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北朝鮮をひそかに支援するロシアの危険な「綱渡り」(2)

 (1)の続きです。

「<戦略的国境>
 確かに、北朝鮮との経済的つながりは、ロシアよりも中国の方が大きく、核危機において中国はより強力な役割を果たしている。とはいえ、中国は北朝鮮のミサイル・核プログラムに対する制裁を強化しており、対朝貿易を削減している。ロシアは逆に、北朝鮮支援を増やしている。
 ロシア政府を詳しく知る関係筋によると、ロシアが支援を増やす理由は、北朝鮮の体制転換を全く望んでいないからだという
 ロシアのプーチン大統領は、北朝鮮の核実験を挑発的だと非難する一方、米韓両国に対する北朝鮮の安全保障に関する懸念は理解できると、先月ウラジオストクで開催された「東方経済フォーラム」で語っている。
 人口60万人を抱える極東の港湾都市ウラジオストクは、ロシアの太平洋艦隊の拠点であり、北朝鮮との国境からはわずか100キロほどしか離れていない。統一された朝鮮半島で、自国の近くに米軍部隊が配備されることにロシアは激しく反対するだろう
 「(北朝鮮は)イラクで事態がどのように展開したか知っている」と、プーチン大統領は前出のフォーラムで語った。「核兵器とミサイル技術を有することこそ、唯一の自衛手段だと分かっている。それを放棄すると思うか」と問いかけた。
 北朝鮮の核保有国化は、まだ完全ではないものの、永続的であり、後戻りできない。また、西側は北朝鮮のミサイル・核プログラムの部分的凍結を期待するのが関の山だ──。これがロシアの見方だと専門家は指摘する。
 <実用主義
 ロシアの北朝鮮擁護について、北朝鮮指導部に対する個人的な親愛の情や支援に基づくものではない、と前出のロシア外務省に近いシンクタンク「ロシア外交問題評議会」のコルトゥノフ所長は説明する。例として、シリアのアサド大統領に対するロシアの実用主義的な支援を挙げた。
 北朝鮮との緊密な関係によって、現在の強力な地政学的影響力を維持できるとの考えが、ロシアの行動の背景にある、とコルトゥノフ氏は指摘。これは、アサド大統領への支援によって、ロシアが中東で影響力を拡大したことと同様の考え方だという。
 ロシアは、金正恩氏が失脚すれば、自身の地域的影響力を失うことを分かっている、と同氏は言う。それは、イスラム過激派が2015年、アサド政権を倒すかに見えたとき、中東でのロシアの影響力が脅かされたことと、まさに同じだ、と同氏は語った。
 「非常に慎重さを要する綱渡りだ」とコルトゥノフ氏は言う。
 「ロシアは同盟諸国の方針、主に北朝鮮に一段と強硬姿勢を取っている中国の方針から外れたくはないと考えている。だがその一方で、現在の状況と北朝鮮政府との2国間の交流レベルから、中国とは異なる独自路線を取っていることを、ロシアの政治家は理解している」
 万一、米国が実力行使に踏み切り、金正恩氏を排除する気であれば、ロシアは国境付近で人道的な難民危機に直面しかねず、北朝鮮が開発している兵器や技術はさらに危険な非国家的組織の手に落ちる可能性もあると、コルトゥノフ氏は指摘する。
 それ故、北朝鮮への制裁強化に対しては煮え切らない支持姿勢を見せる一方で、プーチン大統領北朝鮮経済の成長を後押しすることに前向きで、他国と共同で行う地域的プロジェクトに北朝鮮が参加することを支持している。
 「われわれは徐々に北朝鮮を地域協力に組み入れる必要がある」と、プーチン大統領は前出のフォーラムで語った。」
 2001年のアメリカ同時多発テロ以来、対テロ戦争という名目で、アメリカは軍を大規模に展開してきました。最初のアフガニスタンだけでなく、イラクにも及び、フセイン体制が打倒されたことは記憶に新しいところでしょう。
 イラク戦が思ったように進まなかったために、今度は中東を民主化して安定化させようと試みました。それが、アラブの春でした。あまり報道されていませんが、グーグルやフェースブックといった企業も中東の民主化を背後から支えていたのです。気になる人はジーン・シャープという人物を知れべ手見ればよいでしょう。計画を調査・立案したのはランド研究所という老舗のシンクタンクです。しかし、それもシリア内戦では完全に失敗してしまいます。
 それに対してプーチンは、悪者扱いされていたシリアのアサド政権を支持することで、以前からの準同盟国であるイランを支援することになりました。アサド政権は維持され、中東の盟主の地位を獲得したのはロシアだったのです。
 この中東での展開を考えると、ロシアが北朝鮮をなぜ支持するのかという理由も、明らかになります。ロシアは、中東に続き、北朝鮮をてこに東アジアでも盟主の地位を狙っているのです。
 ロシアの見返りはそれだけではありません。中国と北朝鮮の関係が急速に悪化する中で、北朝鮮情勢がある程度安定化した段階で、北朝鮮国内に埋蔵される天然資源の開発に加わりたいというわかりやすい実益も狙っているのです。

 「西側は北朝鮮のミサイル・核プログラムの部分的凍結を期待するのが関の山」というのは、今回のイランでの核合意と同じ構図であると言えます。それを極東にも適用しようとしているのです。
 そうした視点から考えると、ロシアにとって重要なパートナーは、日本よりもむしろ、韓国になるともいえるでしょう。
 いずれにせよ、ロシアが北朝鮮という不確定要素を最大限に利用して、アジアにも橋頭堡を築こうとしているといえるでしょう。

ロシアは中東の盟主という点では以下のエントリーを参考にしてください。

firsthedge.hateblo.jp

北朝鮮の天然資源については、

firsthedge.hateblo.jp

 
ロシアと韓国の関係については

firsthedge.hateblo.jp

といったエントリーを参考にしていただけると幸いです。