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イラクはイランの勢力圏

 最近非常に良いイラク論がロイターで報じられました。

 それによれば、

イラクのアバディ首相は昨年12月9日、イスラム系過激派組織「イスラム国(IS)」に対する勝利を宣言。今後も若干の戦闘はあるだろうが、実質的には戦争は終わった。

 だがそこには、戦勝祝賀のパレードも、引き倒される銅像もなく、「これにて任務完了」という瞬間もなかった。数年前であれば米紙の1面を賑わせたはずだが、トランプ米大統領がこの出来事についてツイッターに投稿することさえなかった。

 それは、米国政府として祝賀すべき理由がほとんど無いからだ。

 イラクにおいて次に大きな節目となるのは、5月実施予定の選挙だ。「ポストIS」のイラク情勢は徐々に明らかになりつつある。だが、IS打倒戦略は成功したのか、イラクにおけるアメリカの戦争は終結したのか、という問いに答えることは簡単ではない。

 現在、目を引くのは、米国の影響力が顕著に低下していることだ。

 5月の選挙で首相候補として有力なのはアバディ現首相とマリキ前首相だが、両候補ともシーア派のダアワ党所属であり、イランと関係が深い。どちらもよく知られている。マリキ前首相は、2006年、2010年選挙において、米駐留軍の大半が撤退するなか、スンナ派シーア派クルド人勢力をまとめ上げてイラクを統合する「米国の大きな希望」と呼ばれた。2014年選挙で、IS打倒に向けて再び米軍が増派される中、やはり米国の期待を担ったのがアバディ首相である。

 イランに近いグループに支持されているシーア派のアバディ首相は、宗派横断的な勢力のトップとして国政に当たっていると自身を語る。前任者のいマリキ氏もイランと親密な立場にあるが、ISに国土の3分の1を占拠される事態をイラク軍が防げなかったのは、同氏の責任だったとして、イラク政界では広く批判されている

 首相在任時のマリキ氏は、米国による占領の末期、ジョージ・W・ブッシュ米大統領が命じた米軍部隊の「急増」を継承せず、スンニ派はマリキ氏を支持するシーア派勢力による圧迫を受けた

 米軍の占領終結後、まさに米軍の最後の戦闘部隊が撤退した翌日、当時のマリキ首相がまず試みたのは、自政権のスンニ派副首相を逮捕することだった。2014年、マリキ氏はスンニ派中心のアンバール県の軍部隊を解散させ、この動きがISをイラクへと引き寄せた。その後、米国の働きかけにより、マリキ氏はアバディ氏に政権を譲った。

 だが米国からの高い期待にもかかわらず、アバディ首相は、統一イラクに向けた最低限の基礎固めである、シーア派主導の国内司法、軍、警察部隊にスンニ派を取り込む努力をほとんどしなかった。スンニ派のための経済的な機会も創出せず、公共サービスも提供しなかった。(以下略)」

コラム:イラクでの「勝利」が米国にもたらす悲劇 | ロイター

 サダム・フセイン打倒のためにイラクに戦争を仕掛けたところまではよかったものの、統治機構をすべて解体してしまい、逆にシーア派勢力とアンバル県を中心とするスンニ派地域、それにクルド人地域で国土は三分されました。

 特に問題だったのは、シーア派武装民兵による米軍に対するテロ活動でした。まだ、あまり報じられていませんが、これは現在のアメリカ軍にとってのトラウマといってもよいでしょう。

 ですから、北朝鮮での地上戦はアメリカは絶対に避けたいのです。ただ、そう言っていれば、北朝鮮核兵器開発を完了してしまいますので、徹底的なブラフによって対抗しているというのが現状でしょう。

 少なくとも、イラク戦はアメリカの勢力拡大にはつながらず、いたずらに国力を疲弊させただけということになります。その意味では、ジョージ・W・ブッシュ大統領は「進んでいるのか、後退しているのかわからない」というバノンの評価は正しかったということになります。