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中東に残された可能性は日本である

 こんなことを書けば、誤解を受けるかも知れません。しかし、中東諸国の情報機関を調査した上で言えるのは、日本は中東にとっての希望の星であるということです。

 今振り返って言えるのは、中東がおかしくなった時期は、79年のイラン革命であったということです。誤解していただきたくないのですが、イラン革命の大義に異議を唱えるつもりはありません。むしろ、1953年のモサデグ政権へのクーデターは、CIAとMI6によるものであったことは既に公にされています。原油を確保するために、他国の政権を転覆させることが許されるはずがありません。
 しかし、イランという政体が健全なのかといわれると疑問を提示せざるを得ないのです。部分的に民主制は採用されているものの、聖職者独裁という基本的特徴は変わっていません。とあるテヘランで駐在経験のある記者の方にうかがったのですが、イランの情報公安省(MOIS)の日本人記者への浸透ぶりは大変なものだったようです。あの手この手でイランのエージェントにされていたという話でした。中東ならばどこでもある話なのでしょうが。
 イランの例が特殊であるとしても、エジプトでも公安機関の国民への取締、特にムスリム同胞団への弾圧はそれは激しいものでした。クトゥブのようなイスラム原理主義理論かを生み出した背景には、当局からの弾圧がありました。弾圧が過激派を生みだしたのですから救いようがないと思います。
 イランに話を戻せば、革命以降の対応が酷すぎたと思うのです。平気で外国人の捕虜を取り、身代金を要求する。レバノンにイラン流の革命を輸出してヒズボラを作る。さらには、海外に逃れた反体制派を徹底して追い詰める。挙げ句の果ては海外のユダヤ人施設を爆破する。当然米軍も目の敵にしており、アメリカ同時多発テロが発生するまで、イランによるコバールタワー爆破テロがイスラムテロによる最大の被害者数を誇っていました。海外に逃れた反対勢力まで粉砕しなければ気が済まないというのは信じられません。
 イランはシーア派だからという言い訳は成り立ちません。なぜなら、アメリカ同時多発テロを積極的に背後から支援したのは、スンニ派の大国サウジアラビアであったためです。そこに、エジプト国内のイスラム過激派が協力していました。同時多発テロ事件へのテロへのサウジアラビアの関与は、あいまいなままにされていました。サウジへの賠償を求める動きが出てきたのは、最近のことです。
 また、イスラム国や旧ヌスラ戦線を積極的に支援し、シリア内戦を泥沼化させたもサウジアラビアカタールでした。今回はたまたまUAEの差し金でサウジアラビアカタールが断交していますが、自分が蒔いた種が自分に返っているだけのようにも見えます。
 そして、最近ではガザ地区の問題ですっかり国際的な名声を下げたイスラエルの存在も忘れるわけにはいきません。イスラエルは反イランであり、イランは反イスラエルです。そして、最近では、反イスラエルであったはずのサウジアラビアイスラエルに接近し、反イラン包囲網が形成されようとしています。イランと関係が深い(海底ガス田を共有している)カタールがやり玉に挙げられるのも、こうした文脈を考えるならば当然の話でしょう。イランとサウジを中心とした湾岸諸国との間ではもういつ戦争が起きてもおかしくない状態なのです。そこに、トルコ、ロシアも積極的に関与してきます。世界を終わらせるようなハルマゲドンが起きる可能性が高いのは、中東という地域なのです。
 常に原油という資源の利権が、国際関係をゆがませます。そして、スンニ派シーア派の対立もやはり問題を複雑化する要因です。
 あまりに各国の思惑と利害が絡み合ってしまい、誰にも解くことができないのが中東の現状であると言えるでしょう。
 そこで次のニュースを見ていただきたいのです。

「河野外相 イラン外相に北朝鮮対応で協力要請
9月23日 7時16分
 河野外務大臣は日本時間の22日夜、訪問先のニューヨークで、北朝鮮が友好国としているイランのザリーフ外相と会談し、北朝鮮に核開発などを放棄させるため、圧力の強化に協力を求めたのに対し、ザリーフ外相は、核兵器の開発に反対しているとするイランの立場を説明しました。
 この中で河野外務大臣は、「北朝鮮による核実験と弾道ミサイル発射は容認できない。国際社会が一致して圧力をかけていくため、イランを含む関係国と協力していきたい」と述べ、北朝鮮に核開発などを放棄させるため、圧力の強化に協力を求めました。
これに対しザリーフ外相は、「イランは、核実験を含む核兵器の開発に反対している」とイランの立場を説明しました。
 また河野大臣は、アメリカのトランプ大統領が批判する、欧米などとイランが結んだ核合意について改めて支持を表明したうえで、「すべての当事国による合意の順守が重要だ」と述べ、着実な履行を求めたのに対し、ザリーフ外相は、「イランは、核合意を順守している」と述べました。
 さらに河野大臣は、中東地域の平和と安定には、イランと、サウジアラビアなどの域内の主要国との友好的関係が鍵だとして、イランに建設的役割を果たすよう要請しました。」

河野外相 イラン外相に北朝鮮対応で協力要請 | NHKニュース

 決して河野大臣を褒めるわけではないのですが(笑)、何か清々しい風のようなものが感じられないでしょうか。英米とは激しく憎み合うイランが、日本とであれば、割合フランクに交流しているのです。イランとは関係が深い北朝鮮のことを念頭に置いて、あえて北朝鮮への厳しい態度を求めているのです。これは欧米諸国、特にアメリカやイギリスにはできない芸当です。
 サウジアラビアとの関係も良好、そして中東の平和の要となるイスラエルとも現在の日本との関係は非常に良好なのです。もし中東で事件が発生した場合、日本が最も公平公正に仲裁に回ることができるという可能性を暗示しているのです。
 第三次世界大戦が今にも勃発するかも知れないという時期に、日本に取っても、中東諸国にとっても、日本と中東諸国との安定した外交関係が文字通り救いになるかも知れないのです。これはわくわくする可能性ではないでしょうか。