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王岐山がわからなければ,中国はわからない

 王岐山と言えば、現在の習近平政権で腐敗撲滅運動を担当した政治家として有名です。しかし、その周辺には怪しい動きが見られます。

  その動きとは、王岐山が大株主とされる企業の経営危機です。

「【上海=共同】中国広東省の週刊紙、南方週末に掲載予定だった複合企業大手、海航集団の経営危機を伝える記事が発行直前に差し替えられ、反発した記者は問題となった記事をインターネット上に公開した。香港メディアが12日までに伝えた。

 同集団は習近平国家主席の腹心、王岐山・前共産党中央規律検査委員会書記との関係の近さも取り沙汰されており、記事は検閲した当局が撤回させた可能性があるとの見方も出て波紋が拡大。同紙の男性編集長は更迭されたという。

 南方週末は2013年にも政治改革を求める記事が当局の指導を受けて改ざんされ、市民を巻き込んだ抗議活動が起きたが当局が抑え込んだ。

 香港紙、明報によると、今回問題となったのは8日付紙面に掲載予定だった2本の記事。7日に掲載取りやめが決まり、執筆記者へ理由の説明はなかった。この記者は以前にも同様の経験があったという。」

中国紙が記事差し替え 記者反発、編集長更迭 :日本経済新聞

 ここには二つの問題があります。王岐山が今後どのような活動をするのか。今回の海航集団の経営危機が王岐山にどのような影響をあたえるのか。

 もう一つは中国のバブルがはじけるという可能性です。

 まず最初の王岐山との関係ですが、やはり日経新聞は昨年の12月15日に次のように報じています。

「【重慶=多部田俊輔】海外買収で巨額の負債を抱えた中国民営複合企業、海航集団(HNAグループ)の最大株主であるファンドのトップに、ドイツのレスラー元副首相兼経済技術相が就任したことが15日までに明らかになった。海航は巨額の負債に加え、株主を巡る疑惑もくすぶる。レスラー氏の登用で信用を回復したいとの思惑がにじむ。

 レスラー氏は、海南省慈航公益基金会(慈航基金会)の米国拠点とされるファンドのトップに就いた。米国の同ファンドは海航に29.5%出資する最大株主で、慈航基金会の出資比率は22.75%で2位株主。合計すると過半となる。(中略)

 海航を巡っては、前最高指導部の一人、王岐山氏の一族らが大株主であるとする疑惑が浮上。7月に海航が株主名簿を公開し疑惑を否定した。一方、海航がドイツ銀行出資時やスイス企業買収時に現地当局に提出した株主関連文書などに虚偽疑惑も出て、現地当局が調査に着手したとの報道も流れる。レスラー氏の登用には、ドイツやスイスとの結びつきを強化する狙いも透ける。(後略)」

海航最大株主のファンド、ドイツ元副首相をトップに :日本経済新聞

 これからバブルが崩壊する中国とドイツは心中するつもりなのでしょう。中国とドイツは一蓮托生。これが一つのポイントです。

 王岐山に関してはもう一つニュースがあります。

「 中国共産党の最高指導部を昨年秋に退任した王岐山・元政治局常務委員が、3月の全国人民代表大会全人代、国会に相当)で政府の要職に就く見通しとなった。トランプ米政権が対中貿易赤字に不満を募らせるなか、習近平(シー・ジンピン)国家主席は右腕の王氏を政権の中枢に残し、対米関係の仕切り役を任せるとの観測が広がっている。

 王氏は29日に湖南省全人代代表に選ばれた。党の最高指導部である政治局常務委員会を退いた人物が全人代の代表になるのは異例で、北京の外交筋は「3月に国家副主席に就き、外交や金融の分野で習氏の補佐役になる布石」とみる。

 昨年10月の党大会をへて2期目に入った習近平指導部は、対米関係の安定を外交戦略の基軸に据える。しかし、トランプ政権は核・ミサイル開発を続ける北朝鮮への対応で中国に協力を求める一方、膨らむ対中貿易赤字にいら立ちを強めており、両国関係はぎくしゃくしている。

 習近平指導部で反腐敗闘争を指揮した王氏だが、胡錦濤(フー・ジンタオ)前指導部では金融担当の副首相として対米関係を任されていた。08年のリーマン・ショックの際は旧知のポールソン米財務長官(当時)と手を組み、大胆な金融緩和で危機から抜け出すのに大きな役割を果たした。(以下略)」

対米関係仕切り役 王岐山氏、国家副主席か :日本経済新聞

 この記事によれば、今度は腐敗撲滅ではなく、対米関係と金融の面での立て直しを図るということになります。ドイツだけでなく、アメリカまでもが王岐山の担当になるといえるかもしれません。

 しばしばクーデターの噂が流れる習近平にとって、王岐山は最後の見方なのかもしれません。しかし、年齢制限で退任したスタッフをいまだに重用するというのは,逆に言えば、中国の行き詰まりを物語っているようにも見えます。王岐山がわからなければ、現在の中国分析は困難でしょう。