アラブの春の首謀者、捕縛される
たまには写真から始めましょう。ブッシュ大統領の右側に移っているのが、バンダル・ビン・スルタン王子です。今回のサウジの取締で捕まった中では最高ランクの王子です。
「アラブの春」は、サウジのスンニ派政権が英米と組んで主に非スンニ派の異質な長期政権を破壊するというオペレーションでした。具体的には、チュニジアのベン・アリ軍事政権、リビアのカダフィー大佐、エジプトのムバラク政権が倒され、シリアのアサド大統領も倒される寸前でイランとヒズボラの支援を受け辛うじて存続しています。
これらのアラブの春の工作に一番深く関わったとされているのがバンダル・ビン・スルタンです。投資家として有名なアル・ワリード・ビン・タラール等の逮捕とは比べものにならないほどの大物です。レーガン政権のイラン・コントラ事件、イラク戦争、そしてタイトルにもあるようにアラブの春でもバンダル王子は暗躍しました。
現在はサウジアラビアのリッツ・カールトンホテルに抑留されているようですが、このバンダル王子は、レーガン大統領以来のアメリカの歴代政権と非常に親密な関係にありました。アル・ワリード・ビン・タラールの逮捕であれば、金目当てという見当もつくのですが、今回の衝撃はただ事ではありません。
これまでのアメリカとサウジの悪事が表ざたになることはないにせよ、アメリカ・サウジ人脈がこれで完全に覆ることになります。
サウジアラビアの盟友としてイスラエルが表向きにも登場する日は近いでしょう。サウジアラビアとカタールが断交した現在、サウジアラビアはイラン包囲網の一環として生きていくほかはありません。匙アラムコの圏にしても、アメリカから2001年同時多発テロの裁判で賠償請求を受ける可能性を抱えたまま、ニューヨークで上場を迫られるのではないでしょうか。
サウジアラビアにとっては、外交上の選択肢がみるみる間に減少しています。激動の前触れにならなければ良いのですが。