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荒れる職場で生き残る方法を、トランプ側近のスティーブン・ミラーに学ぶ

 自分の職場が「血の結婚式」のようだという人には参考になるかも知れません。自慢ではありませんが、「ゲーム・オブ・スローンズ」とか全く知りませんでした。

 スティーブ・バノンがホワイトハウスを去っても、結構活躍していたという話は既にお伝えしました。キッシンジャーが関係していたことも。
 今回は、トランプ政権創設期のメンバーで、現在も残っているスティーブン・ミラーを紹介しましょう。そして、過酷な職場での生き残り方も。

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 スティーブ・バノンのような味方が去った後に、若き政策秘書官が影響力を強めつつあります。その名は、スティーブ・ミラー。トランプ政権が誕生して以来わずか数カ月の間に、新たな入国禁止令、オバマ時代の不法移民の子供向けのプログラムの廃止、難民受け入れの絞り込みに際して彼は主要な役割を果たしました。彼はまた、大統領就任式での演説、ラスベガスの銃撃事件に関する声明といった、大統領の主要なスピーチも執筆しています。大統領専用機でトランプ大統領と共に旅行することが最も多い側近の一人でもあります。

1.多くの問題に関わる
 政策上級顧問という肩書きは多くの分野に及ぶので、彼が関わったとされる移民問題や安全保障問題の他に、彼がどれほど深く関わったかは明らかではありませんが、健康保健や福祉といった国内政治にも関与できたようです。ミラー本人はこの情報にコメントをしていない。ホワイトハウスの高官は、彼は「実に様々な問題に関わっている」とだけ述べています。

2.生き残りのコツ
 ホワイトハウスに近い筋によれば、ミラーは2年前に、現司法長官のセッションズ上院議員の秘書になりました。その後ミラーはホワイトハウス入りを果たします。彼が大統領と移民政策に関して意見が一致しており、大統領の声を届けることができたためです。そして何よりも他の側近が次々と失脚していく中でうまく立ち回ることが出来たのです。
 トランプ大統領の元側近の一人は、ミラーは「(海外ドラマ、ゲーム・オブ・スローンズ)のレッド・ウエディングを生き延びるすべを知っていたんだ」と述べています。レッド・ウエディングとは、ドラマ「ゲーム・オブ・スローン」中の、虐殺事件のことです。
 ミラーは、政権発足時から残留している数少ないスタッフの一人です。ミラーの他には、コミュニケーションディレクターのホープ・ヒックス、それにメディアディレクターのダン・スカヴィオぐらいしか残っていないのです。
 トランプ大統領の大統領就任以来、6名程度の顧問がホワイトハウスのウエストウイングから去って行きました。そこには、ミラーのイデオロギー上の同志とも言えるスティーブ・バノンも含まれています。バノンは8月に主任戦略官を辞しています。

3.実行力のあるミラーのアプローチ
 彼らの政策は似通っていたのですが、仕事へのアプローチは相当異なっていました。バノンはとえいば、政権内部の自分のライバルに公然と警告するという手法を好みました。その警告を発した相手は、大統領の娘婿であるジャレッド・クシュナーにも向けられました。
 それに対して、ミラーは異なるアプローチを取りました。「スティーブはごく初期の段階で学んだんだよ。大統領選で多くの選挙スタッフが変わっていく中で、彼は今でもホワイトハウスに留まっている。他のスタッフのことは気にかけるなということさ」と語るのは、元選対スタッフのジェーソン・ミラーである。「大統領だけに焦点を合わせて、彼が望むことを実行するんだ」
 ホワイトハウスに近い筋によれば、スティーブン・ミラーは、政策面での隔たりはあるものの、仕事上ではクシュナーとも良好な関係を維持しています。そしてホワイトハウスの首席補佐官ジョン・ケリーも彼のことを高く評価しているのです。
 そつなく組織の問題を乗り越えられたおかげで、ミラーは自分が取り組んできた政策、つまり移民と難民の流入の制限を前進させることが出来たのです。
 2016年の選挙運動中、この問題に関しては、トランプ大統領本人とも直接議論することができました。「この問題に関する大統領の方針を彼は維持したんだ」と元顧問は語っている。
 ミラーは、米国議会の共和党議員に対して移民政策案に関するホワイトハウス側の希望リストを作成したと伝えられています。そのリストの中には、「若年移民に対する国外強制退去の延期措置(DACA)」の差し替え案も含まれていました。

4.評判が高いスピーチライターとしてのミラー
 トランプの同志は、ミラーのスピーチ・ライティング能力も絶賛しています。大統領就任演説の際の「アメリカ国民の大虐殺」といった最も象徴的な表現は、広く酷評されています。しかし、この表現は大統領の信念を偽らざる本音(unvarnished view)で表したものなのだと元側近は述べています。
 「スティーブンはポピュリスト的なメッセージに関しては実に筆が立つ」と元側近は述べています。「スティーブンが草稿を執筆したが、これは紛れもなくトランプの言葉だ。これが重要なんだ」

