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北朝鮮をひそかに支援するロシアの危険な「綱渡り」(1)

 ロイターに非常に良い解説が出ましたので、それについて考察します。

 

 まずは、本文を少しづつ紹介しましょう。
「[モスクワ 4日 ロイター] - ロシアは、金正恩朝鮮労働党委員長を失脚させようとする米国主導の試みを阻止すべく、ひそかに北朝鮮に対する経済支援を加速させている。金正恩氏が失脚すれば、ロシアの地域的影響力の衰退と、東部国境沿いへの米軍配備を招くことになるからだ。
 ウクライナ情勢を巡り西側諸国から科された制裁が解除される見込みが一段と遠のくなか、ロシアは米国との冷え込んだ関係を改善したいと考えてはいるが、米国が他国の内政に干渉していることに強く反対する姿勢は崩していない。ロシアの外交官やクレムリン(大統領府)に近い専門家らはそう明かす。
 ロシアはすでに、米国が主導する北大西洋条約機構NATO)部隊が自国の西部国境付近に増強されていることに腹を立てており、アジア地域で同様の事態を招きたくないのだという。
 旧ソ連の衛星国として始まった北朝鮮を保護することに関心を示すロシアだが、フリーパスを与えているわけではない。ロシアは、北朝鮮が先月強行した核実験に対する国連の追加制裁を支持している。
 だが同時に、北朝鮮を経済的に孤立させようとする米国などの取り組みから北朝鮮を守ろうと、わずかなライフラインをひそかに提供するという、裏表を使い分けた危うい行動を取っている。
 ロシアの通信会社は今月、北朝鮮へのインターネット接続を提供開始した。北朝鮮は、中国に次ぎ、2つ目の接続手段を得たことになる。
 2017年第1・四半期におけるロシアと北朝鮮の2国間貿易は3140万ドル(約35億円)と、2倍以上に増加。ロシア極東発展省によると、その主な要因は石油製品の輸出が増えたことだという。
 少なくとも8隻の北朝鮮船籍の船が今年、燃料を積んでロシアを出航し、北朝鮮に帰港している。表向きの目的地は、母国ではない他の場所としており、これは北朝鮮が制裁効力を弱めるためによく使う策だと米当局者らは話す。
 また、北朝鮮とわずかに国境を接しているロシアは、何万人もの北朝鮮出稼ぎ労働者を帰国させようとする米主導の試みにも抵抗している。こうした出稼ぎ労働者による送金が、北朝鮮の強硬な指導部を存続させている一助となっている。
 「北朝鮮は、米国が体制転換に干渉しないという確証と自信をさらに得るべきだと、ロシア政府は真剣に考えている」と、ロシア外務省に近いシンクタンク「ロシア外交問題評議会」のアンドレイ・コルトゥノフ所長はロイターに語った。
 「体制転換は深刻な問題だ。クレムリンは、米国のトランプ大統領が予測不可能な人物であることを理解している。事態を急変させるような行動を取らなかったオバマ前大統領に対しては安心感を抱いていたが、トランプ氏に対しては未知数だと感じている」
 金正恩氏を「ロケットマン」と揶揄(やゆ)するトランプ大統領は先月、国連総会で行った演説で、必要とあらば北朝鮮を「完全破壊」すると警告している。」

焦点:ロシアの危険な「綱渡り」、北朝鮮支援をひそかに加速 | ロイター

 最初から、ロシアの狙いが「金正恩氏が失脚すれば、ロシアの地域的影響力の衰退と、東部国境沿いへの米軍配備を招く」とされている点に関しては、まさしくその通りでしょう。アメリカの勢力圏と地続きになりたくないのは中国だけではないのです。
 東欧諸国、特にバルト三国は、すでにロシアとの戦争を予期しています。ロシアが、北朝鮮を支援する第一の理由は、アジアでも自国の近隣に米軍が配置されることを回避したいという希望があるためなのです。
 それは認めるとしても、ロシア側の「北朝鮮は、米国が体制転換に干渉しないという確証と自信をさらに得るべきだ」という主張は認められないでしょう。アメリカ本土に届くミサイルと核を持った状況で、北朝鮮を国際社会に復帰させることはあり得ないからです。率直に言って、トランプ政権にしても、本音では北朝鮮の体制変換は望んでいません。核とミサイルの開発はやめてほしいというその一点なのです。むしろ、ロシアの本音は、北朝鮮からの出稼ぎ労働者にそのまま働いてほしいという点にあります。それは、アメリカの経済制裁と正面からぶつかることになります。米ロが合意にたどり着くにはまだ距離があるということになるでしょう。(つづく)