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ニュージーランドの総選挙に見るチャイナファクター

 先日、ニュージーランドの総選挙の結果がでました。辛うじて保守党は与党の地位を守りましたが、労働党の躍進には勝てませんでした。これから、数週間かけて少数政党と連立政権を組むことになりそうです。しかし、今回の選挙の背後に中国というファクターが見え隠れしているのです。

 

 そもそもニュージーランドは移民受け入れにより人口が増加していました。そして、国民党政権下で安定した経済成長を続けていました。
 一方で労働党は党勢低迷が続いており、先月、リトル党首が引責辞任しました。3月に副党首になったばかりのアーダン氏に白羽の矢が立ったのです。
 今回の選挙の一つの大きな争点となったのは、急騰する不動産価格とそれに伴う住宅難でした。人口や海外からの投資の増加で需給がタイトになっており、最大都市オークランドでは平均販売価格が100万ニュージーランドドル(約8200万円)に達するエリアも出てくる始末です。普通の一軒家が、庶民にとっての高嶺の花となってしまいました。
 労働党は対策として、外国投資家による投機目的の住宅購入を制限すると主張しました。これはTPPの条件の下では認められないとみられますが、労働党党首のアーダン氏は再交渉に意欲を見せています。また移民の受け入れも一部制限し、急激な人口増加を抑制する方針を掲げています。
 今回のニュージーランドの選挙の背後にあるのは、続々とニュージーランドに移住しつつある中華系住民へのいらだちが背後にあると言えそうです。
 実際、ニュージーランド政府の内部では、増え続ける中国系移民に懸念が広がっているようです。AFPの報道によると、「中国出身の国会議員が中国で軍事および諜報活動の訓練を受けていたことが発覚し、中国政府のスパイであるとの疑惑が浮上した」というのです。この議員は、自身が人種差別を背景とした組織的中傷の被害者だと訴え、疑惑を否定してはいますが、現役の国会議員が中国のスパイに英語を教えていたというのはなかなかにショッキングなニュースです。
 今回問題になったのは、中国出身のジャン・ヤン(Jian Yang)議員です。2011年に議員に当選したヤン氏は、中国軍情報部員のために英語を教えていたのを隠していたというのです。
 ニュージーランドは米国、英国、カナダ、オーストラリアと共に通信傍受情報の共有機構である「ファイブアイズ(Five Eyes)」の一員ですが、中国の情報機関とこれほど強いつながりのある現職議員がいる欧米諸国は他にはありません。
 このまま中国の勢力が拡大するようであれば、中国が移民によって一気に国を乗っ取るということになりそうです。