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深まるアメリカとトルコの対立

 トルコのエルドアン大統領は21日、クルド人民兵組織に対する大規模な攻撃の一環として、同国の地上部隊がシリアとの国境を越え、同国北部に侵攻したと発表しました。この一件は、一旦収束するかに見えていたアメリカとトルコの関係悪化につながると見られます。

 BBCは次のように伝えています。

「トルコがテロリストと考えるクルド人民兵組織「人民防衛部隊」(YPG)は、トルコ南部と国境を接するアフリン地区で活発に活動している。YPGはアフリンからトルコ軍を押し戻したと述べ、トルコの国境付近に砲撃を行ったと明らかにした。

 YPGは、過激派組織「イスラム国」(IS)と戦う米国が支援する有志連合で大きな役割を担っている。

 エルドアン大統領は、YPGを「あっという間に」打ち負かすと約束したが、民間人に犠牲者が出るのを避けたい米国は、トルコに「抑制」を求めた。

 トルコは、YPGがトルコ国内で活動が禁止されているクルド労働者党PKK)とのつながりがあると考えている。

 トルコ政府は数カ月前からアフリンや、そこから約100キロ離れたマンビジからクルド人勢力を掃討すると警告していた。」

 この記述を読む限りでは、トルコがシリア領内に残留するクルド人のテロ組織の殲滅に乗り出したように見えます。しかし、アメリカから見れば、事態は全く別なのです。

「20日に始まった軍事作戦「オリーブの枝」は、クルド人勢力のアフリンからの掃討を目指す。今月に入り米国が、IS戦闘員たちが戻って来ないよう、クルド人勢力とアラブ人民兵の対IS連合による新たな「国境警備部隊」の結成を援助すると表明しており、トルコはこれを受けて作戦実行を急いだとみられている。

 YPGや、「シリア民主軍」(SDF)と呼ばれる対IS連合は、テロリストとのつながりを否定している。米政府もこの説明を受け入れている。

 20日のトルコ空軍による空爆の後、21日には、トルコ軍とトルコ寄りのシリア反体制武装組織「自由シリア軍」(FSA)がシリア国内に侵攻した。

 トルコのビナリ・ユルドゥルム首相は、シリア国境内に深く入り込む形で30キロの「安全地帯」の形成を目指すと述べた。

 しかし、YPGの広報担当者ヌリ・マハムディ氏は、トルコ軍が「撤退を余儀なくされた」と語った。

 トルコ側では、FSAの司令官アブドゥル・ハヒム少佐がロイター通信に対し、約2万5000人の戦闘員が攻撃に参加したと語った。トルコ軍の地上部隊の数は明らかになっていない。」

トルコ軍、シリア国境越えクルド人勢力を攻撃 - BBCニュース

 この記事からも窺えるように、YPGは米国の支援を受けたクルド人部隊です。トルコには、クルド系住民が多く、独立分離運動も盛んなことから、トルコ領内では厳しく弾圧されています。

 対イスラム国戦では、アメリカは、これらのクルド人部隊の支援を受けました。むしろ前面で戦っていたといった方が良いでしょう。ですから、シリア領内のクルド人問題を巡ってトルコとアメリカは対立しており、それが軍事衝突として具体化したというのが今回の真相です。

 トルコも対米関係が悪化すれば、自国の経済への影響が大きいのですが、なかなか解決の目処を見ません。パレスチナ問題と並んで中東の火種となりそうです。