FirstHedge 明日の投資情報

投資を搦め手で分析します。

米中の資源戦争勃発する

 サウジの動向が気になるところです。

  まず目を引いたのは次のニュースでした。
 「大統領の義理の息子にして大統領上級顧問でもあるジャレッド・クシュナーは先週お忍びでサウジアラビアを訪問しました。
 先週の水曜日に,民間機でサウジアラビアに向かい,土曜日に戻ってきたと伝えられています。
 国家安全保障副補佐官のダイナ・パウエルと政府の中東特使であるジェイソン・グリーンブラットがクシュナーに同行したとあります。
 「大統領上級顧問、戦略担当の安全保障担当副補佐官、それに国際交渉を担当する特別特使が、サウジアラビアから帰国した」とホワイトハウスの職員がアメリカの政治サイトであるポリティコに告げました。
 「上級顧問はイスラエルパレスチナ当局、エジプト、アラブ首長国連邦、ヨルダン、サウジアラビアと頻繁に連絡を取っている」とホワイトハウス職員は語っています。
 今回の旅行は今年に入ってから3度目です。
 クシュナーは、中東問題に関するトランプ政権の窓口と見なされています。
 8月にも、クシュナーはイスラエルに赴き、イスラエルパレスチナの平和協議の仲介を行っています。」

Kushner makes unannounced visit to Saudi Arabia: report | TheHill

 クシュナーは今回のトランプ大統領のアジア歴訪の前半は同行すると伝えられています。ですから、アジア、特に日本と中国を訪問する前に片付けたい問題があったと考えるのが妥当でしょう。
 一つの補助線として、サウジアラムコIPOが延期される見込みである事が挙げられます。日経新聞によれば、
「(前略)米欧メディアが相次いで、アラムコの海外上場の先送りと、IPOの前に有力投資家へ株式を売却する可能性を報じた。英フィナンシャル・タイムズ(FT)によれば「ここ数週間で中国やその他の投資家との交渉の速度は上がっている」。
 IPOの遅れは改革全体に影響する。アラムコは延期の観測を否定するが、FTによれば、サウジ政府筋は戦略的投資家を対象とする売却も選択肢であることを認めた。真相はもう少し待つ必要があるが、この話になぜ、中国が浮上するのか。読み解くには今年3月のサルマン国王のアジア歴訪にさかのぼる必要がある。
 日本訪問を終え、中国に移動した国王は滞在中、中国側と総額650億ドル(約7兆1500億円)規模の覚書や基本合意に調印した。このとき、エネルギーや防衛協力などに加え、国有石油会社、中国石油天然気集団(CNPCや国有投資ファンド中国投資有限責任公司CIC)などとアラムコの株式保有も議論したといわれる。
 15年の中国の原油輸入量は日量660万バレル。10~15年の間、年平均で6.9%増えた。中国政府は20年までの輸入量の増加率は年平均3.2%に鈍化すると予測しているが、それでも20年の輸入量は同780万バレルに増える。
 中国は電気自動車(EV)の導入に積極的だ。しかし、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の竹原美佳上席研究員は「中国の石油消費は25~30年にピークが来るとみられている。EVの普及はこれを少し前倒しするかどうか。むしろ1億台を超える販売済みの自動車は引き続き石油燃料を必要とする。安定調達先の確保は重要な課題だ」と指摘する。
 調達先の柱となるのがロシアとサウジだ。中国の原油調達先はロシアとサウジがそれぞれ13~14%で肩を並べる。中国の民間石油大手、中国華信能源は9月、約1兆円を投じ、ロシアの政府系石油大手ロスネフチの株式14.2%を取得することで合意した。華信はロシア政府、英BPに次ぐロスネフチの3位株主となり、共同で資源開発や製油所建設などを進める。」

サウジアラムコ上場に先送り観測 陰に「一帯一路」 編集委員 松尾博文(写真=ロイター) :日本経済新聞


 とあります。サウジアラムコを少しでも高く売りつけたいサウジと、原油をなんとしても確保したい中国の意向が合致したと考えられます。これでクシュナーがサウジに飛んでいく理由も明らかですね。ウォールストリートは、サウジアラムコIPOを心待ちにしていたのですから、このままサウジが中国になびかれては困るということでしょう。
 実際、ペトロチャイナの経営者も次のように述べています。日経新聞には次のように記されています。
「――サウジアラビアのの国営石油会社サウジアラムコとの関係は。
 「中国とサウジアラビアの関係は非常に良好だ。サウジは中国にとって最大の原油供給国の一つだ。サウジアラムコとは上から下まで様々な階層で密接な意思疎通をしており、毎日のように接触や往来がある」
 「(サウジアラムコに出資を検討し、雲南省の製油所にサウジアラムコからの出資を受け入れるとの報道については)これ以上の情報提供はできないが、サウジアラムコとの提携は全方位だ。これからの5年間は提携は増えていくだろう」」

中国石油天然気集団、サウジアラムコとの提携拡大 :日本経済新聞


 アメリカがあの手この手で取り戻した中東の平和の成果を、中国が横取りしようとしていることがよくわかる発言です。
 先日ブルームバーグには非常に不可解な記事が掲載されましたが、その謎も解けました。ペトロチャイナの今後のあり方に疑問をさしはさむ記事でした。
「中国の国有エネルギー会社ペトロチャイナ(中国石油天然気)の株価がようやく底を打ったとアナリストを納得させるには、同社が味わった世界の歴史で最も大きな下げでは足りず、さらなる下落が必要になるようだ。
 ペトロチャイナ株が上海市場での取引初日に上場来高値を付けてから10年。同社の時価総額はその後、約8000億ドル(約90兆8500億円)失われた。イタリアの上場企業全てを買えるだけの大きさだ。2007年の上場時、同社は世界初の時価総額1兆ドル企業だった。
 ペトロチャイナ株主が失った資産は現在のドル換算で史上最大。しかも状況は悪くなる一方かもしれない。ブルームバーグが集計したアナリスト予想平均が正しければ、上海上場の同社株は向こう1年でさらに16%下落し、上場来安値を更新する見通しだ。(以下略)」 事実ではありますが、ペトロチャイナを貶める記事であることは確かです。これは、まだまだ株価が下がるペトロチャイナと組んで良いのですかとサウジに問いかけているといってもよいでしょう。中国と米国の間で資源争奪競争が始まったというのが,これらのニュースの根底にある事実なのでしょう。