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アメリカ大統領の訪日を振り返る

 この点ではアメリカンセンターの方に一覧表があります。

americancenterjapan.com

 この一覧表を見ればわかりますが、冷戦期間中はフォード大統領がアメリカ大統領として初来日したほかは、カーター大統領、レーガン大統領、ブッシュ大統領(シニア)で、その後はクリントン大統領、ジョージ・W・ブッシュ大統領、オバマ大統領となっています。アメリカ大統領は、最近では平均して2年に一度は訪問している勘定になります。しかし、オバマ大統領の訪日には奇妙な点があります。

  それは、期間が空いていることです。

2009年11月13日-14日 鳩山由紀夫首相と会談

2010年11月12日-14日 横浜APEC首脳会議、菅直人首相と会談

2014年4月23日-25日 安倍晋三首相と会談

2016年5月25日-27日 G7伊勢・志摩サミット、安倍晋三首相と会談、広島平和記念公園訪問

菅直人首相を訪問した後4年近くも空白があるのです。これほどの空白は,冷戦終了後ありません。

 そこで、菅直人首相の時代のオバマ訪日を新聞はどう伝えていたのかを調べてみました。まず、鳩山首相の時代は次のように記されています。

オバマ大統領は普天間問題を自ら切り出した。冷静な大統領らしく声を荒らげることはなかったものの、首相を正面に見据え、「基本は守るべきだ」「迅速に解決したい」などと強い口調で、キャンプ・シュワブ沿岸部(同県名護市)以外に選択肢はないとの認識を示した

 米側の決意は席次にも表れていた。大統領の通訳を挟んだ左隣には、キャンベル国務次官補(東アジア・太平洋担当)が座った。元財務長官のサマーズ国家経済会議委員長らホワイトハウス高官をさしおいてである。普天間問題での協議を担当している同次官補がすぐに助言できるよう近くに座ったとみられる。

 もっとも、大統領は同氏の助けの必要もないほど、基地問題に精通していた。ある日本側出席者は「物事を理解する能力に優れている」と舌を巻いた。

 大統領の態度は9月のニューヨークでの初会談とは明らかに変わっていた。米政府当局者によると、9月の会談で大統領は日米同盟の重要性を訴える首相に好感を抱いたという。ところが、普天間移設をめぐる首相の発言が迷走したため、「首相に米側の真意を伝えるのは大統領以外にいない」(同当局者)と判断、強く解決を迫ることにした

 首相は大統領発言に「理解する」と応じ、「日米合意は重い」と発言したものの、「選挙中から県外、国外ということを申しあげ、沖縄の期待も強まっている」と煮え切らない態度もみせ、米側を失望させた

 普天間問題では厳しい表情をしたオバマ大統領だが翌14日、皇居で天皇、皇后両陛下と昼食をともにした後の表情は穏やかだった。大統領は両陛下について「慈悲深い」との感想をもらし、軽快に羽田空港のタラップを上がり、大統領専用機の中に消えた。」「首脳会談検証 普天間移設問題、早期解決迫ったオバマ氏」2009年11月16日 産経新聞 東京朝刊 総合・内政面より

 次の菅直人首相の時も同様です。

尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件、ロシアのメドベージェフ大統領の北方領土訪問と、北東アジア情勢の緊張度が増すなかで行われた13日の日米首脳会談。首相、菅直人米大統領バラク・オバマにまず謝意を示すことから始めた。

 「日中、日露間で生じた問題について力強く支援していただいたことをうれしく思う。米軍のプレゼンスがこの地域で重要という意識を私もだが、多くの国民や近隣諸国も持った」

 米軍の重要性を認識せず、米軍普天間飛行場の県外移設論やグアムへの国外移設論で、日米同盟をがけっぷちまで追いやったのはどの政権だったか? 前首相、鳩山由紀夫オバマに「トラスト・ミー」(私を信頼してほしい)と、普天間問題の解決を約束したのは1年前のこの日だった。

 「日本の防衛に対するわが国の決意は揺るぎない」

 中国に同盟関係の揺らぎをみせたくないオバマは最大限のリップサービスをした。ただ菅を全面的に信頼しているわけではない

 「米軍再編ロードマップが進展を遂げることを期待している」

 オバマ普天間問題を先送りしないよう、クギを刺すことも忘れなかった。菅は日本の国内問題である沖縄県知事選(28日投開票)を言い訳に使った。

 「県知事選が終わった段階から、最大の努力をしていきたい」

 だが鳩山政権の後遺症は大きく、知事選でだれが勝とうと名護市辺野古への移設実現の見通しはたっていない。日本政府内では膠着(こうちゃく)状態が続くことを見越し、新たな動きも出ている。」「【同盟弱体化】第5部 尖閣事件の陰(下)普天間切り離し策、米が一蹴 」[ 2010年11月14日 東京朝刊 総合・内政面 ] より

 率直に言って、オバマ大統領がベストの大統領だったとは思いませんが、これは議論以前の日本側の問題であったように思います。鳩山首相菅首相のお陰で日本がすっかり信用を失っことがよくわかります。

2014年の安倍首相の時はどうだったでしょうか。

米国では、安倍首相が就任した平成24年12月以前から、中国、韓国や日本の左派・リベラル勢力が米政府や議会、主要メディアなどに安倍氏は危険なナショナリストだ」との印象を植え付ける情報宣伝活動を実施していた。当然、オバマ政権もその一定の影響を受けているとみられる。

