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アメリカにとって問題なのは、北朝鮮よりもメキシコ

 北朝鮮は、ほとんど出来レースという印象があります。トランプ大統領は脅しはしますが、現在の段階では軍を投入して先制攻撃という可能性は極めて低いためです。あとは、金正恩がいつ妥協するのかを待つだけなのでしょう。

 その一方で、より大きな問題となっているのは、メキシコなのです。

 ロイターから引用します。

「[メキシコ市/ワシントン 10日 ロイター] - 全米商工会議所のトーマス・ドナヒュー会頭は10日、トランプ米政権は北米自由貿易協定(NAFTA)を廃止に追い込むための「ポイズンピル(毒薬条項)」を提案していると批判した。

 また、メキシコのビデガライ外相は同日、NAFTAを廃止すれば米・メキシコ関係は限界点に達し、他の分野での2国間協力に影響が及ぶことになると警告した。

 メキシコの2人の関係筋によると、ワシントンで11日に開幕するNAFTA再交渉の第4回会合は当初の予定よりも期間が2日間延長され、17日までとなった。

 会合前に緊張が高まるなか、メキシコペソは10日の取引で5営業日続落し、対米ドルで6月初旬以来の安値を付けた。

 ドナヒュー会頭はメキシコ市で開かれた在メキシコ米商工会議所主催のイベントで、「サンセット条項」の追加を含む米国の提案は、カナダも含む3カ国間の年間1兆ドルの貿易を阻害することになると警告。

 「協定そのものを破滅に追いやる可能性がある複数のポイズンピルが引き続き協議されている」と述べ、NAFTAの「存続にかかわる脅威」は地域の安全保障への脅威でもあると強調した。

 「サンセット条項」が盛り込まれれば、3カ国が5年ごとに見直しを行わない限りNAFTAは自動的に失効する。

 ドナヒュー氏はまた、米国が提案する自動車の域内部品調達率引き上げや紛争解決メカニズムの変更、米政府調達へのカナダとメキシコのアクセス制限がNAFTA再交渉妥結への障害になっていると指摘。

 米政権が貿易赤字の縮小に重きを置いていることについては、「間違った問題に焦点があり、達成しようとすれば景気に悪影響が及ぶ」との見方を示した。

 全米商工会議所は同日、NAFTAを支持する300以上の業界団体が署名した書簡をホワイトハウスに送付した。」

全米商工会議所、米政府の提案はNAFTA廃止につながると批判 | ロイター

 ポイントはこの「サンセット条項」で「北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉で、同協定を5年ごとに自動的に見直す」というものです。5年ごとに皆祖をしなければならないのであれば、メキシコへの投資はなくなるとまでは言わないまでも大幅に減少することでしょう。

 問題は、メキシコに投資している多くの企業がアメリカ企業でもあるという矛盾でしょう。経済のグローバル化を図ると言うことは、効率の悪い国内の部門を切り捨てるということでもあります。しかし、企業の立場から見れば、賃金の安いところに工場を設けるのは極めて合理的なことです。その結果、アメリカ国内は失業者が増える、もしくは労働人口がサービス産業に流れることになります。ハンバーガーを焼いているだけでは昇給はしません。それが、一般国民のストレスになっているのです。

 ですから、トランプ大統領がどれほど批判されようと、一部で根強い人気があるのは、レーガン政権以来続いていたグローバリズム推進の結果である自国民切り捨てに不満がたまっているためなのです。

 その一方で、グローバリズムで一番恩恵を受けたのが中国でしょう。アメリカの国策が、反中に動き始めていることは、バノンの動きのところで紹介しましたが、「中国ばかりが儲けるのはけしからん、ましてや太平洋を半分よこせとは何事か!」という不満がアメリカのエスタブリッシュメントの間にも広がっています。

 NAFTAの件は、まだどうなるかはわかりませんが、トランプ政権が反グローバリズムを旗印に掲げる以上、米中の対立は避けられないということになりそうです。