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サウジアラビアの政変に関するメモ

まず、ブルームバーグの記事から紹介しましょう。

サウジアラビアが投資家に変化球を投じた。

  サルマン国王によるサウジの現職閣僚から王族に及ぶ一連の逮捕劇により、一部の投資家は腐敗と戦う当局の意志に勇気づけられた。ただ同時に、次なる逮捕の対象や今後の展開を心配している。
  
  メナ・コープ・ファイナンシャル・サービシズの資産運用部門マネジングディレクター、タリク・カキシュ氏(ドバイ在勤)は、「サウジでこのような事態は過去に例がなく、どう決着するのか市場には見当がつかない。特に海外投資家の心理に変化が表れるだろう」と指摘。「地元の投資家は恐らく、めどが付くまで様子見姿勢になる」と語った。
 逮捕事由が公にされていないことも、既に漂っていた市場の不透明感に拍車を掛けている。5日のサウジ株式市場では、キングダム・ホールディングは一時9.9%安となり、年初来の下落率は21%に拡大した。同社は逮捕者に含まれているアルワリード王子が創設した投資会社。同王子はブルームバーグ・ビリオネア指数の富豪番付50位で、推定資産額は約190億ドル(約2兆1700億円)。

サウジアラビアが投資家に変化球を投じた。

 サルマン国王によるサウジの現職閣僚から王族に及ぶ一連の逮捕劇により、一部の投資家は腐敗と戦う当局の意志に勇気づけられた。ただ同時に、次なる逮捕の対象や今後の展開を心配している。

 メナ・コープ・ファイナンシャル・サービシズの資産運用部門マネジングディレクター、タリク・カキシュ氏(ドバイ在勤)は、「サウジでこのような事態は過去に例がなく、どう決着するのか市場には見当がつかない。特に海外投資家の心理に変化が表れるだろう」と指摘。「地元の投資家は恐らく、めどが付くまで様子見姿勢になる」と語った。

 逮捕事由が公にされていないことも、既に漂っていた市場の不透明感に拍車を掛けている。5日のサウジ株式市場では、キングダム・ホールディングは一時9.9%安となり、年初来の下落率は21%に拡大した。同社は逮捕者に含まれているアルワリード王子が創設した投資会社。同王子はブルームバーグ・ビリオネア指数の富豪番付50位で、推定資産額は約190億ドル(約2兆1700億円)。」

 今回の一件は中国によるサウジアラムコ株の購入が原因であると考えられます。日本経済新聞には、「サルマン国王の息子、ムハンマド皇太子への権力集中を一段と進め、皇太子の国王即位を阻みかねない前国王派を排除する狙いが透ける」と分析されていますが、確かにムハンマド皇太子への権力集中という側面があったにせよ、それだけではここまで激しい政変が起きるとは考えにくいのです。

 背景として考えねばならないのが、サウジアラビア国内でのサルマン国王とムハンマド皇太子に対する反発でしょう。特に皇太子はサウジアラビアを近代化するために、女性の自動車運転を認めるなど,これまでのサウジアラビアなら考えられなかった政策を次々と打ち出しています。背景にあるのは原油価格の下落による財政赤字への対処ですが、アメリカ国内で株式公開を行うことに、サウジ国内分で反発が生まれたと見るべきでしょう。そこで、クシュナーが急遽サウジを訪問し、対応を協議します。そこで、今回の宮廷革命劇となったと考えられます。とどめは、トランプ大統領のサルマン国王への電話会談でした。

Readout of President Donald J. Trump's Call with King Salman of Saudi Arabia | whitehouse.gov

めんどくさいので訳しませんが、控えめにサウジアラビアに株式公開をニューヨークで行うように求めているということなのでしょう。サウジアラムコIPO問題はトランプ大統領が中国に渡る前に片付けておきたかった問題であると考えられます。そうでなければ、習近平との首脳会談で、「サウジアラムコは我々が資金を出します」等と言われてしまったことでしょう。

 ただ、サウジアラビアという国は、国民という意識が薄い国です。国民国家の代わりに、ワッハーブ派という原理主義的色彩が強いイスラムスンニ派を奉じる国家なのです。国家としての求心力が低いので、ますますワッハーブ派の影響力が強くなる。ワッハーブ派が強くなれば、国民という意識がますます減退するという悪循環が何十年も繰り返されてきました。

 イランほどとは言いませんが、聖職者の影響力の強い国家なのです。逮捕された王族や現役閣僚達は、戒律に背く政策に強い反発を覚えていたと考えられます。それが、腐敗撲滅を理由に一斉に当局に拘束されることになったのです。これはアメリカが土壇場で中国に勝利を収めたと見なすことも出来るでしょう。

 懸念されるのが、サウジアラビア国内でのテロの激化です。あるいは、サウジ国外でも発生するかも知れません。イスラム国も滅び、テロに気をつけなければならない季節になったと言えます。

 

以前のエントリーも参考にしてください。

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