FirstHedge 明日の投資情報

投資を搦め手で分析します。

うまくアメリカに譲歩した習近平

f:id:FirstHedge:20180410234101j:plain

 習近平もうまく譲歩したといえます。ただ、アメリカがそれを受け入れるかは別問題です。(写真は解放軍画報より)

  中国の習近平国家主席は10日、銀行から自動車製造まで多岐にわたるセクターを開放すると明言しました。トランプ米大統領との貿易摩擦が強まる中で、中国海南省で開催中の博鰲(ボアオ)アジアフォーラムで演説した習主席は、「冷戦思考」に回帰すべきではないと警告しています。

 今回の内容は次のようなものでした。

1.年末までに金融セクターを一段と開放 
2.自動車メーカーの外資保有上限を引き下げ 
3.自動車輸入関税を引き下げ  
4.知的財産権保護を強化 
5.世界貿易機関WTO)政府調達協定への参加プロセス加速を支援
6.輸入拡大を促進する年1回のイベントを計画

 これに対して、ホワイトハウスは3.の自動車メーカーの外資保有上限、それに4.自動車関税引き下げを歓迎しているようです。

 ただ、習近平はアメリカに対して、自由貿易を維持するように求めており、保護貿易への傾斜を高めつつあるアメリカと好対照をなしています。どちらが資本主義国なのかわからなくなるほどです(笑)。

 中国の側からすれば、一帯一路を実現するためには、アメリカからの資金と協力を欠かすことはできません。西側諸国から資金を導入しなければ、金融面が持たないという現実があります。

 ですから、一見アメリカに譲歩しているように見えても、アメリカとの経済関係を維持するという意味では、習近平の希望が実現される政策ともいえます。

 ただ、裏を返せば、現段階で中国と距離をとらなければ、そのままアメリカが中国に飲み込まれてしまうという認識があります。少なくとも2030年には米中の軍事バランスは逆転しているという予測もあり、米中関係が今後10年間安定しているとは到底考えられません。

 米中の紛争のきっかけは台湾です。台湾を独立国としてアメリカが認めれば、その時から米中の軍事衝突が始まります。いまは、そのゴールを目指して少しづつ条件を整えているところなのです。

 したがって、昨日のエントリーでも指摘しましたが、アメリカが今回の中国の譲歩に完全に合意することはないでしょう。経済や軍事の面で低強度の緊張状態が続くことでしょう。