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北朝鮮に対して経済制裁は無力 FC2さよならシリーズ

FC2からの再掲です。

 

 ミサイルを打ち上げ、核実験も行う。とにかく北朝鮮の暴走が止まりません。
 それに対して、日本やアメリカが試みているのは、(1)北朝鮮に対する経済制裁、と(2)北朝鮮と国交のある国、特に貿易の実績のある国への圧力です。実際に、メキシコが、そしてフィリピンが北朝鮮との断交に乗り出しています。
 しかし、経済制裁の有効性を考察する前に北朝鮮の内情を知る必要があります。その意味で重要なのが北朝鮮経済の実態です。
その点で産経新聞の次の記事が非常に参考になります。


2017.9.9 07:30
北朝鮮危機・私はこう見る】
核開発あと2年続けられる? 環日本海経済研究所主任研究員・三村光弘氏

 北朝鮮は貧国ゆえに核兵器大陸間弾道ミサイルICBM)の開発に力を入れてきた。通常兵器を最新型に更新するよりもずっと安上がりだからだ。通常兵器では韓国や米国に太刀打ちできない。米国の対北政策を変えさせるには、核を持つことが一番の近道だ。

 これまで40回ほど北朝鮮を訪問し、今年も3~4月に平壌で、8月には羅先で調査を行った。北朝鮮国内の経済状況はここ5年ぐらいで良くなってきている。国際社会から厳しい制裁が科されているので、核開発と同時に経済発展も目指す「並進路線」の下では飛躍的な発展は難しいが、2000年代中盤以前と比べるとずいぶんとましになっている。

 現在、北朝鮮は収穫のうちノルマ分のみを国家に納めさせ、余剰分は個人の分け前とする「圃田(ほでん)担当責任制」を導入している。こうした経済的なインセンティブにより、国産の農産物の生産量も増えている。品種改良も進め、コンピューターを使った科学的データに基づいた農業も行っており、自給率はかなり高まっている。

 ここ数年の状況をみると、国民は一応満足しており「今日よりは明日のほうが、今年よりも来年のほうがもっと良くなる」と思って暮らしている。金正恩キム・ジョンウン)氏は祖父や父親のようなカリスマ性がないので、国民の支持を得るため経済政策にも力を入れている。

 韓国銀行(中央銀行)は北朝鮮の16年の経済成長率が3・9%になったと発表したが、実感としてはもう少し高く5~6%はあるのではないか。平壌市内では車も増えており、渋滞も起きている。

 北朝鮮の多くの国民は、核は自分たちを守るためのものだと信じている。核兵器の開発によって抑止力がもたらされ、米国によって一方的に戦争を仕掛けられ殺されることがなくなると喜んでいるようだ。

 と、同時に海外の事情をよく知る人たちは、自分たちが国際社会から孤立していることも承知しており、複雑な気持ちでいる人も少なくない。ただエリート層は運命共同体なので、内部から金正恩体制が崩壊することはないだろう。

 厳密な根拠はないが、国民が苦しい状況に耐えられれば、あと1年半から2年は核・ミサイル開発を続けられるだけの経済的な体力はあるのではないか。(聞き手 水沼啓子)」

 確かにこれだけを読めば、北朝鮮は困窮しているはずなのに、経済成長を遂げているのはおかしいのではないかという疑問もうかぶでしょう。しかし、度重なる経済制裁にもかかわらず、2017年度だけをとっても中朝貿易は増大しています。たまに(笑)、見世物として、中国が北朝鮮からの石炭の輸出を止めることがあるだけです。
 二国間関係としては決して中朝関係は良好ではないと考えられますが、貿易が停止していないのが何よりの証拠です。しばらくは、北朝鮮と国交のある国に圧力をかけるという遠回しの策しかなさそうです。