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カタロニア問題のメモ

 カタロニア問題はどうも尾を引きそうです。そこで問題を簡単に整理しておきました。

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1.問題の本質
 スペインは300年以上前に始まった戦いをいまだに戦っている。スペインの北東部にある豊かなカタロニアは、独立を志向している。それが、10月1日の住民投票となった。スペイン政府は、先のエントリーでもふれたように、力尽くでこの住民投票を葬り去った。数十年にわたって、自らの別の伝統と言語への承認を勝ち取るための合法的な政治闘争の果てに、カタロニア人は憤っている。分離主義者は、新国家を望む。この経済規模はフィンランドポルトガルに並ぶものだ。1975年のフランシスコ・フランコ将軍の死以降、地方の問題は厳重に監視されてきたが、それが、今回の騒動によって、スペインの憲政史上最大の危機がもたらされたのである。今回の騒動は500年以上にわたって維持されてきた国の絆を揺るがしている。そして、より古い国家の解体がEUの論理的進化なのかどうかという議論を沸き立たせている。

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2.現状
 10月1日の住民投票を阻止しようとしたスペインのラホイ首相の努力は、投票所への機動隊の導入、投票者への暴行をもたらした。今回の取締によって、ソーシャルメディア上で多くの人が憤慨し、数百名の負傷者を出した暴力を非難した。投票所に向かったのは、住民の50%以下であったが、230万の投票の内、200万人が独立に賛成していると伝えられている。地元の有力者は、一方的な独立宣言に向かう可能性を示唆している。ラホイ首相は、カタロニアの分離派と常に衝突してきた。分離派はスペインの税制からの離脱を主張し、マドリードからの反発を利用しようとしている。分離派への支援はこの数年滞っていた。しかし、今回のラホイ首相の強権的な手法が、独立派への支持を強化してしまった。7月のカタロニア州政府の世論調査では、35%がカタロニアは独立しているべきだと答えている。こうした独立騒動は、定期的に、スペインとカタロニア州政府の債券価格にダメージを与えている。カタロニアの人口は750万人で、スペインの全人口の16%を占め、経済全体で五分の一を占めるためだ。

3.背景
 今回の騒動の背景は、スペイン王室の始まりに由来する。1469年のアラゴン王のフェルナンドとカスティーリャ女王のイザベラの結婚により二つの王国は合併し近代のスペインが成立した。最後のハプスブルグ家の王が1700年に亡くなると、バルセロナ近郊の裕福な貴族はフランスのブルボン家の血を引くフェリペ5世が支配することに異を唱えた。その結果、スペイン継承戦争が勃発したのである。カタロニア・アラゴンバレンシアは、オーストリア・ハプスブルグ家のカール大公の同盟についた。フェリペ5世の勝利によって、マドリードの権力は強化された。カタロニアの不満はそれ以来くすぶっているのである。カタロニアは、1934年のスペイン内戦時に一方的に独立を宣言している。しかし、その独立は、1日も持たなかった。スペイン軍が庁舎を爆撃したためである。スペイン内戦が終結した1939年、フランコ総統はカタロニア語を禁じた。フランコの死後、カタロニアは、保健、教育、言語政策の点で自主権を取り戻した。しかし、バスク地方のような徴税権は手にすることができなかった。バスク地方ではテロ組織のETAが、独立闘争を40年も繰り広げたあげくに、約800名の人間を殺害していたためだ。カタロニアには、2006年に、独立した国家としての表記が許され、公共投資の割り当てが確保された。2010年に公共投資の割り当てが確保されない事態が生じた。そこで、カタロニア人は自分たちの将来をスペインの外部に考えるようになった。カタロニアは、スコットランドでのナショナリスト運動にも励まされた。しかし、スコットランドは、2014年に住民投票を行い独立に失敗している。とはいえ、このスコットランド住民投票は、フランドル地方ベネチアといった18世紀から19世紀にかけての小国家の伝統を持つ地域の分離に向けた運動を活性化させている。

4.カタロニア独立がもたらすもの
 カタロニアを巡る闘争は、近代スペインを維持してきた政治的同盟の崩壊を意味する。スペイン側もカタロニア側も、双方が憎悪をかき立てるために、歴史をだしに使う。スペインのナショナリストは、カタロニアは常にスペインの一部であったと主張する。それに対してカタロニアの独立派は、その独立を13世紀にまで遡って主張する。1978年のスペイン憲法の下では、スペインのいかなる地域に対して、自らの地域だけで独立を巡る住民投票を行うことを禁じている。可能なのは、スペイン全土でカタロニアの独立を巡る住民投票を実施することだが、だれもそんなことはしないだろう。全ての主要な政党は、問題解決の基盤として、何らかの憲法の手直しを考慮している。もし、カタロニアが独立に向かった場合、その帰結がどのようになるのかは明らかではない。EUの指導者達が警告しているのは、そうして独立した国家がEUから除外され、ユーロを通貨として用いることが出来ないようにするということだ。スペインの銀行も、カタロニアから撤退すると主張している。また、バルセロナのサッカーチームも、独立の際にはスペインのサッカーリーグからは排除されることになっている。

 

この記事は次の記事を参考にしました。ただ、説明は補足してあります。

Catalonia - Bloomberg QuickTake