 今回の首脳会談では歴史認識問題は話題にならなかったが、安倍首相は会談でもその後の記者会見でもわざわざこう言及した。

 「日本は先の大戦終戦から70年間、ひたすら平和国家として歩んできた」

 これも、オバマ氏やその政権の安倍政権や日本に対する誤解や偏見が払拭されていれば、今さら言う必要がない言葉だったはずだ。両首脳はまだ、慎重に手探りしながら相手との間合いを詰めている段階だ。」

 リベラルなオバマ大統領からは、まだ警戒されていたことがわかります。70年談話へのホワイトハウスの介入もこうした背景があったのです。

 2016年の伊勢志摩サミットの時は雰囲気がだいぶ変わっていました。

「25日夜の日米首脳会談は、オバマ米大統領が伊勢志摩サミット会場の三重県志摩市・賢島入りした直後に開かれた。会談は、予定を大幅に延長して約1時間にわたった。特に沖縄県で起こった元米兵による女性遺体遺棄事件について率直に時間をかけて協議し、日本国内の感情に配慮する姿勢を示すことで現在の日米間の最大の懸案になった事件の“トゲ”を抜こうとした形だ。

 「米軍再編にあたっても、沖縄のみなさんの気持ちに真に寄り添うことができなければ前に進めていくことはできない」

 安倍晋三首相は25日夜の共同記者会見でこう述べた。事件によって強まった在日米軍への反発は、日米同盟のあり方そのものに跳ね返る。それを避けるためにも、沖縄県民の理解を得ることが不可欠との思いだ。オバマ大統領も会見で「日米の同盟は2カ国の安全保障について非常に重要な基盤だ」と述べ、首相の考えに理解を示した。

 首脳会談の日程をめぐっては25日夜で調整が進んでいたが、米側は当初、オバマ氏の日本到着が夜になることから26日午前を希望した。だが、沖縄県の事件を受け、日本側がサミット開幕前に会談して事件について協議すべきだと25日夜を強く主張。結局、日程が正式に決定したのは24日夜だった。会談後の共同記者会見についても、首脳会談開始前までギリギリの調整が続いた。

 それだけ日本側には事件によって普天間飛行場沖縄県宜野湾市)の辺野古移設を含む反基地運動が強まることを事前に抑えたいとの思いがあった。米側も早い段階の会談に応じ、オバマ大統領は「深い遺憾の意」を表明した。日米地位協定についても運用改善することで合意した。

 元米兵の事件によって会談の様相は一変したものの、26日からのサミットで世界経済やテロ対策、東シナ海南シナ海で覇権拡大を図る中国などの協議を日米が主導する上で、首脳会談で同盟強化の姿勢を示すことは欠かせなかった。」

 元米兵の犯罪は大問題ですが、首脳会談の日程を日本側が押し切る形で決定しています。見栄やはったりではなく、こうしたところに安倍首相の外交の実力が現れてきたといえると思います。

 振り返ってみれば、普天間問題を巡って、日米安保体制がぐらついていたのが、オバマ政権の末期になってある程度修正できたということなのでしょう。

 では、ようやく長い前振りを終えて、トランプ大統領の横田基地演説を取りあげてみましょう。まだ、全文が日本語で利用できないので産経新聞を引用します。

「トランプ米大統領は5日午前10時半過ぎ、大統領専用機で米軍横田基地(東京都)に到着した。トランプ氏の来日は初めて。トランプ氏は基地内で演説し「日本は貴重なパートナーで同盟国。皆さんのリーダーシップと奉仕に感謝する」などと在日米軍兵士らを激励した。また、核・ミサイル開発を進める北朝鮮を念頭に、「いかなる独裁者も米国の決意を過小評価するべきではない」と牽制した。

 横田基地は、トランプ氏の5~7日の訪日で最初の訪問先となる。トランプ氏は5日午前10時半ごろ、メラニア夫人らとともに、3日に訪問したハワイから大統領専用機で横田基地に到着。紫色のネクタイに、紺色のスーツ姿で、基地格納庫の米国旗が設置されたステージに登場した。集まった千人以上の在日米軍兵士らから「USA」「USA」という大きな歓声がわき上がった。

 トランプ氏は、演説で「米国の素晴らしい男女の軍人と、すばらしい自衛隊が集まる横田基地に来れて非常に感謝している」と話した。2011年3月の福島第1原発事故発生後の米軍による被災地支援活動「トモダチ作戦」に従事したことに触れ「何千人もの日本人を救った。みなさんは決して国を失望させたりしない」と称えた。「同盟国と協力を模索し、自由で開かれたインド洋・太平洋地域を推進する」と話した。演説は20分余りで終了した。」

【トランプ氏来日】横田基地で演説「日本は貴重なパートナー」「米国の決意を過小評価するな」(2/2ページ) - 産経ニュース

 演説は動画で見ることが出来るのですが、意外だったのは日本の自衛隊自衛隊の指揮官の名前を挙げて賞賛していたことです。この点はもうすこし調べて見たいと思います。

 しかし、この最後の産経の記事からだけでも、日本の安全保障が戦後最大の危機に陥っているときに、日米関係が最良の状態にあることがわかるのではないでしょうか。

 その意味でも、選挙ではまじめに投票した方が良さそうです。