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10月のマーケットの注意点

 いよいよ明日から10月ですね。9月は自然災害も猛威を振るいましたが、10月はマーケットも試されることになります。それを箇条書きにしてまとめてみましょう。

 

 振り返ってみれば、9月の最大のマーケットの攪乱要因は、北朝鮮であったと言っても良いでしょう。従って、10月の最大の懸念材料も北朝鮮ということになりそうです。

1.北朝鮮の脅威
 現在の所、北朝鮮の動きとしては、国連総会における口頭での威嚇の段階から、アメリカとの交渉の経路を求めるという段階に移行しています。このまま事態が推移すれば、現在はやる気を見せていないアメリカも、いずれ本格的な軍事対応をみせることでしょう。そうなればもうおしまいです。ですから、後1ヵ月程度は、米国や他の西側諸国との接点を求める方向に進むと考えられます。
 特に、今回は共産党第19回党大会を控えた中国が強硬で、ロシアの後ろ盾を得ているとは言え、動きづらい状況にあります。「今度は10月」の記事で紹介したように、韓国筋の情報として、「10日の朝鮮労働党創立記念日や来月18日開幕の中国の共産党大会に」合わせて何らかの挑発を行う可能性もないわけでもありません。
 しかし、10月に北朝鮮が何らかの行動に移るというのは、少し考えにくいと思います。

米共和党に接近する北朝鮮 - FirstHedge 明日の投資情報

2.中国経済の変調
 中国経済ほど、その規模に対して当局の政策が与える影響が大きい経済も例を見ません。つまり、当局がYESといえば、YESであり、NOといえば、NOなのです。いわゆるマーケットによる自動調整システムなどはほとんど見られないのが中国経済ではないでしょうか。
 そうした観点から見ると、中国経済の変調にしても、当局の意思が明確な場合は、確実に生じるイベントとなります。その一つとして挙げることが出来るのは、冬期の鉄鋼生産の減速です。その点でブルームバーグは次のように報じています。
「海上輸送による供給が加速する時期に、中国が大気汚染抑制のため冬季に工場の操業停止を指示し、鉄鋼生産が後退して鉄鉱石需要が減少するとの見方が広がる中、指標となる鉄鉱石のスポット価格は下落している。米ゴールドマン・サックス・グループは、中国の鉄鋼需要は引き続き旺盛だが、鉄鉱石の値下がりは続く可能性があると指摘。中国は世界最大の鉄鉱石消費国であるため、中国経済が鉄鉱石価格見通しの鍵を握る。」

鉄鉱石は商品市場の「サンドバッグ」-中国の政策懸念で今月20%下落 - Bloomberg

 つまり、日本の株式市場で言えば、資源株である総合商社、それに海運業は大きく下げる余地があるということになるでしょう。
 その一方で、鉄鋼業は息を吹き返すという見方も可能でしょう。

3.アメリカ経済は堅調を維持できるか
 最近のホワイトハウスは、海兵隊出身のジョン・ケリーが首席補佐官に就任して以来、就任直後から続いていたリークもすっかり息を潜めました。そして、予算の上限に関する交渉でもトランプ大統領が民主党幹部と進んで交渉するなど、ここに来て安定性が増しています。
 たしかに、NFLを巡る論争は盛んですが、実務レベルではアメリカの保守派は、数々の成果に満足しています。たとえば、メキシコとの国境の壁の建設は進んでいませんが、違法難民の取締は激しさを増しています。オバマケアの撤廃は、ジョン・マケインなどの根強い反対派のために成功していませんが、減税案も提示され、ダウンサイドリスクは減少しているという印象があります。そんな中で、共和党の18年度の予算案が発表されました。
「米上院共和党は29日、2018会計年度(17年10月-18年9月)の予算決議案を発表した。今後数カ月でこれを利用し、最大1兆5000億ドル(約170兆円)の減税を巡る提案を推し進める考え。
  この予算案では医療保険制度改革法(オバマケア)の完全撤廃は不可能だが、個人の医療保険加入義務など一部条項の廃止に向け共和党が取り組むことは引き続き可能になる。
  上院予算委員会のエンジ委員長(共和、ワイオミング州)が起草した同予算案は、5兆ドルの歳出削減により9年をかけて予算を均衡させることを想定。下院予算委員会が7月に出した予算案とは異なり、この案にはメディケイド(低所得者向け医療保険制度)の縮小やメディケア(高齢者向け医療保険制度)プログラムの民営化は盛り込まれていない。」

米上院共和党、18年度予算案を発表-1.5兆ドル減税の実現目指す - Bloomberg

 
 従って、10月いっぱいは減税案の実現への期待から相場の崩れは予想しにくいでしょう。日米の金利差も広がる傾向があるので、若干のドル高・円安につながると見られます。
 アメリカに関して、残る懸念材料は自然災害です。9月上旬の巨大ハリケーンのように、最近、アメリカでは自然災害が相次いでいます。大きな災害が起きれば、先に挙げた条件は根底から覆ることになるでしょう。そう考えると、意外ですが、一番脆弱なのはアメリカということになるのかも知れません。