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イスラエルから見た風景

ペンブックス19 ユダヤとは何か。聖地エルサレムへ (Pen BOOKS)

 前回のエントリーでは、トランプのコンプレックスという点に焦点を当てましたが、一個人のコンプレックスだけで国際政治が動くわけではありません。ここでは、もう一つ別の観点を導入してみましょう。

  イスラエルから見れば、現在の世界の状況は次のようになります。

 まず、アメリカは、イスラエルの忠実な代弁者となっています。エルサレムへの大使館移転などはその典型です。イスラエル国防軍と米軍の関係も緊密化しています。言い方は悪いですが、現在のアメリカはイスラエルの傀儡ということもできるでしょう。その鍵を担っているのが娘婿のジャレッド・クシュナーです。

 イスラエルの利害という点から、現在のアメリカの安全保障政策をみれば、腑に落ちることばかりです。

 まず、イランとの核合意の廃棄、これは対イラン戦が近いことを示しています。そのための中東における同盟国作りの成果が、モハメド・ビン・サルマンサウジ皇太子といえます。カタールとサウジの関係を分断し、過激派が活動する基盤を潰し、その上でサウジの皇太子に、アメリカの、そしてイスラエルの利害に関わらせるというのは,今から見ればなかなかの妙手でしょう。

 北朝鮮問題も同様です。北朝鮮のミサイル・核技術が中東地域に流出した場合、イスラエルの立場は決定的に悪化します。それを防ぐためにも、北朝鮮の非核化は何が何でも推進しなければなりません。ですから、トランプ大統領金正恩と会談を行うとしても、かなり厳しいものになることが予想されます。

 イスラエルとの関係で言えば、日本はアメリカのエルサレムへの大使館移転に反対しています。これが鉄鋼アルミ関税の対象外とならなかった原因のようにも見えます。

 こうしてみれば、イスラエルの意向はかなりの程度までトランプ政権の安全保障政策に実現されていることがわかるでしょう。

 ただ、注意しなければならないのは、何が何でもユダヤ人というわけでもないのです。現在のアメリカにおける親イスラエル勢力は、どちらかと言えば、第二次大戦後にアメリカに定着したユダヤ人が中心です。アメリカ国内でも新旧ユダヤ人の間で対立が見られるのです。それでも、イスラエルという補助線を引けば、現在のトランプ制憲の動向もかなり正確に予測出来るのではないでしょうか。