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グレンコア再考

 スイス関連の話が出たところで、グレンコア社について簡単に振り返っておきましょう。

 まずは、こちらをご覧ください。

firsthedge.hateblo.jp

 まずはウィキペディアからです。
「グレンコア・ピーエルシー(英: Glencore plc)は、スイス・バールに本社を置く鉱山開発及び商品取引を行う多国籍企業である。登記上の本社は、タックス・ヘイヴンとして知られるイギリス王室属領のジャージーに存在する。グレンコア社はスイスの著名な相場師であるマーク・リッチによって、1974年にMarc Rich & Co AGとして設立された。」
 グレンコアが、「スイス・バールに本社を置く鉱山開発及び商品取引を行う多国籍企業」という点は既に紹介した通りです。
 興味深いのは、「登記上の本社は、(・・・)イギリス王室属領のジャージーに存在」という点です。
 ジャージーはタックスヘイブンとして有名です。ジャージーは、ジャージー島のほかマンキエ諸島 やエクレウ諸島などにより構成されるイギリス王室属領なのですが、国内法上は英国とは連合王国に含まれないのです。国家に属さない純粋な私有地(笑)というのが、ジャージーの位置づけです。
 こうした領土が800年以上維持されてきたのには理由があります。それは、英国の王室にとっての最後の避難所という役割があるためです。たとえ、英国政府が外国政府に占領されたとしても、理論上、ジャージーは無傷というわけです。
 実際には、第二次大戦時にナチス・ドイツに占領されていますので、実際に無傷というわけには行かないのですが、現代の役割としては英国王室が直接保有しているタックスヘイブンといえばよいといえます。
 登記上の本社がジャージーにあるからと言って、それだけでグレンコア社が英国と深い繋がりがあるとは言えません。2005年の段階では、島内に50もの銀行があり、GDPの60%が金融業によるものとされています。たとえ巨大企業であっても資源企業の登記上の本社があると言っても、単なる税金逃れのための措置とも判断できるためです。
 ただ、このグレンコア社ですが最近合併しているのです。
「2013年5月2日に世界最大の商品取引会社のグレンコア社と、同社の関連会社で資源メジャーであるエクストラータ社の待望の合併が完了したと発表した。鉱業で世界4位、商品取引で世界首位の企業が誕生。グレンコアは声明で、合併の効力が発生し、エクストラータの株主資本を全て傘下に収めた。グレンコアのグレンコア・エクストラータへの社名変更は英領ジャージー島で成立。合併はEU、英国、南アフリカ、中国で独占禁止法など各当局の承認を受けて完了した。」
 こうして出来た現在のグレンコア社の時価総額は、上場する商社としては三菱商事を上回り世界最大なのです。そこで、役員を調べてみると非常に香ばしい結果が得られます。

Our Board of directors | Glencore


 非常勤ではありますが、役員会議長にアントニー・ヘイウッド氏が就任しているのです。ヘイウッド氏は、2007年から2010年にかけてBP(英国石油)という石油メジャーの会長を務めていました。BPは北海油田を軸とする英国の国策会社なので、スイスと資源大手商社と繋がりがあるのは理解出来ますが、英国とスイスが人脈的に重なる(可能性がある)とは言えそうです。
 したがって、英国が北朝鮮に対して参戦する準備があると述べたことは非常に重要であると言えるでしょう。ヨーロッパの資源マフィアが、第二次朝鮮戦争に向けて動き出したとも見えるためです。
 もちろん、ヨーロッパが一丸となって北朝鮮に好戦的な姿勢を取っているわけではありません。ドイツのメルケル首相は、北朝鮮問題の平和解決を希望するという声明を発表しています。プーチンと並んで、出来れば北朝鮮の現体制を維持したまま、資源開発に携わりたいという下心が窺えます。
 こうしてみると、北朝鮮の現体制の存続には関わりなく、北朝鮮の資源を巡る争奪戦が始まったという見方も出来るでしょう。