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臆病だが慎重な大統領と積極的だが拙速な大統領

Yes We Can!-オバマ・クラシック

 現在のトランプ政権のあり方は、前任者であるオバマ大統領への対抗軸から校正されていると言っても過言ではありませんオバマ大統領がTPPを開始すれば、それをぶちこわす。オバマ大統領がLGBTの社会的認知を促進すれば、やはり、それを覆す。そして、オバマ大統領の煮え切らない中国政策に対して、敢えて強硬な対中政策を採用するといった具合です。

  長らく続いた民主党政権に対して、対抗軸を打ち立てるというのは、有権者にはわかりやすいといえます。ただ、オバマ大統領の政策の逆を追求するだけで、果たして、アメリカを有益な方向に導けるのかが現在問われているといえます

 率直に言って懸念を覚えるのは、遣り方というか世界観がおおよそ1980年代のビジョンであることです。今回の鉄鋼・アルミの高関税化についても多くの批判を集めています。頭が古いんですよ。

 ただ、批判を招いてでも、過激な政策を採用しなければならない必要性が、現在のトランプ大統領にはあるともいえます。ティラーソン国務長官、マクマスター安全保障担当補佐官のツイッターを用いた罷免発表など、中小企業の経営者でもなければできない過激な、そして愚かな行為と言えます。ティラーソンは、対北朝鮮政策で融和的すぎた。マクマスターはロシアに批判的すぎたというのがその理由ですが、自分のイエスマンしか閣僚に残さないのであれば、政権運営に疑問符をつけざるを得ません。

 実際のところ、そのことを一番理解してるのが,トランプ大統領なのです。先日のシルバニアでの特別選挙では共和党を基盤とする場所で敗北を喫しました。一生懸命維持してきたトランプのセルフ・イメージが地に落ちたのです。その時の選挙の結果が明らかになるのとティラーソン罷免の時期がほぼ一致することからも、トランプ大統領の焦りを確認することができます。

 もう一つのトランプ大統領の苦境を挙げると、NAFTAの再交渉が円滑に進んでいない事も挙げられます。その一方で、トランプ大統領が真っ先に否定したTPPは,今度は日本が主導して本格的に始動しています。アメリカでは,国内の産業界から、TPPに加盟するべきだという声が上がっています。

 一言で言えば、思うように政権運営ができないトランプ大統領は、自分なりにコンプレックスに悩んでいるのです。

 それが、トランプ氏は日本の安倍晋三首相は友人だとしながらも、握手をするときの安倍氏の笑顔は「『長い間、米国を出し抜くことができたとは信じられない』という笑みだ」と言及した理由です。また、北朝鮮との対話に突発的に乗り出した理由でもあります。

 うまくいっている(ように見える)安倍首相と、減税を除けば相変わらず騒動しか生みだしていない自分の政権を比較したとき、居ても立ってもいられないのでしょう。四カ国同盟構想にしても、これは日本のアイデアから始まっています。それが、今回の発言の真意であったと考えられます。

 一般に臆病だが慎重な政治家と積極的だが拙速な政治家のどちらかを選ぶとすれば、臆病だが慎重な政治家となるでしょう。しかし、その慎重さが、中国や北朝鮮の台頭を招いたこともまた事実です。中国や北朝鮮に強硬姿勢を取るトランプ政権の誕生はアメリカ史においては十分に意味のあることでした。

 しかし、トランプ政権が、オバマのアンチでしかないのであれば、さして遠くない将来行き詰まるでしょう。このままでは、トランプ大統領は任期を全うできないでしょう。最悪の事態を招く前に、ペンス副大統領と交代するべきでしょう。