5.「データが古いぞ、コラ」という批判に対して
 それに対してトランプ大統領の批判家は、扇動家の側近は大統領の役に立っていないと主張しています。政権の政策目標を推進するに当たって誤った情報を用いているからだというのです。
 ミラーは、裁判所によって差し止められた1月の最初の旅行禁止の大統領令の際に激しい批判を集めました。
 トランプ大統領も、最初の禁止措置を擁護するために誤った不正確な主張を繰り広げました。3月の修正版に関しても、ミラーの責任にされています。
 元ホワイトハウス高官によれば、修正版の入国禁止措置を正当化したのは、ミラーの決断であったと言います。ミラーは300名以上の難民が対テロ調査の対象になっていると主張したのです。この数字はFBIからもたらされたものですが、3月の修正版の大統領令の中に盛り込まれ、政府側の説得材料となっています。
 ファクト・チェッカー(事実か検証する人)達は、この主張が不正確だと言います。調査の対象となっている70%以上の人は、入国が禁止された国からの人たちではないというのです。調査されている難民の大部分は、イラクからの難民で、二番目の入国禁止措置の対象とはなっていません。
 「政府発足当初、殺人を犯しても逃げられたほどだ。それほど忙しくカオスだったんだよ」と元側近は述べます。「スティーブン・ミラーはそのカオスをうまく利用したんだ。彼は、無様な処刑(仕事が首になること)も、無様な事実からも逃れたんだ」
 ホワイトハウスの高官は、この情報を使うように述べたのはミラーではないと否定しています。そしてこの情報は正確であるとも述べています。高官は、この数字はもう古いという主張を退けました。数日前に国土安全保障省の報告書にもこの数字は上げられて降り、大統領はそれを使ったのだというのです。
 ミラーがホワイトハウス内部で、味方から助力を得て、内紛を避けることができたために、論争が起きてもミラーに非難が向けられることはありません。この点では、後日談があります。元国土安全保障長官のジョン・ケリーは、このデータが古かった問題は自分のせいだとのべ、他の問題に関してはバノンせいにしたのです。

6.影響力には否定的な見方も
 とはいえ、ミラーの目立たないアプローチは、彼の影響力が外見ほどではなく限定されているためだという見方もあります。ミラーは難民の上限として15000名を主張しましたが、ホワイトハウスは最終的に45000名にしました。トランプ大統領は、「若年移民に対する国外強制退去の延期措置(DACA)」を破棄しましたが、態度を急変させ、「若者の不法移民を助ける手段を考えて欲しい」都議会に協力を要請しました。

7.嵐を呼ぶ男、ミラー
 また、ミラーが公の場で話をすれば、ホワイトハウスが騒ぎになります。2回目の入国禁止措置を阻止する決定を下す際に、連邦判事は、フォックスニュースにおけるミラーの発言を引用して、2番目の大統領令は、当初のものと「同じ基本的政策の結果」を産み出すと主張しています。
 「彼はやりすぎたんだ。彼は本当の問題を作り出してしまったんだから」と元高官も述べています。
 また、ミラーの公の場での話すスタイルも、過度に戦闘的であるという理由で広く批判されています。
 しかし、トランプのホワイトハウスでは問題にはなりませんでした。8月には、CNNのジム・アコスタと合法移民の削減を巡って論争になったときには、ミラーはホワイトハウスの同僚から賞賛されたほどです。
 よく知られているように、ミラーは、合法移民を削減する計画に関して質問されると、「コスモポリタンのバイアスを持った」アコスタを批判しました。
 ブリーフィングルームに現れただけで、かれがホワイトハウスのコミュニケーションディレクターになるのではないかという憶測を生みました。実現はしませんでしたが。
 「彼がうまくやれている理由は、彼が問題の演出と大統領のコミュニケーションのスタイルを良く頭に入れているからだ」と元側近は語っています。「スタッフが去ったとき、多くのパフォーマンスが残る。そして、ミラーはパフォーマンスが上手なのさ」」

Stephen Miller solidifies influence in White House | TheHill

 

 いつものThehillの記事ですが如何だったでしょうか。結局の所、ミラーがホワイトハウスに残ることが出来た理由は、次の点でしょう。
(1)自分の信条を持っている。
 ミラーの場合は、当初から上司であるトランプと話が合ったのでしょう。
(2)他のスタッフの悪口は言わない
 これがなかなか難しいのですよね。それでも、組織の内部では、同僚との調和にも配慮することは必要でしょう。
(3)文章力がある
 この点に関しては、特に解説の必要はないでしょう。「アメリカ人の虐殺」は、彼が考案したのですね。
(4)同僚の支持が得られる
 日頃から、組織内の宥和に注意を払っていれば、ミスもカバーしてもらえるということでしょう。ジョン・ケリーがミラーをかばったのは、ケリーがミラーを高く評価していたためでしょう。
(5)外部に対してははっきりと主張する
 組織内部の宥和に心を砕くと共に、外部に対しては日和らないはっきりとした主張をおこなっていることも、ポイントが高いのでしょう。
 こうしてみると、普通の会社でも通用しそうですね。