミサイル発射実験を中止すると発表。朝鮮半島の非核化に向け、重要な意義を持つ一歩だと評価する声が各方面から上がっていた。
 ただ北朝鮮は2003年に核不拡散条約(NPT)を脱退。また1996年の包括的核実験禁止条約(CTBT)の署名や批准も行っていない。
 韓大使はこれらの条約には言及しなかったものの、南北関係の発展と、朝鮮半島(Korean Peninsula)における軍事緊張の緩和および戦争の危険回避を目指してさらなる努力を行う方針だと述べた。

北朝鮮、核実験全面禁止の取り組みに参加へ 大使が表明 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

 ですから、5月16日に突然態度を変えたのはおかしな話なのです。

【2】北朝鮮が変心した理由
(1)ボルトンの要求
 北朝鮮が急速に態度を変更させた理由の遠因としてアメリカの要求の厳しさがあったのではないかと考えられます。
 「ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は13日のABCテレビのインタビューで、非核化実現のため北朝鮮保有する核兵器の搬出先として米南部テネシー州オークリッジを例示した。米政権ができる限り早期に核放棄させることに重点を置いているとも強調した。
 オークリッジには、大量破壊兵器の廃棄に応じたリビア核兵器開発用に保有していた遠心分離機などの部品を保管する米エネルギー省管轄の施設がある。ボルトン氏は具体的な施設名を挙げていないが、有力な搬出先候補として検討しているとみられる。
 ボルトン氏は、非核化の過程で国際原子力機関IAEA)に一定の役割はあるが、核兵器解体はIAEAの権限の範囲外になるため、米国が関係国の協力を得ながら実施することになると述べた。
 また「北朝鮮が韓国のような普通の国になりたいと望むのであれば、非核化が早ければ早いほど実現は近づく」と強調。非核化を前提に「米国はできる限り早く北朝鮮との間で貿易や投資を始める用意がある」と言及し、金正恩朝鮮労働党委員長に行動を迫った。」

北朝鮮核兵器の米国搬出案 ボルトン氏、テネシー州に :日本経済新聞

 アメリカは、北朝鮮核兵器だけでなく、核兵器製造施設もすべて接収すると宣言しているのです。実際には、化学兵器生物兵器の製造施設も加わるはずですから、北朝鮮を完全に武装解除することになります。これに対して、北朝鮮国内から金正恩に対して強い反発が生まれていることが推測されます。

(2)中国の出方
 5月15日には、北朝鮮の高官による使節団が中国を訪問しています。
「中国外務省は15日、前日に首都北京を訪れた北朝鮮の代表団の来訪目的が、経済の改革開放について中国の経験を学ぶことにあったと明らかにした。
 朝鮮労働党の朴泰成(パク・テソン、Pak Thae Song)副委員長をはじめとする一行は14日、中国共産党の招きにより北京を訪問していた。
 中国外務省の陸慷(Lu Kang)報道官は定例の記者会見で、「今回の訪問は、習近平(Xi Jinping)総書記と金正恩委員長による重要な合意の具体的な実例だ」と述べ、報道されていた北朝鮮代表団の訪中について認めた。
 陸氏は代表団の訪問目的について、「中国国内の経済発展と改革開放のプロセスがもたらした成果を知り、統治をめぐる諸問題について両党間で経験の共有を促進する」ためだと説明した。」
http://www.afpbb.com/articles/-/3174716
 朴泰成に関しては、朝鮮労働党中央委員会第7期第2回総会において、党中央委員会副委員長に選出されています。さらに、金正恩の工場見学などにも同行していることから、金正恩の側近であり、経済部門を担当していると見られます。
 その朴泰成が不在の時に、今回の発表がなされていることが、今回の急変の大きな要因と考えられます。表向きは改革開放経済の見学ということになっていますが、実際には有力な側近を金正恩から引き離すという意味もあったはずです。

【3】北朝鮮クーデター説の検証
 今回のドタキャンの最大の原因はアメリカの強硬な要求にあったことは間違いがありません。ただ性急なアメリカの要求に北朝鮮が対応できなくなっていたのが最大の原因であったとみられます。
 しかし、すでに北朝鮮は非核化にかじを取っていたのです。にもかかわらず、北朝鮮使節団が北京入りを果たした翌日に、今回の南北会談のキャンセルの発表は、中国側の意向を強く感じさせるものです。それと同時に、北朝鮮内部での政変を強く示唆するものとなっています。現在、金正恩は内外の(アメリカ以外の)敵に命を狙われているのではないでしょうか。